こんな世界から。
「本当に良いんだね?」
私は、何度も確認をく繰り返す黒い魔物に若干の焦りと苛つきをおぼえる。
この黒い魔物に出会ったのは月のはじめの頃だったから既に3週間はコレといたことになる。
私は、周りから見ても不憫な子だったと思う。
ヒステリックに喚き散らす母親、家に帰らない父親
火の消えたような家庭で過ごし、学校に行けばヒステリックな母親が起こした問題のせいか遠巻きにされ、近づいて来たかと思えば罵詈雑言を浴びせられ中学生が思いつく限りの嫌がらせをうける。
こんな世界に嫌気が指していた。そんな時に出会ったのがこの黒い魔物だ。
この魔物はうさ耳と、ト音記号を模したような尻尾がボールにくっ付いたような見た目をしている。
もるんと名乗ったコイツに異世界にて悪役的少女をしてみないかと誘われた時には二つ返事で了承した。
にも関わらず3週間も出発を引き伸ばされもるんが現れてから不気味な程猫なで声で話しかけてくる母親の相手をさせられ精神的にも身体的にも疲れている。だからこそさっさとこんな世界とオサラバしたい。
そんな私の心情を察したのかもるんはヤレヤレと言ったような顔でありもしない空間に扉を開いた。
あぁやっと、やっと嫌いだった家族と、好きになれるわけのない学校とクラスメイトとナにもかもが嫌いだったこの世界からサヨナラできる。
その事が何より私は嬉しかった。