第九章 春音の祖母
さて、今回は、ハルの祖母のことが明らかになります。
*なお、今回の話は実在の人物が登場しておりますが、歴史上の事実とは一切関係はございません。
含みを持たせてあるのは、外伝で書こうと思っているからです。
「ハル、どうしたの?」
何かぶつぶつつぶやいているハルに声をかけると、ハルはポケットから財布を取り出した。
中から、二枚の写真を取り出す。最初の一枚に写っているのは、三機の戦闘機とその前にならんで笑っている飛行服姿の三人の男女・・・・・え?女の人?
「ハル、ちょっとそれ見せて。」
「うん」
ハルから写真を借りて、よく見てみた。真ん中に、飛行服を着たハルそっくりの女の人。その両脇に同じ格好でどこかで見たことがある顔の人がポーズをとっている。
後ろに写っているのは、どうやら今僕らの目の前にある二機の零戦と一機の烈風らしい。
裏返すと、そこには墨痕鮮やかな署名が・・・・・
「『昭和二十年八月十四日 横須賀飛行場にて写す 大日本帝国海軍横須賀航空隊 山ノ井彩音一飛曹 坂井三郎中尉 二〇三航空隊岩本徹三中尉 撮影 七日町一整曹』・・・・・・・」
みやびが横からのぞき込み、澄んだ声で読み上げてくれる。
「ここに書いてある『山ノ井彩音一飛曹』って言うのがわたしのおばあちゃん。台南空を経て横須賀航空隊、三四三空に所属。ほかの二人はおばあちゃんのラバウルのころからの戦友だって。そして、この二一型がおばあちゃんの愛機『サクラ』。このマークは、おばあちゃんが描いたんだって。」
ハルがもう一枚の写真を見せながら言う。もう一枚の写真は、駐機された紫電改の前でハルのおばあちゃんと二人の男の人が笑っている写真。
裏返すと、「松山基地にて 大日本帝国海軍三四三航空隊 山ノ井彩音一飛曹 菅野直大尉 杉田庄一兵曹長」と書かれている。
一枚目の写真の零戦をよく見ると、国籍マークのすぐ後ろに、八重桜の花が描かれていた。
そっと翼に上り、風防を開けると、そこには一着の救命胴衣が・・・・・・
裏返すと、「V空 山ノ井彩音一飛曹」の文字。
もう一機の零戦には岩本中尉の、烈風には坂井中尉の救命胴衣が置かれていた。
ハルが、「サクラ」のコックピットにそっと体を滑り込ませる。安全帯を締め、右手を操縦桿、左手をスロットルに置くと、目を閉じた。
十分くらい目を閉じていたハルは、そっと目を開けると、コックピットから出て、僕とみやびの前に立った。
「なんか、懐かしいおばあちゃんの声が聞こえたような気がする。」
ハルは本当に幸せそうな顔でほほ笑む。
その横顔と三機の飛行機を赤い夕陽が優しく照らしていた。
保信「保信とぉ!」
春音「春音とぉ!」
みやび「みやびの~!」
三人『次回予告~!』
―♪守るも攻むるも黒鉄の 浮かべる城ぞ頼みなる―
春音「で、一人増えてるような」
みやび「えへへへへへ、作者さん直々の指令なんです。嬉しいです。ハルさんやヤスさんと同じスタジオに入れて。あと、作者さんからの手紙もあずかってます。」
保信「どれどれ・・・・・・・・・『今回から、みやびもいっしょに出させます。みやびには《二人が懇切丁寧に指導してくれる》と言ってありますので、よろしくお願いしますm(_ _)m 』だって。」
春音「あの愚作者、後輩指導をわたしたちに押し付けたな。」
保信「まあ、みやびにはおいおい教えることにして・・・・・ハル、そういえば、あの飛行機たちはどうなったの?」
春音「あの子たちも福島空港に運び込んだよ。わたしの『サクラ』から優先的に復元してもらってる。」
みやび「機関車たちは、同じ福島県内にある『協三工業』っていう会社で整備してもらってます~」
春音「わたしのサクラは、あと三か月で進空できるように注文しといたから、もう少しで出来上がると思うよ。」
保信「それで隼人さんたち整備員がフラフラしながら歩いてたのか!ハル、お前というやつは・・・・」
保信、頭を抱えて放送卓に突っ伏す。
保信「あとで整備員さんたちに差し入れ持ってってお礼とお詫びしないと。ああ、頭が痛い。」
みやび「だいじょうぶですか!?ヤスさん!!」
春音「だいじょうぶ。日常茶飯事」
保信「元はと言えば誰のせいだ・・・・・・・」
春音「ヤスがあんな状態なので、みやびとわたしだけで次回予告しちゃいましょう!どうぞっ!」
みやび「はいっ!次回は、いよいよヤスさんとハルさんの飛行訓練が始まります。それでは次回も」
みやび・春音『お楽しみに~!』




