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不革命前夜

 基本的に学校内での僕、山田克人は目立たないことを望む人間だ。

 というのも、あまり、人の注目を浴びたことが無いことから、そういう事に対しての経験値がない。経験値がないから、余計に人の注目を浴びたくない。悪循環であるが、仕方ないと割り切り、目立たないように休み時間は図書室で過ごすことが多い。

 図書室は良い。静かで集中して本が読める。


「やっほー、元気?」


 はずだった。

 ちょうど机を挟んで向かいに、東山つぶらが座っている。いつの間に座ったのか、読書に夢中で気がつかなかった。


「元気だけど」

「良かった。何読んでんの?」


 有無を言わせないというように間をとらずに質問をしてきた。僕は考えたり、拒絶する暇も与えられない。黙ってずいと読んでいた本の表紙を見せる。通学途中の本屋で買ったオカルト雑誌だ。今月の特集は現代からみた古の殺人鬼というもので、現代の科学捜査的観点から、古い殺人事件を見直してみようというものである。


「へー、なんか、面白そうだね」


 東山は短い感想を述べると、本を僕の手からさっと取り、中を目で追った。


「あの、返してもらっても」

「ちょっと、今いいところなんだから」

「え、あ、はい」


 何も言い返せず、僕は引き下がる。

 いやいや、おかしくないか?

 それは僕の本なんだが?少しでも言い返す勇気というのがあれば良かったのだが、欠片もない僕はただ、東山を見るだけだった。休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。


「教室に戻らないと」


 東山はそういうと、僕に雑誌を返す。


「んじゃ、また、それ読ませてね」


 それだけ言い残して、東山は図書室を出て行った。

 残された僕はただ、頭の中で彼女の言い残した言葉を繰り返すだけだった。

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