過去編 43、終焉
「気をつけて……」
ルーシェがとても心配そうにロッタを見送る。
ハヤトとルーシェはまだ幼い為、αのアジトで留守番をする事になった。
今にも泣き出しそうなルーシェの頭にポンッと手をのせ、ロッタ達は街へ向かっていった……
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2007年8月1日
カチーノファミリーとの抗争は3日目でやっと終わりが近付いてきた。
接戦でどちらとも譲らない。
お互い殆どのメンバーが傷つき、死者まで出ている。
だが、その戦いももう、終わる。
向き合うボス同士。
一方はまだ若すぎるボス。一方は権利と力、金を持つ威厳溢れる初老のボス。
周りは敵味方どちらも倒れていて、もう立っているのはボスだけの状態だ。
……どうしたものか。
相手の手にはショットガン。ロッタの手にはナイフ一本。
戦いの最中に銃弾は切れ、ロッタにはショットガンに対抗出来るような物はなにも持っていないのだ。
……仕方ない。
ロッタはナイフ一本を片手にあろう事かショットガンをもつ敵に突っ込んで行った。
お互い鼻が付きそうなぐらいに接近する。
カチーノファミリーのボスは無謀としか思えない攻撃に戸惑うも、好都合な事に自ら近付いてきた相手へ至近距離でショットガンをぶっぱなす。
「……っ」
ロッタの左の脇腹辺りがショットガンの凄まじい威力により抉れ、消える。
あまりの痛みに顔を歪めるも、ナイフを振りかざす。
「なっ……!?捨て身の攻撃かっ!」
再びカチーノのボスがショットガンを構え、肩に撃つのと、αのボスがカチーノのボスの心臓めがけて深く深くナイフを突き刺すのはほぼ同時であった。
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「う……」
至近距離で撃たれ、肩と脇腹を持っていかれたロッタ。他人よりも治癒力が高いと言っても流石に危険な状態にあった。
……勝った、けど流石にヤバいな……
足下には既に力尽きたカチーノファミリーのボス。
近くにいたαの生き残りがまだ戦っている皆にαの勝利を伝えている。
「カチーノのボスはロッタによってもう死んだ!αの勝ちだ!!」
「やった!あのNo.1を倒したぞ!」
「うしゃぁぁ!これで終わった!!」
あちこちから喜びの声があがる。
だが、最初にαの勝利を伝えた男が異変に気付く
「……ロッタさんは?」
さっきまでロッタがいた場所にはロッタは居なくて、カチーノのボスの死体があるだけだった。
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〜とある路地裏〜
ロッタは路地裏何とか路地裏まで移動し、激痛に耐えていた。
この傷は直ぐには癒えないだろう。最悪死ぬかもしれない。
仲間には心配をかけられない、そう言った想いがロッタを路地裏まで行かせた。
「……」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……
頭がおかしくなりそうな痛み。
気がつくと目の前に誰かが立っている。
……カチーノの生き残りか?
目が霞んでよく見えないが、ゆっくりと顔を上げる。
そこには高級そうなスーツに身を包んだ老人が立っていた。
何処かゼネのような雰囲気を漂わせている。
……どこかで見た事があるような?
大怪我をしているロッタに戸惑いを隠せてないようだが老人は口を開いた。
「エスターテ?」