チャネルカ・ブース編 21、ルーシェ
「いやーそっちの方が貴方らしいですよ。でも、『ユラ』って名前名乗っているんですね」
「そうだよぉ?ロッタが戻ってきたらまた『セラ』って名乗るもん
それよりハヤトのほうがこんな所で何しているのサ」
「・・・気づいてたのか俺だってこと。バイトだよ。皿洗い」
「帽子深くかぶっても無駄だよー?」
ユラが発した『ロッタが戻ってきたら』という言葉は従業員の心に
冷たいものを運んだ。
従業員の名をハヤトと言う。
イタリア人で茶髪茶色い目。
14歳で本来ならば中学2年生ぐらいである。
昔家族に妹ともに捨てられた少年。
そんな時ロッタに助けてもらった少年。
ロッタには、ロッタが消えるまでずっと妹と俺を育てて来てもらった。
そんな・・・
そんな恩人は、今はもういない。
〜時は少しさかのぼり昨夜〜
ハヤトの妹、ルーシェは兄と似た茶髪茶色い目。ツインテールで髪は
胸辺りまで伸びている。
ルーシェの世界は完全に閉ざしてしまった。
命の恩人、親代わりのロッタを失ってしまったせいで
かつて澄んでいた茶色い瞳も濁り、感情もろくに表せず
とうとうつい最近入学ばっかの中学校にも行かなくなった。
お兄ちゃんが、ロッタの誕生日だからといって船旅を用意してくれた。
武器を運びたいからこのチャネルカ・ブースを選んだそうだ
私は・・・
私は・・・
・・・・!!?
向こうから歩いてくる人影を見つけた。
その人は・・・ロ・・・ッタ
「ロ・・ロッタ!!」
久しぶりに大声をだした。
イキナリだから少しくらくらするなぁ・・・
「?」
あちらもこっちに気がついたようだ。
目が合う。
だがロッタはこちらと違っていつもの鉄仮面なので
表情一つ変わらない。
「ロッタ!どこにいたんですか・・・ずっと・・・ずっと待ってたのに」
ルーシェの目には涙がたまっていく。
せっかく会えたののにこれじゃあ顔がよく見えないよ。
それまでずっと無表情だったロッタの眉がぎゅっと寄り、どこか悲しそうな表情
になる
「私・・心配で・・TVとかで死んじゃったって言うから・・・私、私・・」
ポンッとルーシェの頭にロッタの手が置かれる。
―そういえば、私が泣いてた時はいつもこうして手を置いてくれたっけ
「いずれ・・・戻る」
それだけ言うと廊下の向こうに歩いていってしまった。
止めようとおもった・・・けど
出来なかった。
見たのだ。私は
あんな顔、ロッタのあんな悲しい顔初めて見たから。
一人で苦痛にたえてる、そう思った。
だからとめられなかったんだ。
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時間を戻しまして
〜フロント〜
「あーあ。フロントのお姉さんの笑顔、だいぶひきつってたよ?」
「そりゃあー、高校生が枕投げで枕破ったってなればなー顔もひきつるだろ」
「のど渇きましたねージュースでも買いましょうか」
フロントの真ん中にある大きな丸いオレンジ色のイスに座りながら
三人は話していた。
「俺はコーラがいいな」
「俺はサイダー派だ。」
「エスター、さわやか笑顔で言っても無駄です。晃、そんなこと知るか」
「うぎゃあ!?ルピィが一瞬敬語じゃなくなったぞ!?」
騒ぐのでフロントのお姉さんがガン見しております。
邪悪な笑みで。
「ジュース・・・買おうか」