脱兎の如くにげるやDAY!
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本軍に帰陣した家久は大将羽柴の身を案じ、すぐさま拝謁した。
「殿ご無事で何より!」
「じゃかぁしいわぁぃ!」
鳩が豆鉄砲をくらったかのように素っ頓狂な声を出してしまった家久は目を丸くして羽柴をみつめる。
「家久よぉ!左軍は均衡を保てというたじゃろうが!」
「しかし、殿!毎晩あのように馨しい糧食の宴をされてはこちらの兵の士気が」
羽柴は痰を吐き捨てると家久に今回の戦略について一から十までを説いた。
「獣か!相手の挑発に易々と乗るな!」
「面目ねぇ・・・」
頭を猿のようにかくと、周囲の衛兵は笑いをこらえ切れず手で口を押えた。
「まぁよい。左軍は他の寄騎にまかすけぇ黙ってこの戦を見とれ!」
不服ながらも満更でもないように家久は羽柴の横に鎮座した。
「見えるか?あの本丸を落とせば天下は目前じゃ」
「おっほ~これは見事な城ですけえの!」
天下統一を阻んでいたのは毛利の根城である、東肥城であり夜に溶け込むような漆喰が朧げに照らされ聳え立っていた。
「親方はこれを刈り取れと申すが、いやはや如何ともし難い」
「焼き討ちしてみてはいかがでござるか?」
具足を取り外し顎を摩る羽柴は気怠そうに横になった。
「そいじゃぁ先がなかろう。妙案があれば良いのじゃが」
家久は自分を指さし、羽柴に売り込む。
「おみゃーが行ったら皆殺しにしちまうぢゃろうが」
「それでいいのではござらんか?」
「じゃからいったろうに、先を考えぇ先を」
「某には早き問答にて、流石殿!」
横になりつつも足先で家久の横腹をける羽柴は苦虫を噛み潰した様な面持ちで頭を抱えていた。
陣幕の中で会話を酒の肴に身体と葬具の英気を養いつつ、明日への会議は踊り続けた。
翌日、起き抜けに羽柴は度肝を抜かれる事となる。
戦場だった場所に木霊する鬨の声。
ぼうぼうと燃える丘と轟轟と燃える東肥城がそこにあった。
そして、家久は陣幕に居なかった。
しかし、羽柴の思惑とは背反しているが故に部下の独断専行に頭を再度抱えるはめとなる。