一族編 50、離陸
「まもなく離陸致しますのでシートベルトの着用をお願いします」
部屋に入ってきたのはスチュワーデスだった。
「え、A部屋の人達はいないんですか?」
エスターテがシートベルトをつけながらスチュワーデスに聞く。
「A部屋のお客様は抗争が入ったそうですので急遽キャンセルされました」
よくあることですよ、と素晴らしい輝きを放つ笑顔をみせた。
「そうですか……」
滅多に見ないスチュワーデス(しかも美人)の笑顔に顔を赤らめるエスターテ。
スチュワーデスは隣のB部屋に行ってしまった。
「ふふ、エスターテ顔赤いですよ」
「あああ赤くなんかないよよよ、いや、美人だなーって思っただけって言うか、あ!でもルピィも充分美人だし……」
明らかに動揺し、その上聞いてもいない事を言い出す始末。
苦笑するしかないルピィは取り敢えず「ありがとうございます」とだけ言っておいた。
再びスチュワーデスが戻って、素早くシートベルトの確認をし出ていった。
そしてしばらくしてからエスターテ達の乗る飛行機は離陸した。
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PM7:00
〜飛行機内〜
飛行機が離陸する時の独特の浮遊感を楽しみ、しばらくしてシートベルトが外せるようになり休憩ルームには出入り自由となった。
エスターテ達は日本へ直行なので12時間程の空の旅となる。
「日本に着くのはイタリア時間で19時、日本時間では日をまたいで深夜の3時ぐらいになりますよ」
「え……深夜に着くの?」
「ええ。私達みたいなマフィアや任侠の人が動くには深夜の方が都合がいいんですよ」
ルピィはいつもの素晴らしく黒い微笑みを見せる。
――そう言う事か……!
「「飲み如何ッスかぁ〜」」
「リンクさんとランクさん……何してるんですか」
「いやいや、この飛行機スチュワーデスさん来ないじゃないッスか」
「だからスチュワーデスさんごっこッス」
二十歳にもなってスチュワーデスさんごっこをしてるリンクとランク。
「じゃぁ私はワイン頂こうかしら?」
――……ルピィもスチュワーデスさんごっこに付き合うのかな?
エスターテがルピィを見てみるとそんな考えは即効打ち消さず事になった。
――……笑みが黒い!!
これはスチュワーデスさんごっこを利用したただのパシりである。
「「あ…………」」
ルピィの黒い笑みに気づいたのかリンクとランクは冷や汗をかきながらそそくさと休憩ルームへ移動してしまった。
「行っちゃいましたねえ」
ふふ、と笑うルピィに若干恐怖を覚えたエスターテだった。
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同刻〜飛行機内〜
カリア・カリア祖母
「あの子がロッタ?」
カリアの祖母が小声でカリアに尋ねる。
カリアの祖母は椅子を倒し横になりながら小声で話している為端からみたら二人が話しているなんてわからないだろう。
「そうだよ婆ちゃん。全く別人みたいだけどねぃ」
「うーん……エスターテとして私と会うのは初めてなのよね」
「ああ、何?婆ちゃん寂しかったりするんでィ?」
ニヤニヤしながらカリアは自分の祖母を見る。
「いやいや、あの生意気なガキにちゃーんと歳上に対する礼儀ってもんを一から教えなきゃねーえ?」
祖母は別の意味でニヤニヤしていた。
――ロッタ……お前婆ちゃんに何をしたんでィ
「エスターテ君をあんまり虐めちゃ駄目だよィ婆ちゃん」
「ふふ、じゃぁちょっとお話してこようかなーっと♪」
カリアの祖母はシートを起こし、立ち上がり、エスターテ達の席へ向かっていった。