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第八章 残されしものたち

 真冬の雪道、かんじきを履いたみやびが軽やかに駆ける。

「ヤスさん、ハルさん。大丈夫ですか?」

「これ見て大丈夫に思える?」

 全身が雪だるまみたいになったハルが言った。

 今、僕たちは桑折飛行場に続く山道を歩いている。桑折飛行場は案外山の中にあって、山の中腹を削って平らにしている。

 僕らが歩いているところは、みやびが言うに「飛行場が現役だったころに燃料とかの搬入用に作られた線路の跡」だそうで、地面にはぼろぼろの枕木とサビサビのレールが残っているらしい。

 飛行場内に入っても、レールはまだ続いてるらしく、みやびはどんどん歩いていく。

 そもそも、なんで僕たちが飛行場まで歩いているのかというと、みやびが「ヤスさんにハルさん、零戦の三二型しか持ってきてないんですか!?」と叫んだことに始まる。

 僕たちが「?」というような表情をすると、みやびは熱に浮かされたように話し始めた。

 みやび曰く、桑折飛行場内には僕らの零戦以外にもたくさんのものが眠っているらしい。そして、それらに日の目を見せてやるそうだ。

「ここです。」

 みやびが、一棟の倉庫の前で立ち止まった。懐から、鍵を取り出す。

「それは?」

「この機関庫の鍵です。」

 ハルの質問に答えながら、みやびは鍵を使って南京錠を開けた。

「よいしょっと・・・・・・・・・」

 全身を使ってかんぬきを抜いて、扉を開ける。

「えっ・・・・・・・・・・!?」

 ハルがちょっと声を漏らした。

「なに・・・・・・・・これ・・・・・?」

 そこには、黒光りする二つの鉄の塊が置かれていた。

 一番下にある棒でつながった三つの車輪の上に、箱のようなものがあり、その上に円筒形のものが横倒しに載せられ、さらにそのわきを箱状のタンクが挟んでいる。

 それは、蒸気機関車だった。

挿絵(By みてみん)

「驚きましたか?まさか、飛行場に機関車があるなんて思いもしませんよねぇ。」

 わたしも見つけた時はビックリしましたから。とみやびは笑った。

「ヤス、この機関車、海軍のもので間違いないみたいだよ。」

 ハルが、側面の水タンクに取り付けられた「2」というプレートの横を指さす。

「『桜に錨』ね・・・・・・・たしかにこのマークは海軍のだね。」

 となりに置いてある機関車は「1」のプレートで紋章はレールの断面に重なるように交差した斧。

「鉄道連隊・・・・・・・・・?なんで陸軍の鉄道部隊の紋が?」

桑折飛行場ここをつくるときは、陸軍の工兵隊も協力したとわたしのおばあちゃんは言ってました。この機関車は、たぶん、その時のです。」

 僕のかすかに漏らした声を聞き取ったのか、みやびが説明してくれた。

「まだまだあるんです!ついてきてください!」

 みやびは、僕たちを一つの掩体壕の前に案内した。かたわらに置いてあったスコップを手に取る。

「今からこの掩体壕をふさいでいる土をどかします!!手伝ってください!!」

「わ、わかった・・・・・・・・」

「わたし、運動苦手なんだけど・・・・・・」

 キラッキラの笑顔でスコップとツルハシを渡してくるみやび。

 僕とハルは、ちょっと引き気味にそれを受け取った。










 ―――――一時間後――――――――

 掩体壕を埋めていた土は、入り口のあたりだけだった。その土も取り除かれ、僕らは掩体壕の中に足を踏み入れる。

 みやびが用意していたライトをつけると、黄色っぽい光が中においてあった三つの何かを照らし出した。

『!!!!!!』

 中に置いてあったものを見て、僕とハルの目が点になる。

 なめらかなラインを描いた胴体と日の丸が描かれ端のほうが上にはね上げられた翼。

「零戦・・・・?」

 そっと僕は、その深緑色に機体に手を置いた。

「二一型とニニ型か・・・・・・・」

 さらに、もう一機の飛行機が置いてあるのを見つけた。四枚プロペラ、零戦を一回り大きくしたような機体、日の丸が描かれた逆ガル型の主翼・・・・・・・・明らかに零戦じゃない。

「これは・・・・・・・『烈風』?」

 艦上戦闘機「烈風」・・・・・零戦の後継として開発がすすめられた戦闘機。あの空母「信濃」に搭載される予定だったけどその信濃が沈み、量産第一号が完成したところで終戦を迎えた。

 これはたぶん、海に投棄されたと言われていた烈風一一型第一号機だ!

「ねぇ!ハル!僕たち、すごいのを見つけたみたいだよ!・・・・あれ?」

 ハルのほうを見ると、ハルは零戦二一型の胴体に描かれた国籍マークの後ろあたりをなでていた。そこにはなぜか、八重桜のマークが描かれている。尾翼番号は「V―121」・・・台南航空隊の番号だ。

(台南空?あのラバウルで大活躍した部隊の機がなぜここに・・・・・?)

 ハルがポツリとつぶやく。

「おばあちゃん・・・・・・・・・・・『サクラ』・・・・・・・・・」 

 キラリとしたものがハルの頬を伝った。


保信「保信とぉ!」

春音「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

保信「次回予告~!!」

―♪守るも攻むるも黒鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる―

保信「はい!毎週恒例の二人の次回予告です。ですが・・・・・・」(春音のほうを見る)

春音「おばあちゃん・・・・・・わたしはしっかり生きてるよ・・・・・・・・・・・・」

保信「こんな感じなので、僕が手早く次回予告をしちゃおうと思います!」

 デデンッ!(効果音)

保信「次回はなんと、ハルの意外な秘密が明らかに!?お楽しみに~!」

 どうも、七日町糸です。一応、本文に出てくる蒸気機関車は、アルナイン社より発売されているNゲージ鉄道模型「とても簡単なCタンク」をプロトタイプとしております。

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