チャネルカ・ブース編 2、ルピィ
『チャネルカ・ブース4号は、船乗り場3にまもなく着きます。』
ナポリにある船乗り場は、とても広く清掃も隅々までされていて
とても綺麗だ……。
アナウンスを聞きながら、エスターテは船乗り場をウロウロしていた。
「船乗り場3ってどこ!?」
パニック状態のエスターテ。
わたわたと船乗り場の案内図を探すが見当たらない。
チャリーーン。
「?」
エスターテの足元に、お金が転がっていた。
誰のだろう?
あたりを見回すと自販機辺りに
財布をひっくり返してあせっている女の人を見かけた。
「あの……。お金、落ちましたよ?。」
女の人にお金を渡そうと近づく。
「あ、ありがとうございます」
女の人が、こちらを向いた。
その女の人は、エスターテと同い年ぐらいで左目に包帯を巻いてあり
輪郭はシャープなラインで眼と髪の色が茶色で美しい。
鮮やかな水色の結構動きやすそうなドレスを着ている。
「すいません、船乗り場3って、どこにあります?」
「えっ、あなた……チャネルカ・ブース4号にのるの?」
なぜかきょとんとしている。
俺、おかしな事言ったかな?
「あ、はい。豪華客船なんですか?おじいちゃんの家に
行くために、乗ろうと思って……」
「あぁ、そうななんですか!私も乗るんです!一緒に行きましょう」
さっきの驚いたような顔から一変、満面の笑みを向けられる。
二人は、船乗り場まで一緒に行く事にした。
――助かった!間に合わなかったら次は約一週間後しか船がなかったよ。
「私は、ルピィっていうの」
「あ、俺はエスターテ・ロン。エスターって呼んで」
船乗り場3あんなに探しても見つからなかったのに、案外近くてすぐに着いた。
なんだかむなしくなるエスターテ。
「えっ!?」
自分が乗る船を見て驚愕する。
パンフレットでは見ていたけれど、実物となると
スケールが違う。
――おじいちゃん、こんな大きい船のチケットくれたの!?
「す……すごく大きい客船だね」
「……エスター、貴方知らないのですか?この船はマフィアやチンピラ
達や武器などを運ぶ船なんですよ?まぁ……表向きは客船ですが……」
ルピィが説明し終わると、エスターテは固まっていた。
額には汗までにじみ出ている。
「ぇ……マフィアやチンピラ?」
固まっているエスターテにルピィは、
「まぁ、普通の一般人が乗ったら、死ぬかもしれませんね!」
追い討ちをかけた。
敬語で結構グッサリくる事をいうルピィ。
「嫌だあああぁあぁぁぁぁ!怖いって!俺、一般人!死ぬから!
おじいちゃんの馬鹿ー!間違えたなぁああ!」
叫ぶエスターテの襟首を掴み、ルピィが引きずっていく。
ずーりずーり……
「ほら、エスター。これに乗らないとおじい様に会えませんよ?」
ずーりずーり……
「嫌だぁ!まだ死にたくない!」
ずーりずーり……
「ほら、おじい様だって、いつポックリ逝くか分かりませんよ?
会えるときに会っておかないと!」
ずーりずーり……
「縁起の悪い事いわないでよ!ってああああああ!」
結局船の中まで引きずりこまれたエスターテ。
『えー、チャネルカ・ブース4号はただ今出航します。』
ボォォォォォォ!
出航の合図が響き渡った。
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「あ〜……陸地が遠さがっていく〜!」
エスターテは、自分の個室(18号室)に荷物を置いてルピィの部屋に
行った。個室は、高そうなベッド、テレビ、風呂、トイレキッチンとあって、
部屋の広さもエスターテ一人では広すぎるぐらいだった。
「エスター、自分の部屋で船旅を楽しんだらどうです?」
「嫌だ!一人で居たらマフィアに殺される!!」
「私もマフィアですよ?」
「優しいから大丈夫!」
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「エスター、お腹が空いてきたから、レストランへ行きませんか?」
「う……うん。」
確かにお腹が空いてきた。
恐怖で空腹どころじゃなかったしね。
二人は船で初めての食事を取ることにした。
お爺ちゃんの家へはミラノにある。ここのナポリから船で
ジェノバと言う所へ行き、そこから電車でミラノへ行くのだ。
客船なので2日程度の船旅になるので
期待半分不安半分のエスターテだった。