第十一章 横須賀にて
初めて、オリジナルの艦魂をかきました。
次の章で詳しいことがわかります。
(*)ここで言う「天皇陛下」、「陛下」とは、昭和天皇のことです。
♪守るも攻むるも黒鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる 浮かべるその城 日ノ本の 皇国の四方を守るべし
「んんんんんん・・・・・・・」
ひさしぶりに聞く軍艦行進曲の調べに、わたしは体を起こした。
(あれ・・・・?わたし、なんでこんなところに?わたしは、あのマリアナ沖で死んだはず)
♪真金のその艦 日ノ本に 仇なす國を 攻めよかし
♪石炭の煙は 大洋の・・・
軍艦行進曲の調べは、まだ続いている。
わたしは、立ち上がると、周りを見渡した。
(ここ、見覚えある。)
どうやら、わたしの船体は、懐かしい横須賀のドックにいるらしい。
ドックに水が満ちていく。閘門が開いて、わたしは海へと滑り込んだ。
進水式から二日後・・・・・
「ここ、横須賀だよね?」
本体の最終的な艤装を終えたわたしは、甲板に立ってつぶやく。
ドックはそのままだったけど、久しぶりに見る横須賀の街は、かなり変わっていた。
汽罐車の煙が絶えなかった駅の上には、糸のようなモノが張られて、銀色の汽車がひっきりなしに出入りしている。
若者たちは、色とりどりの手帳のようなモノを手に取って、その表面を指でなでたり、自分に向けたりしていた。
「変わったなぁ。横須賀も」
懐を探ると、「光」一箱とマッチが出てきた。手早く火をつけて、口にくわえる。
「すいません。」
「ん?」
後ろから聞こえた声に振り向くと・・・・アメリカ人がいた。
(なんで日本の軍港にアメリカ人?)
「初めまして。わたしはアメリカ海軍ニミッツ級原子力空母『USSロナルドレーガン』艦魂です。ご挨拶に伺いました。」
彼女は、その青い瞳でわたしを見つめる。
「なんで、挨拶なんかに来たの?」
「我々の大先輩にご挨拶するのは当然です。それに・・・・・・」
レーガンは、驚くべきことを言った。
「今や、我がアメリカ合衆国と日本は同盟国です。」
わたしは、大和長官の四十六センチ砲を喰らったような衝撃を受けた。
「アメリカと日本が・・・・同盟国。ありえない。」
「あの戦争で、日本はアメリカに負けました。その後、占領統治を経て主権を回復。今では我がアメリカ合衆国の唯一無二の友好国です。」
「日本が・・・負ける?この神国が?」
レーガンは、何冊かの本をわたした。「学び考える歴史」、「新しい公民」と書いてある。
「それは、中学校、あなたの時代の国民学校の教科書です。それを読んでいただけたら、わたしの言ったことが、理解できると思います。」
レーガンは、非の打ち所のない敬礼をすると、光に包まれ消えていった。
レーガンからもらった本によると、わたしが死んだ後、日本はいろいろ大変なことになったらしい。
原子爆弾とかいう街一つを一発で消せる爆弾が広島と長崎に落とされて、さらにソ連が参戦。これは、降伏するしかないね。
わたしたちが所属していた海軍をはじめとする日本軍は無くなり、今では「自衛隊」というものがこの国を守っているそうだ。
「ふむふむ」
さっきの本を読み進めていたわたしは、一枚の写真に目が釘付けになった。
「陛下が、アメリカ人と?」
天皇陛下が、大柄なアメリカ人と写っている。アメリカ人が失礼な態度をとっているのに、叱ろうともしない。
「やっぱり、受け入れるしかないね。」
わたしは本を閉じると、立ち上がった。
國滅びて翔鶴あり。
「今度こそ、幸運艦になれるかな・・・・・・」
そうつぶやいて空を見上げたわたしの目に、懐かしい形の機体が写った。
保信「保信とぉ!」
春音「春音とぉ!」
みやび「みやびのぉ!!」
三人『次回予告~!』
―♪守るも攻むるも 黒鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる
春音「この人、誰?」
保信「さあね。」
みやび「艦魂らしいですよ。船に宿る魂です。わたしには見えますよ。」
春音「そうなんだ。ありがとう!」
保信「さて、次回予告しましょう!次回は、隼人さんの思い出の艦が復活!!それでは皆さん」
三人『お楽しみに~!』
新キャラ紹介
翔鶴
旧大日本帝国海軍翔鶴型航空母艦一番艦「翔鶴」の艦魂。とあるところから見つかった当時の図面に基づき本体が復元建造された際、横須賀基地で復活した。
見た目は二十歳くらいの女性。黒髪を肩まで伸ばしている。
太平洋戦争のマリアナ沖海戦で一度死んでいる。
ロナルドレーガン
アメリカ海軍ニミッツ級原子力空母九番艦「ロナルドレーガン」の艦魂。横須賀を母港とするおかげか親日家で、天ぷらそばが大好物。
国籍問わず第二次世界大戦に参加した艦船のことを「大先輩」として慕っている。
見た目は十五歳くらいの女性。典型的な白人の顔。白い髪をショートボブにしている。