フロイト
思いついたらまた書きます。
薄暗い洞窟の様なホールで横笛の奏者が音を奏でる。
その音色は天から降ってくるようで鼓膜を心地よく叩いて行く。
私の心は蝶となり晴天の旅を始めた。
蜜を集めるように音色をひとつひとつ丁寧に染みこませるが、
旅は終演を迎えた時に染みこんで来た音は破裂音で、私は顔を歪めた。
目を開き回りを見渡してみると皆が皆。拍手をしていた。
深層心理の中で不快感を覚えるが、空気にそそのかれ私も拍手をしていた。
こういう所が駄目なんだよと思うも拍手を続ける、続ける。
気分は最悪だ。ホールの外へ出ると雨が降っていた。
私の鼓膜を破裂音がまた叩く。足取り重く宿を目指し
歩いていると夜になり、雨は止んでいた。
月明かりがピンスポットライトの様に私を照らしている。
宿につき荷物を降ろし、地下の賑わうバーに足を運んだ。
カウンターで一人バーボンを片手に演奏の事を思い出し、
黄昏れていると女が声をかけてきた。
女がいうにはお前はこの店で見かけない顔だと。
別に白井やつが来てもいいじゃないか。
胸の内をあかそうとした時周りの空気は静まりかえっていた。
賑わっていた人たちが黙りこちらを凝視している。
この雰囲気は女と関わるなという物だと認識した。
私はまた空気にそそのかれ他愛もない返事を返そうと思ったときに
ホールでの出来事がよぎった。こういう所が駄目なんだよと思い返したとき。
自然にあなたこそ何者なんだと口走っていた。言葉とは裏腹に額には汗をかいていた。
私は一歩踏み出した。
読んでくれてありがとう。