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6話 多種多様


 ミオはチャドに肩車されていたため、高い位置からすれ違う人々を眺めることができた。


「色んな見た目の人がいるね」

「ミオの居たところは違ったの?」

「うん、みんなチャドたちみたいな見た目の人だったよ。肌の色が濃かったり、薄かったりするくらい。しかも私の居た日本の人はみんな髪も瞳も黒っぽいの。だから髪の色を染めてる人もいたし、カラコンっていう瞳の色を変えるレンズを入れてる人も居たよ」


「そっか〜、それはそれで自分でアレンジするのは面白そうだけどね。ってゆうかミオは元々ヒュナム族だったんだね」


「ヒュナム族?」

 ミオは首を傾げる。


「僕たちみたいな見た目の種族だよ。そしたらさ、その姿を最初に見たときはビックリしたねぇ」


「ビックリ仰天だった。クマ耳のカチューシャを付けた子供になっちゃったかと思ったよ」

「あはは、その瞬間見たかったな〜」

 彼らは二人で仲良く笑い合う。


⸺⸺


「ねぇねぇ、他の種族は何ていうの?」

「そうだね〜、誰か気になる人の特徴言ってごらん」


 チャドにそう言われてミオはキョロキョロする。


「……頭に角が生えてて筋肉ムキムキのでっかい人」

「オーガ族だね〜。見た目通り力持ちの人が多いね」


「じゃぁうさ耳の綺麗(きれい)なお姉さん」

「クルス族だよ。ちなみに男の子は犬耳」


「男女で耳の形が違うんだ! じゃぁ次はお魚みたいなヒレがついてる人!」

 ミオはだんだん面白くなり興奮気味に言う。


「クラニオ族。泳ぐのが上手〜」

「……水中でも呼吸ができたりして……」

「そう思ってる人結構いるみたいだけど、流石に水中では息はできないらしいよ」


「そっか……じゃぁ背中に鳥みたいな羽根生えてる人」

「プラム族」

「……流石に飛べない?」

「あはは、今度は飛べる〜。でもこういう大都市では迷惑にならないように飛ぶのが禁止されてる」


「へぇ、すごいなぁ。んー、後は……」

 ミオは他にも居ないか周りを探した。


「後は、ミオみたいにちっちゃい人たちだね。ちょっと分かりにくいけど、耳が(とんが)ってて背中に妖精さんみたいな羽がついてる人、ほら、あの金髪オーガのちょっと前を歩いてる人、あの人はエルフ族」


「あー、ホントだ、妖精さんみたいで可愛い……。私よりは少し背が高いかな?」

「そだね、マキナよりは大きめ。って言ってもエルフの男は僕たちと同じ背丈で耳が(とんが)ってるだけなんだけどね。後は……マキナよりもちっちゃいドワーフ。むっちりした小人さんだよ」


「あっ、あの赤い羽根のプラム族の後ろにいる人?」

「そうそう〜。こんなもんかな。後はめちゃくちゃデカイって言われてるユミル族と、見た目はヒュナムに似てるヴァーデルンって言うのが居るらしいんだけど、あんまりこういう所には来ないみたいで僕も見たことはないよ」


