遺跡の中にて 4
来て下さった方、ありがとうございます!
相も変わらず拙い文章ですが、時間潰しにでも読んで下さるとありがたいです。
今まで、亀だマイペースだと言ってきましたが、もしかしたら更に更新間隔が伸びるかもしれません。申し訳ないです。できたら気長にお付き合い下さっていただければ有り難いです。
なんて……
なぁに落ちる事前提で考えてんだ私!落ちてたまるかぁぁ!!
「フングァーーー!!」
目の前で絶壁となった通路にすぐさま手を伸ばす。幸運にも手が届いたので必死にしがみつく。女の子だからって可愛い声を出すなんて誰が決めたの却下だ却下。それどころじゃない。
くっそー!このまま落ちてなるものか!てか罠なんて無いと思ってたよ。何で今になって発動してんだコンチクショウめ!そもそも何で私が落ちる羽目に…。
何とか上に上がろうと足を掛ける所を探すけど、上手く足が掛からない。思わず下を見ると真っ暗で、ヒンヤリとした空気が漂っている。
空洞かよっ!
見るんじゃなかった…。ますます落ちる訳にはいかない。必死にしがみついていると、
「大丈夫か!」
と後ろから声が聞こえてきた。この声さっきの男の人だな。大丈夫な訳無いだるぉお!そもそも罠踏み抜いたのあんたさんじゃないのかい!そう心で悪態をつく。
「しっかり掴まっていろ!」
すると今度は上の方から声が聞こえた。多分出口に居た人かな。思わず上を見るけど見える訳も無く。てかこのフード、こんな状況でも全然取れる様子が無い。…すごいな魔法のフードか。
そう思っていると、
ガゴン
「すまん!!」
後ろからまた声が聞こえた。嫌な音と共に。
おまっ、ふざけるなー!!という私の心の叫びと同時に「お前何やってんだ!」と焦った誰かの声。
一瞬の静寂。今度は何が起こるのかと一同に緊張が走る。
―― 答えは“私が掴んでいた床が無くなりまたもや浮遊感が私を襲う”でした。
崩れていくのでは無くて、それはもう魔法の様にフッと消えてしまった。
あ、ダメだこれ。
視界の端に何かが見え視線をやると、離れた所で私と同じように落下していく男性の姿が。助けようとしてくれていた人だと直ぐに分かった。
味方まで巻き込んでんじゃないよー!
「誰が罠踏み抜いてんだばかちんがー!!!」
あまりの事に頭に血が上り、初対面だろうが何だろうが思わず文句を叫ばせてもらった。でも元気なのはここまで。
落ちていく感覚がとても怖い。底がどこなのか、どれだけの衝撃が身体を襲ってくるのか分かない。恐怖で体中の血が冷えていく感覚がする。
怖い、死にたくない、嫌だ、怖い、怖い、怖い!!
頬に何か湿った物が当たる。スンスンという音もする。
ん~?何なんだろう………。とボンヤリ考えて。
カッと目を開き勢いよく起き上る。
私…、生きてる…。
手を握ったり開いたり、腕を叩いたり頬を叩いたりする。
痛い。…私生きてる。
生きてるーーー!!!
良かったーー!
自分の体を抱きしめて喜びに震える。涙が出てきた。
良かった。生きてた。嬉しい!神様ありがとう!
あ、この場合の神様ってあの少年神様になるのか。まぁ良いや。だって怖かった。本当に怖かった。だから生きてる事が本当に本当に嬉しい。
ひとしきり喜んだ後少し落ち着く。気を失ってたのかそのまま寝てしまったのかは分からないけど、あれからどの位時間が経っているんだろう。そのうち薄暗さに段々と目が慣れてきたので、自分が今何処に居るのか確認しようと周りを見渡す。さっきまでとは違い岩と土の大きな穴の様な丸い空間だった。少し離れた所に小さな窪みの様な物があり、その中から6個の瞳がこちらに向いている事に気が付いた。
正確には3体の生き物。小さくコロコロした姿、好奇心でキラキラしたつぶらな瞳。これは…小熊?
