過去編 38、屋根の下
~翌日~
「うあぁぁ!!なんなんだよ!コレ・・・無理無理無理・・・・」
朝から騒ぎ出したのはハヤトだった。
そのまだ小さい手にあるのは香ばしすぎるにおいを漂わせている真っ黒にこげたホットケーキ・・・
朝から頑張って自分の朝ごはんを作ろうとしてくれた気持ちはとてもありがたいがどうやらハヤトは
料理が苦手なようだ。
「あ、ロッタおはよー!昨日は助けてもらったしお礼に朝ごはん作ってるんだ!!」
「焦げ臭い・・・です」
奥の部屋から鼻をつまみながら出てきたのはハヤトの妹、ルーシェだった
「お兄ちゃん、私がしますから」
そういってハヤトの持っていたフライパンから丸こげのホットケーキを取り出し
手早くホットケーキを作り直し、丁寧にテーブルに並べた。
こういう事は妹のほうが得意なようだ。ふわふわで相当おいしい
地味にホットケーキのおいしさに感動していたロッタにルーシェが声を
かけた
「私、ルーシェっていいます。あなたは?」
「ロッタ。お前が寝ていた部屋はお前の兄貴と自由に使っていいから」
「だ!ダメですよ!!私たちお金持ってないし・・・」
「子供からお金はとらねェよ」
「それこそ申し訳ないです!!・・・なら、私がロッタの身の回りの
家事全般します!家賃代わりとして働きますよ!」
そこまでしなくても・・・という気持ちもあったがルーシェの真剣さに
何もいえなくなる。
そのほうがルーシェのこの部屋を貸してもらうという
申し訳なさも軽くなると判断した。
実際家事がダメなわけではないが、仕事があったりすると身の回りのことも
おろそかになってくるので、家事をしてくれるというのはありがたい話だ。
「わかった。頼む」
「じゃぁー俺もする~」
「お兄ちゃんは邪魔になるからいいよ」
ルーシェは純粋にそう思ったから口にしただけだ。
それがわかっているからこそハヤトは余計グサっとくる
そうして三人は同じ屋根の下で暮らすことになった。
それが偶然であれ必然であれこの先に待っているものなど誰にもわからない。
わかるはずもなかったのだ
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~三日後~
ハヤトはロッタと一緒に雇ってもらっている店などの見回りに
行くようになった
(といってもハヤトが勝手についてくるだけなのだが)
いつも通り店の見回りを進めていき五件目の見回りを終えたところで
不意に声をかけられた
「やぁ、久しぶりですね~」
振り返るとそこにはこの前の老人、ゼネが立っていた
前とは違い紺色のスーツを着ている
親しげに話しかけるゼネをみてハヤトは「誰?誰?」と
ゼネを凝視している
「誰?アンタ」
「えぇ!?忘れられてしまったかな?」
するとハヤトがロッタの服のすそをクイクイっとひっぱった
「ねぇねぇ、知り合い?」
「知らねェよ、ハヤトの祖父とかじゃねーのか」
「違うよ~」
「ロッタ君、それ本気でいっているのかい?」
さすがにあせっているゼネに対してロッタは無表情で即答した
「冗談」
「冗談に聴こえないですよ?」
「何の用だぜネ」
ロッタはチラリとゼネの方を見る
「それは・・・・」