第五章 エンジン復活!
さて、前回の次回予告でどっかに行った春音の最期も気になりますが、まずは本編をどうぞ!
春音「作者さん!『最期』って、わたしまだ死んでませんよ!」
大学も冬休みに入ったある日、僕たち「戦闘機研究会」は、いつものように零戦の復元作業と零戦ミュージアム開館に向けた準備をしていた。
「ヤス、野口自工から電話。」
零戦の機体磨きに夢中になっていると、いつの間にかハルが来て、すぐ後ろに立っていた。手には電話の子機を握っている。
「『エンジンのテストをするから立ち会ってほしい』だって。」
「日時は?」
「今日。」
「え、それは無理。今忙しいし、ハルが行けばいいじゃん」
僕がそういったとたん、ハルが泣きそうな顔になる。
「ヤスといっしょがよかったんだけど・・・・・」
声も少し震えているような気がする。
「行ってやりゃぁいいじゃねぇか、ヤス。こっちは大丈夫だからよ。」
隼人さんの声がした。
「そうそう、女の子を泣かせちゃだめだぞ。」
いつのまにか信さんもいる。ちなみに、信さんは常にここに入り浸っている。「社長は何かと融通がきく。」らしい。
「じゃあ、いってきます。」
一転して笑顔になったハルといっしょに、僕は格納庫を出た。
僕とハルは、猪苗代駅で列車を降りると、駅前に止めてあったタクシーに乗った。
例の野口自工につくと、中学生くらいの子供たちが集まってるのが見えた。その輪の真ん中には、ボンネットのカバーが外された黒いディーゼル機関車がいる。
僕らの足音の気づいたのか、その中の一人がこっちを向いた。黒いパーカーを着た現代風の男の子だ。
「あの・・・・零戦復活プロジェクトの神崎ですが・・・」
「あ!神崎さんですね!ちょっと待っててください、今取り次ぎますから。」
僕が声をかけると、男の子は、事務所に入っていった。中から、声がかすかに聞こえる。やがて、白髪をはやした男性が出てきた。
「どうも、ここの社長の野口晴信です。零戦プロジェクトの神崎保信さんと山ノ井春音さんですね?ゼロのエンジンはこちらです。ご案内しましょう。」
晴信さんは、かなりしっかりとした動作で歩いていく。
「そういえば、さっき外で子供たちがなんかやってましたけど・・・」
ハルが、口を開いた。
「ああー、あれですか。昔ここらで走ってた鉄道を復活させようとしてるのですよ。なかなか面白いことやっとりますでしょ。」
晴信さんが目を細めて言う。
「すごいですね!わたしたちと似たものを感じます。」
ハルの目が輝いた。
建屋の中に入る。零戦のエンジンは、建屋の真ん中に置かれていた。中島飛行機製「栄」だ。
「大変でしたよ。部品の半分くらいは新製して取り換えましたからな。」
そう行ってる割に、晴信さんは楽しそうだ。
「なにしろ私は、古いエンジンの面倒を見ることが好きでしてな、もう生きがいと言ってもいいかもしれない。零戦と聞いたときは燃えましたよ。なにしろ、あこがれの零戦ですからな。」
本当に、楽しそうだ。
仮付の燃料タンクにガソリンが入れられ、エナーシャが回された。
ドドドドド・・・・というエンジン音を立てて、栄が動き始めた。回転数調整もスムーズにいく。
「どうですか?私どもとしては合格ですが。」
晴信さんがきいてきた。
「だいじょうぶです。明日にでも運びたいのですが、トラックの手配が難しくて・・・・。」
晴信さんの目が輝く。
「それなら任せてください。おーい、真美ちゃん、明日トラック出せるかい?」
「出せますよー。」
外から女の子の声がかえってきた。
「運ぶほうも、こっちに任せてください。だいじょうぶですよ。」
晴信さんが笑って言った。
どうやらこの人は、楽しいことなら損得勘定抜きにしてやってしまう性格のようだ。こっちとしては、そのほうが仲良くできるような気がする。
『よろしくお願いします!』
言葉の前に「これからも」という言葉を心の中でつけて、僕とハルはお辞儀をした。
春音「春音とぉ!」
保信「保信の~!」
保信・春音『次回予告~!』
―♪守るも攻むるも黒鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる―
保信「それにしても、この前どこ行ってたの?」
春音「大和長官といっしょにあんなことこんなこと・・・・・・具体的に言うと検閲で引っかかるから言えないけど。」
保信「検閲に引っかからないように言うと『コスプレショー』的なかんじかな?」
春音「そうだよ。信さんが二式大艇でお迎えに着てくれたの。ありがとうございます!」
信さん、スタッフのスペースで親指を立てる。
保信「何してたのか気になるけど、早めに次回予告しちゃおう。」
春音「うん!さて、この次は、反対派の妨害活動がわたしたちに忍び寄る!?それではみなさん」
保信・春音『お楽しみに~~~!!』