「おう、気が付いたか」
私のすぐ真上から野太い男性の声がした。返事をしようと見上げると、そこに居たのは――
熊だった。しかもデカイ。
頬の辺りに一筋の傷がある大きな熊が見下ろしていて固まる私。そんな様子を気にもせずにその熊は続ける。
「驚いたぞぉ。急に上から落ちてくるもんだからよう。なげーあいだここに住んでんだけど、子どもが落ちてくるなんて初めてだぞ」
え、ちょっと待って。え?ちょっと状況が理解できない。頭が追っつかない。
私、遺跡から落っこちたんだよね?んで落ちた先がここで、今までこの大きな熊のお腹を枕にしていたと。しかも熊が喋っていると。
ふーん。ふーん。
………。
意味が分からないよ!
つまり遺跡の落とし穴の先はここに繋がっていたってこと?熊の寝床に?でもさっき“長い間住んでて初めて”って言ったよね。どういう事?しかも威嚇されるどころかこれ、見守ってくれてた感じだよね?それに喋ってるってなに!?え、この世界って動物喋るの!?
情報を整理できず、固まったまま大混乱中の私をしばらく眺めていた熊が、何でもない様に聞いてきた。
「んで、おめー何なんだ?人の子だと思うけど、匂いがここからちょっと行ったトコの石の家と同じ匂いがするんだよなぁ。あそこって人が住んでたか?」
そう言って鼻を近づけてきてスンスンと匂いを嗅いでくる。あぁ、さっきの音は匂いを嗅ぐ音だったのか。ところで石の家、というのは遺跡の事だろうか。
「…っ…!?」
その事を聞こうと思ったら上手く声が出なかった。コホンと咳払いをしてもう一度聞いてみる。
「っ…!」
…出ない。
何度か試してみたけどやっぱり声が出ない。出るのはハウハウと息だけが出る。何で?さっきまで声、出てたよね…?
「何だおめー、話せねーのか?」
愕然として思わず小首を傾げている熊を見上げる、すると、
「なんだおめー!」
「なんだおめー!」
「なんだー!」
と小さな可愛い声が聞こえてきた。
窪みに居た小熊達だ。いつの間にか出て来て近くまで来ていたようだ。
「なあなあ、どこからきたんだ?」
「あれどうやってあそぶんだ?」
「おもしろそー!」
矢継ぎ早に3匹が話しかけてくる。ワチャワチャだ。好奇心が旺盛なんだろう。目がキラッキラしている。…可愛い。
声が出ない事にショックを受けていたのに、チビちゃん達のお陰か気が紛れてきた。とはいえどうして声が出なくなったのかは謎のまま。
「おいおいそんなに話すから人の子がビックリしてるだろ」
「おちてきたやつ、びっくりした!」
「やってみたい!」
「あそぼー!」
お~よしよしよし、可愛いなぁ、うんうん、そうかそうか、と撫で繰りまわして抱きしめたくなる衝動を、頭や身体を優しく控え目に撫でる事で抑え込んで微笑ましいやり取りを見守る。
はぁ~、動物好きの私としては、じゃれてくる小熊達が可愛すぎて堪りませんな~。
そのうち小熊達も少しずつじゃれつきが多くなってきて、3匹と1人がゴロンゴロン転がりまわる。私が小熊のじゃれに力負けして転がれば、小熊も面白がって一緒に転がる。きっと箸が転がっても面白い時期なんだ。力の加減はまだ完ぺきには出来ていないけど、そこは絶妙なタイミングでパパ熊がフォローしてくれるので大きな怪我はしないですんでいる。そう、この大きな熊は小熊達の父親の様で、テンションの上がった小熊達は「とーちゃんもあそぼう!」と飛びついているので間違いない。
そんな感じで遊んでいると穴の入口から、
「あらまぁ、ずいぶん楽しそうに遊んでいるのね」
と女性の声が聞こえてきた。
「あ!かーちゃん!」
「おかえりー!」
「おかえりー!」
どうやらママ熊が帰って来たようだった。
読んで下さった方、ありがとうございました!
文章の中で、方言をあえて使う事もあるかもしれませんが、他の地域の方が分からない様な方言を使わない様に気を付けています(TVやラジオで耳にする様な言葉は使いますが)。ただ方言と気付かずに書いていたら申し訳ないです。意外と、あれ、この言葉通用しないの?(驚) てなことがあったりするので。同じ県の中でもあるくらいですから、日本の言葉って幅広い(?)ですよねぇ。従妹と話してビックリしました(笑)。