「そっか、ありがとう。すごい勉強になったよ!」

「どういたしまして〜。あれ、こういうのってポールの役目なんだっけ」

「あー、そうだった……まぁ、いっか」

「あはは、まぁいっか〜」


 そんなこんなで大通りの一角にある“マキナファッション”という店に到着した。

 後ろを探すと、ミオと目があったケヴィンとクロノが小走りで合流した。


『よぉし、ミオ。色んな見た目の人がいっぱいいたでしょ。まずはあの角が生えた……』

 相変わらずケヴィンに雑に持たれているポールは自慢気(じまんげ)に語りだそうとするが、ミオに申し訳なさそうに止められた。


「それね、さっきチャドが全部教えてくれた……」

『な、何だと……?!』

「あっはっは〜、ごめんね」

 言葉とは裏腹に、チャドは満足気に笑っていた。


『くそぅ……ケヴィンのノリが悪いから……』

「俺のせいか?!」

「あぁ、ケヴィンがわりぃな」

 と、クロノ。

「船長ひでぇ!」


「何なに? 何のノリ〜?」

 チャドがニヤニヤしながら尋ねる。

「ぜってー言わねー!!」

「あー、ケヴィン待ってよ〜」

 逃げるように店内へと入っていくケヴィンをチャドが慌てて追いかける。

 その様を見てクロノは小さく微笑(ほほえ)みながら、ゆっくりと店内へと足を踏み入れた。


⸺⸺マキナファッション店内⸺⸺


「うわぁ! 可愛い服がいっぱい!」

 ミオは子供サイズの服がたくさん並んでいるのを見て目をキラキラさせていた。


「まずは(くつ)だね〜。自分で色々見たいでしょ?」

 と、チャド。

「あといくらマキナでも女性用の下着エリアに野郎が入るのはちょっとな……」

 ケヴィンが困ったように呟く。

「確かに、そうだね……。じゃぁまず靴の所までお願いします」

「了解〜」


⸺⸺


 ミオは皆に選んでもらい、ブラウンのショートブーツを買ってもらった。

 彼女の知っているブーツとは違い、底がウォーキングシューズの様に柔らかくとても歩きやすかった。


「じゃじゃーん!」


 晴れて自分の足で歩けるようになったミオは、皆に見せびらかすように片足ずつ前に出したり、跳ねたり軽く走り回ったりした。

 皆に「良かったな」と言われ上機嫌になった彼女は、ちょこちょこと歩きながら店内中の服を見て回った。


 ミオはチャドとあれだけ約束したが、やはり少し遠慮(えんりょ)しているようで、いくつも服を手に取り鏡の前で合わせては元に戻していた。


「気にしないでって言ったのになぁ」

「なんだアイツ一丁前に遠慮してんのか」

 ボソッと呟くとチャドに対し、クロノが反応した。


「進路変更してハルラ島に来たことすら悪いと思ってたよ」

「まぁまぁ、急にこっち来てまだ数時間しか経ってねーんだから、遠慮しちまう気持ちも分かるけどな、俺は」

 そう言うケヴィンに対しクロノが「どの口が言うんだ」とツッコミを入れた。


「なら、お前らが見てて似合ってると思ったやつ片っ端からカゴに入れていけ」

「「了解!」」

 クロノに指示され、双子はノリノリで服をカゴに詰め込んでいった。



 ミオは下着コーナーまでやってきたが、やはりブラジャーがない事実に落胆した。

 要らないからないのだと、思い知らされた。


 気を取り直して次にパンツを手に取ると、おかしなことに気付く。


「あれ、何で……」


 思わずそう呟いたミオの指先は、パンツの穴が空いている部分をなぞった。

 何故か女性用のパンツのお尻の部分に穴が空いている。


「ま、まさか……」


 ミオはワンピースの上から恐る恐る自分のお尻をなぞり、驚きの声を上げた。


「うわぁぁぁ!」


「ミオ、どうした?」

 クロノはその声に慌てて駆けつけるが、結局下着売り場に来てしまい少し後悔をした。


「わ、私っ、し、尻尾がついてる……」

 ミオは目をまん丸にして、何度も自分のお尻を擦っていた。

 ワンピースの上からの感触でしか分からなかったが、猫の様に長い尻尾ではなく、ふわふわのポンポンのような尻尾がちょこんと付いていた。


「そうか、知らなかったんだな……」

 それは確かに驚くか、とクロノは思った。

 後から駆けつけた双子にも事情を説明したが、彼らには笑われてしまった。

 ミオは後で試着の時にこっそり確認しようと思うのだった。


 この後ミオはカゴに入ったたくさんの服に仰天したが、チャドとの約束もあったので謝るのではなく何度もお礼を言った。


 結局その店に2時間ほど滞在し腹ぺこになった一同は、エルヴィスが居そうな酒場に向かうことにした。


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