過去編 44、キエルキオク
何故その名を!?
ロッタは目を見開く。
……バレてはいけない
「……人……違いだ……」
途切れ途切れながらも言葉を紡ぐ。
「覚えてないかい?君の祖父だよ?」
「……!」
思い出した。
確か最後会ったのは小学生低学年の頃。
「君は血に目覚めるのが早すぎた」
ロッタの祖父がスッとロッタの頭に手を置く。
「なに……を……いって……」
「口には出してなかったが両親も心配してる。マフィアの力とロッタとしての記憶を消させて貰うよ。もちろん君の妹の事件についても記憶を変えさせてもらう。」
「!!?」
……そんな事出来るのか!?
頭を置く手にぐっと力が入る。
その瞬間、頭の中に異変が起きる。
……記憶が消えていく!
ゼネとの出会い
αのメンバーの顔
アジトの場所
セラとの出会い
街の皆
ハヤト
ルーシェ
全て消えていく。
止めてくれ……止めて……
何もわからなくなる
ついに妹の事件の記憶までも消え始める。
……止めろ止めろ止めろ
俺が忘れたら誰が妹の事件の真実を覚えていてやれるんだ……
止めろ止めろ止めろ!!
「う゛ぁぁあぁあああぁぁぁぁぁあああああぁぁああ!!!」
がくん……
ロッタいや、エスターテは意識を手放した。
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〜病室〜
ピッピッピッピッピッ……
機械音がこだまする。
ここは病室?
なんで僕、病室にいるの?
痛ッ
肩と脇腹に怪我をしてるみたいで激痛が走る。
あれ?
なんで怪我してるのかな?
あぁもう痛すぎて泣きそうだよ。
「エスター!?」
あ、お母さん。
「何で僕、こんな所にいるのかな?怪我してるの?」
「αとカチーノの抗争に巻き込まれて重症を負ったのよ……やっと会え……」
お母さんは何かを言いかけて目を伏せた。
エスターテの母は数年失踪してた事を言わなかった。
「そうそう、何らかの強いショックでここ数年の記憶が飛んでるみたいなの。エスターはもう中学三年生なのよ?」
「そうなの!?僕いきなり受験生じゃんっ」
こうしてエスターテは家族の元に戻り、普通の男の子として暮らしていた。
エスターテの母にはエスターテがロッタだとは伝えられていなかった。
もちろん父にも。
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