一族編 54、ついに日本へ
〜暗闇〜
思い出した。
妹のこと。
なんで忘れてたんだろう?
こんなに重要なことを。
もしかして、まだ思い出せない13歳から15歳辺りまでの記憶も関係があるんだろうか?
俺はまだなにか大切な記憶を忘れているんだろうか。
俺は、弱すぎて妹も守れなかった。
こんなに弱い奴は、この暗闇から出るべきじゃないよね。
ふと、誰かの気配を感じて振り向いたら、吸い込まれそうな黒い瞳に黒髪の男の人が此方を見ていた。
鋭い目つきをしているが、相手は無表情なので何を考えているのか全く分からない。
「えっと、誰?ですか?」
「……」
答えてくれない。
この人は強そうだ。僕もこの人みたいに強ければなあ。
そう考えてると、何だが涙が止まらなくなってきた。ポツリポツリと床に落ちる。
恥ずかしいなあ、人が見てる前で。
黒髪の男の人は、少し戸惑ってるようにも見えた。殆ど表情が変わらないから、僕の気のせいかもしれないけど。
「……受け止めろ」
受け止める?
「本当の記憶と自分の弱さ……」
「受け止めて強くなれ」
受け止めて、強くなる。
そっか、俺には、そうするしかないね。
じゃなきゃ前に進めないよね
「うん。俺、弱いけど強くなれるように頑張るよ」
そう言うと、彼は微かに微笑んだ気がした。
またまた俺の気のせいかもしれないけど。
「……俺も助けてやる」
「うん、ありがとう!!」
すると、僕の意識は上へ急上昇していった。
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〜飛行機 休憩ルーム〜
「んん、あれ」
エスターテが目を覚ますと、休憩ルームのソファの上にいた。
近くには心配そうに見つめているルピィがいた。
「エスター!大丈夫ですか!?」
ぼんやりと暗闇での出来事を思い出す。
受けとめると決めたこと、助けてくれると言ってくれた男のこと。
ただの夢だったかもしれないけど、もうエスターテの心は落ち着いていた。
「うん、ごめんね。心配かけちゃって……」
「お!!エスターテ君おはよう!暇だし、なにか皆で遊ぼうぜィ!」
カリアの小脇には、休憩ルームに置いてあったトランプやボードゲームなどが抱えられていた。
「いいですねー」
こうして、日本に着くまでの間、皆で遊んだり、仮眠をとったりして過ごしていた。
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〜日本 空港〜
「カリアさん、ずっと負けてましたね」
余りの弱さに、エスターテは苦笑する。
「こいつは、昔っからゲームが弱いんだよ」
カリアの祖母が、凹んでいるカリアにトドメをさす。
ぐっさりという音が聞こえてくるようだ。
そんなカリアを、双子は面白がって更に追い打ちをかけている。
「さ、さ、取り敢えず本家に向かうよ!」
テキパキと、カリアの祖母は荷物を受け取り、タクシーを呼んでいた。
「うわぁ!!初めての日本!!晩御飯は、スシかな!?おおっ日本語だーー!」
空港内を歩くエスターテは、ずっと興奮気味だった。
「ほら、エスター!早く行かないと組の方が待ってますよ?」
「ううう……そのことさえ無ければ楽しい日本旅行なのにいいい」
「何をいってるんですかっ護衛がメインなんですからね!」
そういいながら、エスターテをタクシーに詰め込む。
「うあああ聞きたくないいい」
タクシーは、イタリアからやって来たマフィア達を載せて本家に向かった。