第1-7章 居場所
ようやくお互い平常心を取り戻したとき俺は急に恥ずかしくなった。目の前のフレイアも似た感情を抱いたのだろう。色白の肌は真っ赤というよりも全体に薄紅色に染まり、少しもじもじしてる。
「ありがとう、私もう本当に大丈夫になったから、家に戻ろうか?寒くなってきたし」
「そ、そうだよね」
俺は照れた顔が見えないように急いで反対を向いて答えた。
「ミィっ」
ライプーが嬉しそうにフレイアの肩で鳴いた。
そして俺たちはおばあの家に戻った。
心配そうなおばあとミリアちゃんに迎えられ、フレイアはいつもの笑顔で心配させないようにしていた。
そしてフィンヴァラの祠に向かう最後の夜が訪れた。
俺は当然寝る場所がないから、フレイアにことわって、フレイアのベッドの隣の床の下に寝たんだ。
ん〜やはり寝れんっ!!と思いながら、月明かりがうっすらと入る部屋の天井を眺めていた。
今日一日いろいろな事がありすぎた。
俺の頭の中はパンクしそうだった。
俺って今幽霊なんだよなきっと、これはこれで悪くないなっと、ベッドの上のほうのフレイアを見た。
この世界のベッドは低くて床より15センチくらい高いだけのものだから、床に寝ていてもベッドの上が見えないなんてことはない。
さっきの湖の畔でマジメモードだった俺は、継続して、フレイアの遣わされることや、自分のことを考え始めていた。
だがしかし、異世界に来たからといって、性格まで生まれ変わったわけではない、考えようとしたそばから無理だった…。
隣で寝ているフレイアが目の保養すぎるのだ。今の状況を元のいた世界に配信でもしたら、異世界1000年の1人の美人すぎるなんとか、絶対すぐ書かれるはずだ。
可愛すぎる横顔と静かに上下に、沈みそして浮きを繰り返す程よい二つの丘…。今この世界の夜はそんなに寒くない、ほぼ布団をかけてないような感じというか申し訳ない程度にお腹の下に薄ーい布というかブランケットがかかっているだけなのだ。
そもそもたぶん、フレイアは最近成長したのではないだろうか、パジャマ的な衣服が小さすぎるのだ、下には膝まで届いてないし、小さくてスパッツにも見える。上もたぶん見えないけどきっとおへそが見える状態だろう。体のラインが美しく見え、そこに月明かりが照らすもんだからもうその可愛いさはヤバイとにかくヤバイのだ。
「ねぇ…君起きてる?」
突如フレイアから話しかけられた。
「ああ、俺も寝れないんだ、俺幽霊っぽいし寝る必要ないのかもしれないけど」
内心見ていたのがばれたのかと思ってドキドキしたが違ったっぽい。フレイアは怒ることなく言葉を続けた。
「明日ね、フィンヴァラの祠までついてきてほしいの…。」
「なんだそんなことかぁ、安心した、俺怒られのかもと思ったよ」
俺は小さく笑いながら答えた。
「ふふっ、なんで君を今怒るの?むしろ私感謝してるくらいよ、さっきも君に話したおかげで気持ちの整理がついたし」
フレイアもつられて小さく笑いながら言った。
少しこんな時にもDTの癖がでた自分に罪悪感を感じながら俺は伝えた。
「最初から、俺は明日フレイアについていくつもりだよ」
「暇だしさ、君とライプーにしか、俺見えてないみたいだし。」
「誰も相手にしてくれないしさ」
「フィンヴァラの祠までずっと隣にいるし、フレイアが良ければずっと俺の話相手になってよ」
「きっと明日何も起きないと思うし、フレイアも暇だって」
「フィンヴァラの祠までピクニック気分でさっ、カラスが鳴いたらまたここに戻って来よう」
俺はさっき君を守ると言ったから恥ずかしくて、照れ隠しに少し戯けてみせた。
「ピクニックとカラスとかわからないけど君が優しいのは解る…」
「ありがとぅ…」
フレイアは今まで横にぬりながら俺のほうを見ながら話していたが、反対側に向き直した。
「ほらっ、フレイア。だいぶ遅いしそろそろ寝ようか羊数えよーぜ」
「もうっ意味わかんないっ、おやすみ」
フレイアは小さく笑い安心したように眠りについた。
夜は静かに過ぎていき、フィンヴァラの祠に遣わされる明日がやってきたのだった。