第一章 発見
初めての時に二話連続投稿というモーターボートで戦艦大和に挑むような無謀な真似をした七日町糸です。
この話で、主人公が初登場します!お楽しみに!
強い夏の日差しが半そでシャツから出た腕に照り付ける。背中には、汗が染みたシャツが張り付いている。
「ちょっとヤス、こんなに歩くなんて聞いてないよ。」
後ろを歩いているハル―山ノ井春音が言った。ヤスっていうのは僕のあだ名。名前が神崎保信だからこう呼ばれる。
「そろそろだから」
ハルに言って、地図を見る。
ハルは、飛行機が好きな大学一年生だ。性別は、女子。同じ講座をとってることで軍事ファンの僕と知り合って、二人で「戦闘機研究会」を作った。
今、僕らは福島県の北、桑折町にいる。
「このあたりだよね?」
ハルが僕の持ってる地図をのぞき込んできた。この地図は、つい最近、民家から発見されたものだ。一番上には、「桑折飛行場見取図」と書いてある。タイトルの近くには、「海軍省省外極秘」のスタンプ。
最初これが見つかった時、持ち主はこれを処分する予定だったという。僕はその情報をかぎつけて、八方手を回して譲ってもらった。
元の持ち主によると、海軍の極秘の飛行場、それも特攻専用のものらしい。
これはただの見取図だが、何しろ「省外極秘」と書いてある。―つまり、連合国側に知られてはマズいものだ。だいたいの所在地は書いてある。
あとは、地元の古老に聞けばわかると思った。実際、いまだに地元では「飛行場」って呼ばれてたし。
「ここか?」
地元の人に教えてもらった地点にたどり着く。まわりに木が植えられていて、外から見ただけではよくわからない。でも、まっすぐに伸びる滑走路っぽいものや、まわりに作られている掩体壕と思われるものが見える。
「確認しとこう。」
ドローンを使って空撮した写真と見取図を照らし合わせる。掩体壕、滑走路の位置がぴったりと合った。
「ここだな。あとで教育委員会に報告しとこう。」
僕とハルは、手分けして探索することにした。
滑走路には、飛行機の残骸があった。爆弾を積んでいるから特攻機だろう。
頭にライトを装着して、掩体壕の中を調べる。中からは、あんまり出てくるものはなかった。二つ目の壕の中を調べ終わり、外に出ようとした時だった。
「ちょっと!!ヤス、すぐに来て!!」
ハルの叫び声が聞こえてきた。
急いで声のするほうに向かう。
ハルは、おどろきの表情で掩体壕の中を見つめていた。
「あ、あれ、見て・・・・」
ハルの指さす先を見た僕は、驚きのあまり倒れそうになった。そこには、一機のレシプロ戦闘機が置かれていた。角ばったところが一切ない滑らかなラインの機体。エンジン部分は黒、その他の部分は濃い緑色に塗られている。胴体には、大日本帝国を現す赤い丸印が描かれていた。
「これって、零戦だよね。」
「たぶん・・・・いや、絶対そうだ。こんなに美しい戦闘機は、ゼロ以外にないよ」
ハルの言葉に、僕はうなずく。
さらに近づいてみた。地元の人以外には知られてなかったので、部品の欠落もない。八十年以上もずっと掩体壕に入ってたから機体のサビもない。ほぼ完全な状態で残ってる零戦だ。
「ん?これは?」
ハルが機体の脇にあった布の塊に気づいた。
「なんだろう、これ?」
無造作に布をめくったハルが、悲鳴を上げた。
「キャーーーーーーーー!!」
布の下からは、人間の頭蓋骨が、こっちを見ていた。布の正体は、旧日本軍の飛行服だった。
「と、とりあえず警察呼ぼう。」
僕は、スマホを取り出すと、110番通報をした。
保信「保信と」
春音「春音の」
保信・春音『次回予告~!』
♪さらばラバウルよ また来るまでは~(ラバウル小唄が流れる)
保信「はい!やっと我々が登場しました!」
春音「二人で飛行場に行く男女・・・・・カップルに思われなかったかな?」
保信「飛行場でデートするカップルなんていないと思うけど・・・・・」
春音「そういえば、作者さんはまた来ないの?」
保信「もうそろそろ来てもよさそうなんだけどなぁ」
トントン・・・(誰かが春音の肩をたたく。振り返ると、肩までのショートカットの美少女が・・・・)
春音「どちらさま?」
???「あの、わたし、この物語の作者が同時進行で書いている『沼尻鉄道復活記』という小説の主人公、國分大和です。作者さんから、これを預かってきました。」
大和、封筒を春音に渡す。
春音「どれどれ・・・・」
保信「えーっと、『いよいよ物語が本格的に動き出す!あの二人を書くのは大変だ~!』だって。」
春音「大変ね~。でも、これは二つの物語を同時進行で書いている作者さんの自業自得ね。」
保信「というわけで、次の話もお楽しみに~!!」