一族編 49、奴ら
〜飛行機内〜
運が良い事に一番最初に飛行機に入ったのはエスターテ達だったのでC部屋に行くまでにマフィア等に遭遇せずに済んだ。
この飛行機は、部屋と部屋の間にゆったりとした広さのトイレ・休憩ルームがあり、休憩ルームには紅茶やワインなど様々な飲み物とお菓子が置いてある。
休憩ルームには離陸してから30分程で出入り自由になり、
基本的にセルフで飲み物や食べ物をとりに行ったりするのでスチュワーデスは夕食以外は何も運びにこないようになっている。
普通の飛行機と違い、全部ファーストクラスの部屋なので飛行機全体が豪華で変わった作りとなっている。
細部にまでこだわった装飾がされていて部屋全体が高級ホテルのようだ。
「ルピィ!俺、窓際の席がいい!」
「エスターったら……さっきまであんな死んだ目してたのに飛行機乗ったとたんにはしゃいじゃって」
座り順は、部屋の左上からエスターテ・ルピィ、右上はカリア・カリア祖母、左下の席は空いていて右下にリンク・ランクとなっている。
ルピィがやれやれといった視線でエスターテを見つめるが、それにも気づかずはしゃぎ続けるエスターテ。
「日本に行ったらまず本場のスシやウドンを食べて〜」
「着いたらまず組の方に挨拶ですね」
「オテラやジンジャ巡りもするんだ!」「神社なら組の集会場の近くにありましたねーそこに 皆さんで 行きましょうか」
「……ルピィ?」
「はい?」
「何かの嫌がらせかな?」「そんな事ないですよー現実を教えただけです」
「……」
エスターテが更に文句を言おうと口を開いた瞬間、扉が開く。
ウィィン……
部屋につくまでに遭遇しなかったからと言ってA、B部屋に行こうとするマフィア達は必ずC部屋を通るので必然的に遭遇してしまうのだ。
「あ、カリアさんじゃないですか?」
「あ、ハヤト君じゃないかぃ」
ぞろぞろと入ってくる8人。
奴らの名は――……α。
ハヤトと呼ばれた少年以外は先に部屋に向かったようで、
今はカリアとハヤトが親しげに話している。
「ほらっさっきの人達が前、話しをしてたα……エスター?」
エスターテは窓についているこれまた高そうな赤いカーテンに頭を突っ込んで何やら呟いている。
「エ、エスターテ!?」
「ヤバいヤバいヤバい怖いよ怖いよ……」
「………………」
「こんにちは」
ふと見上げるとハヤトがルピィの横に立っていた。
――この子がロッタが話していたハヤト……
「こんにちは、えっとルピィさんと……エスターテさん?カリアさんから少し話を聞きましたよ!僕はハヤトって言います」
まだ幼さの残る顔で微笑む。
エスターテはというとまだカーテンに頭を突っ込んでいる。
「ほら、エスター!挨拶挨拶!」
「やめてぇ〜〜あぁあぁあああ」
ついにハヤトの前に顔を出す。
「はは、こんにちは、エスターテさん!面白い人なんですね」
――あの〜ここにいる面白い人はあなたのボスなんですよー……
「あ、こ、こんにちは」
話かけられ挙動不審になり、目を合わせようとしない(合わせられない)エスターテ。
――エスター?ここにいる子はあなたの部下ですよー?
あまりの不思議な光景に苦笑いしてしまうルピィ。
「では、僕はB部屋にいますので」
「そうですか。また会いましょうね」
ルピィがエスターテを見るとエスターテはまたカーテンの中に避難している。
ハヤトはC部屋を出ていった。
と同時にエスターテがカーテンから出てきた。
「あの、エスターテ?」
「ん〜……?」
「さっきのハヤトって人、見たことないですか?……懐かしいなーとか……思ったりしませんでした?」
ルピィのエスターテからしてみれば不思議な質問にエスターテは首を傾げる。
「全然そんな事はなかったよ。というか、恐くてあんまり顔見れなかったけど」
「そうですか……」
何やら考え込んでしまったルピィに更に首を傾げるエスターテ。
ウィィン……
再び扉が開く音がした。