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3話 海賊クラン、ルフスレーヴェ


「隠し子?!」

「あははは、船長おもしろ〜い」

「っるせえな」


 食堂に入るなり、甲板でミオを見つけたケヴィンとチャドの爆笑で迎えられる。

 更にテーブルで飲んだくれている青髪の青年エルヴィスも「傑作(けっさく)だ」と言って同様に笑っていた。


 クロノはミオを適当に座らせると、自身も隣へと座った。また、食堂の入り口で二人を出迎えたケヴィンとチャドも二人の向かいへとそれぞれ腰掛けた。



「こいつはミオって言う」

 クロノが雑に紹介をする。


「マジ? そんだけ? あー、俺はケヴィン、ケヴィン・ターナー。よろしくなミオ!」

「僕はチャド。ケヴィンの双子の弟だよ」

 双子はそう言ってミオへと微笑(ほほえ)みかける。


「よ、よろしくお願いします……」

 ミオは緊張気味に軽く頭を下げた。

 今更ながらこのあり得ない状況に緊張してきたのだった。


「いやいや固いな〜ミオっち。おじさんはエルヴィス、クロノくんのお兄さんよ。ま、気楽にいこーぜ?」

 エルヴィスは名乗ると一口酒を飲んだ。

 彼が一番の年長者であり、見た目はおじさん、中身はもーっとおじさんである。

 双子は瓜二(うりふた)つであったが、同じく兄弟と明かしたエルヴィスとクロノは全く似ていなかった。


「あ、えっと、よろしく……」

 ミオはそう言われてひとまず敬語をやめてみる。

 すると、エルヴィスはくしゃっと笑いながらグッドサインをした。



「まぁ、俺らはこの4人であちこち旅してるルフスレーヴェっつう海賊クランだ」

 クロノの説明に対し、ミオはある疑問を覚える。


「海賊クラン?」


 すると、ミオの膝からポールがひょっこりと顔を出した。

『悪い海賊じゃないってことだよ』


 その瞬間エルヴィスは酒を吹き出し、ケヴィンとチャドは驚きの声を上げた。


「それぬいぐるみじゃなかったんだ! 魔法生物?」

 チャドが興味津々で尋ねる。

『ちーがーう、オイラはポール。ミオの相棒さっ』

 それに対しケヴィンも何か言いかけようとしたが、クロノが割って入る。

「こいつのことはひとまず置いとくぞ」

「マジか……」と、ケヴィン。


 クロノは気にせず説明を始めた。

「まぁ、クランっつー組織に登録をしている海賊を(ぞく)に海賊クランと呼んでいる」

 ミオは「ふむふむ」と相槌を打つ。

 クロノは腰につけている赤い獅子が描かれたカードをミオへ見せると説明を再開した。


「これが登録証で、クラン支部のある大きな島や大陸にはこの登録証がないと上陸が許可されねぇ。逆に言えばこいつがあれば割と自由にあっちこっち行けるっつーことだ」


「なるほど、確かに悪い海賊じゃないってことか……」

『良かったね、ミオ海賊って言われてちょっとビビってたもんね』

「ポールそれ言っちゃだめ……!」

 ミオが慌てていると、周りからわっと笑いが起こった。


「……そう思ったから早めに説明をしてやったんだ」

「え〜! 船長がやさし〜」

「やっぱマジで隠し子なんかな……」

 呆れ気味に言うクロノに対し、チャドとケヴィンが茶々を入れる。

「てめぇらマジでぶっ飛ばすぞ」

「「ごめんなさい」」

 一喝される双子を見て、エルヴィスは独りクスクスと笑っていた。


 それからミオはクロノに話した一部始終をもう一度皆へ説明した。


⸺⸺


「異世界から来たのか〜。だからそんな不思議な魔力してんだね〜。僕はてっきりマキナ族はみんなそうなのかと思ったよ」

 と、チャド。


「ふ、不思議な魔力?」

 ミオはキョトンとする。


「ミオの魔力ってさ、すげー真っ白なんだよな!」

 ケヴィンがそう付け加えるが、ミオの疑問はそこではなかった。


「私、魔力があるんだ……」


「ん? お前の居た世界にはなかったのか?」

 と、クロノ。

「うん、魔力とか魔法とか、お伽噺(とぎばなし)の中だけの話だったよ」

「そうか」


「あ、ってゆーかさ、ミオって何歳?」

 チャドの好奇心は止まらない。

「22歳です」

「えー、僕達と2歳しか変わらない!」

「マキナってマジで年齢不詳なヤツばっかだよな」


「……」

 盛り上がる双子に対し、クロノは何故か塞ぎ込んでいた。それに気付いたエルヴィスがニヤニヤしながらクロノを小突く。

「クロノく〜ん。自分と3歳しか変わらないことに気付いてさっき抱っこしたこと今更恥ずか……「るせぇ黙れ海沈めんぞ」

 クロノが慌てて遮ると、エルヴィスは満足そうに馬鹿笑いをしていた。


「それでさ、さっきハルラ島に進路変更したけど良かったよね?」

 と、チャド。

「あぁ、こいつの必要なもん揃えねぇとだから、それで良い」


「必要なもん……?」

 ミオはキョトンと聞き返す。

 それに対しクロノは深くため息をついた。


「お前なぁ、ずっとそのペラッペラの服1枚と裸足で過ごすつもりなのか?」

「あ……」

 ミオはシュンと俯いた。これから自分はどうしていけばいいのだろうか、そんな不安が彼女を襲う。


「なんで召喚されたかも分からないんでしょ? だったらとりあえずルフスレーヴェ入りなよ」

 チャドがニッコリ微笑みながら言う。

「そうだって! 一緒に世界中旅しよーぜ!」

 と、ケヴィン。


「い、いいの……?」

 ミオが恐る恐る隣のクロノを見上げると、彼は静かに(うなず)いた。


「あ、ありがとう! お世話になります!」

 ミオのパーッと明るくなった顔を見ると、双子が口を揃えてこう言った。



「「ようこそ、ルフスレーヴェへ!!」」



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