第六章 戦争の後遺症と遺された記憶
さて、今回はちょっとした事件が起こります。あと、整備員の隼人さんの過去も明らかに!?
山の向こうから朝日が登ってくる。僕は、作業用の皮手袋をはめると、いつものように格納庫に向かった。
だけど、格納庫の前に着いた瞬間、僕は叫んでいた。
「な、なんじゃこりゃぁ!」
格納庫の壁にスプレーで書かれた落書き。「殺人魔機」「軍国主義者!」「この国から出てけ!」「罪を知れ!!侵略者ども!」・・・・・・。
扉を開けると、零戦は変わりなく鎮座していた。
(よかった。なにもされてない。)
僕は、そっと機体をなでる。
「お前は何にもしてないのにね。ただパイロットに操られて飛ぶだけなのにね・・・・・・・」
ほかのみんなもやって来た。やっぱり、落書きを見て目を丸くしている。
「うちにも、抗議の電話とかメールがいっぱい来てたんだけどねぇ。まさか、ここまで来るとは・・・・・・・・」
信さんが顔をしかめた。
「しっかし、よく敵さんもここまで来るなぁ。柵を乗り越え、監視カメラの目をすり抜けて・・・・・・」
隼人さんが、大して気にしてないような感じで言う。
「でも、なんとかしないよダメですよ。もしも零戦になんかあったらと思うと。」
ハルが本当に心配そうに言った。
「とりあえず、交代で見張りをしよう。万が一のために、護身具は用意しとくよ。」
信さんが言って、みんなはそれぞれの作業に入った。
***
そのことに気づいたのは、プロジェクトが始まってしばらくしたころだった。
隼人さんの右手は、指が三本しかない。親指と人差し指が根元からもげたようになくなっている。戦時中、空母「翔鶴」に乗務中、マリアナ沖海戦で敵機に撃たれた傷だという。空母は沈められ、命からがら帰って来たそうだ。
「敵なんて怖くねぇ、怖いのは、人の心だよ。戦争を是認する心のほうがよっぽど怖い。あんなのはもうこりごりだ。」
隼人さんの口癖だ。
こうも言っていた。
「俺は、昔、特攻機の整備もしてたんだ。その日のうちに飛び立って二度と戻ってこない。その機体を磨きながら、思ってたんだよ。『ああ、俺は、死なせるために整備してるんじゃないのに』って。」
機銃を取り外したのも、法律の問題だけではなく、隼人さんたっての希望でもある。「二度と戦争に使われてほしくはない」らしい。
復元した零戦には、「平和の象徴」という使命も与えられている。そして・・・・・それを運転するのは、僕だ。
夢の中で、僕はまた、桑折飛行場に立っていた。
ブルルルルルル・・・・・
空には、編隊を組んだ戦闘機が舞っている。よく見ると、日本の零戦、アメリカのP51ムスタング、中国のイ15、ソ連のYak―9D、ドイツのフォッケウルフなど第二次世界大戦で、敵味方に分かれて戦った戦闘機だ。
「きれいだろ?」
いつのまにか横に来た隼人さんが言った。
「飛行機は飛んでるだけでいいんだよ。戦争に使うもんじゃねぇ。道具は、使い手次第だ。」
そこまで聞いたところで、目が覚めた。
窓の外を見ると、旅客機が平和な空をのんびりと飛んでいった。
保信「保信とぉ!」
春音「春音のぉ!」
保信・春音『次回予告~!』
―♪守るも攻むるも黒鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる―
保信「それにしても、あの落書きの山を落とすのは大変だった~。」
春音「わたしなんてもう、シンナーのにおいで頭クラクラだよ。」
保信「なんとか落とし終わったけど、これからずっと交代で見張りかと思うと・・・・・はぁ」(ため息)
春音「これ以外特に話すこともないから、紹介行っちゃいましょう!」
保信「はい!次は、新キャラ登場!って、まだいるの!?」
春音「それでは皆さん!」
保信・春音『お楽しみに~!』