プロローグ
女主人公の小説は初めてです。ちょっと緊張します。
およそ五百年前、魔女と呼ばれた一人の女性がいた。
その女性は『魔法』を使い、様々な人々を不幸に貶めたと言われている。
それまで誰も彼女を倒すことなどできはしなかった。
そこには明白な答えがあった。
実力差ではない。彼女の力は当然恐ろしかったが、それ以上に恐ろしいことがあったのだ。
認めたくないような、しかし現実味のある理由が。
当時の魔法はそのさらに百年前に魔女が生み出したものだ。
まだまだ研究は始まったばかりで、これから輝かしい魔法の歴史が始まろうとしていたのだ。各国の研究機関が我先に、と躍起になって魔法の解明を続けた。
唯一、その百年前から生き続けている魔女だけが、魔法についてのすべてを知っていた。
そんな彼女は、自分を殺そうと詰め掛けてきた兵士たちのこう告げたのだ。
「私を殺せば、この世界の魔法は失われますよ」
とても穏やかな口調でそう言った。
とても信じられるような話ではなかったが、そういう可能性は絶対にないとは言えなかった。
それは彼女自身が魔法を生み出したからである。
誰もが頭を抱え、魔女に怯える恐怖と魔法という力を失う恐怖の間で彷徨った。
そんな中、一人の男が皆に呼び掛けたのだ。町の人々、国の人々、他国の人々へ。
「人間は、魔法などなくとも生きていける」
その声は次第に強くなり、気付けばいつの間にか世界中へと届いていた。
そして、悩みに悩んでいたそれぞれの国の王は、一つの決断をした。
その男を筆頭として魔女を打つ、と。
恐れは当然あった。
しかし、一番前を進む男に人々は感激し、多くの者がその姿にあこがれた。
この男こそが、今後、英雄と呼ばれる男であった。
その男がいることで、魔法を失う恐怖を乗り越えられた。新たな光を見つけた。
各国が決断して間もなく、魔女は倒された。
魔女が警告をしてから一年近く経っていた。
そして、魔女の言った通り、この世界から魔法が消えた。