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狐耳と行く異世界ツアーズ  作者: モミアゲ雪達磨
第四章 日本帰郷 編
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第051話 幻想世界:幕間①-クレーム対応と弄り弄られ-

「フザッケンナー!!」

「なんつぅデストラップ」

「……してやられたのだわ」

「ありゃ完全に殺しの手だろ……」


 場面は変わり薄野(すすきの)山荘内。あのテレポートトラップで地下32階の水の中に叩き込まれ仲良く溺死した俺達は、強制ログアウト後に現実世界で目を覚まし悔しさに歯噛みする。


「うふふ。ベリーハードの洗礼を受けちゃったわね」


 そんな俺達に対しニンマリとした表情で話しかけてくる姫さん。幾ら何でもありゃクソバランスじゃないっすかね……。


「皆はまだ良いわよ。すぐ溺死しちゃったしさ――私なんかHPの差でぎりぎりまで意識が有ってさ……なんか、主っぽい魚だか何だかが近づいてきて齧られた感覚までばっちり……うぇ、トラウマになりそう」

「うっわァ……さっさと死んでおいて良かっタ」


 うわぁ、そりゃきついどころじゃないわ。俺ならなりそうじゃなくて確実にトラウマと化して二度と海の中で泳げなくなると思う。それにしても酷過ぎるなこの殺しっぷりは。


「あらぁ……そ、それはご愁傷様と言うか運が悪すぎたわねぇ。トラップ自体は仕掛けてたけれど、あれランダム発動だからたまたまテレポートが発動しちゃって、更にたまたま深層のしかも水中部屋に飛ばされちゃったのね」

「なんたるパ○プンテ状態」

「これは要修正だと思います!」

「流石に極限(エクストリーム)でもねぇ難度でのあれは楽しむ以前の問題だろなぁ」

「修正シロー!」

「わ、分かりました。ベリーハード迄のテレポート範囲階層はもっと狭めておく事にするわ」


 それにしても今回は運の悪さが重なって即死コンボを喰らった訳だが、やはり難度に無理があったのかもしれない。


「むぅ、罠の感知にも引っかからなかったカラ、暫くはハードの方が良いかもネ」

「だよねぇ」

「この分じゃまた行ったとしても、最悪次の部屋に入った途端にまた罠でどうにかなりそうだよなぁ」

「仕方ねぇ。それじゃあ改めてハードからやり直しって事で良いか?」

「おーらい!」


 こうして全会一致でハードへからの再スタートに決定された。にしても悔しいわぁ、何だよあれ!罠がやばいってレベルじゃねぇよな。ついそんな苦情を姫さんに言ってはいたんだが―――


「だから迷宮(ラビリンス)の攻略は専門に探検家(エクスプローラー)が担当しているんだよな。迷宮(ラビリンス)の攻略時は魔物との戦闘よりも、罠や迷路で遭難しての死亡率の方が遥かに高ぇらしいぞ」


 と横合いから釣鬼先生からの解説がなされた。実際に体験をしてみると首肯せざるを得ないぜ……。


「何じゃい、もう死に戻ったんか」

「死亡ポイントは試練の洞窟の――地下32階……?随分と下層だね。極限(エクストリーム)級の罠にでも掛かったのかい?」


 話が落ち着いたところで部屋の扉を開け照密さんと弄人さんの二人が入ってきた。別室でモニターでもしてたのかな?


「それがさ~。この子達、ベリーハードのランダムトラップに入口で引っかかって、テレポートで水の階に飛ばされて溺死しちったのよぉ。だからテレポーターの転送範囲をもっと狭める事にしたわ~」

「それは……運が無かったね」

「うほぅ、それはまた……」

「だが極限(エクストリーム)級前提でならそのコンボはありかもしれないね。常時の罠にするとゲームにならないが、ボス戦の後に安心したところで宝箱の罠にテレポーターをしかけるのも面白いな」

「心が折れるからやめて!?」

「二度とやりたくなくなるんじゃねぇか、それ……」

「だからこその極限(エクストリーム)級だよ。世の中にはやり込み派のヘヴィユーザーを取り込んで成功しているゲームもあるからね」


 げんなりとする俺達に対しそんな事を言いながら、爽やかな、本当に爽やかな笑顔で語る弄人さん。グレムリンという小悪魔系の種族らしさを垣間見た気がするよ……。


「それじゃあ晩御飯の時間も近いし、先にお風呂入ってきちゃいなさいな~」

「「はーい」」

「もうそんな時間か」

「一旦頭の熱を冷ましてくるとするかぃ……うぉ!?何でまた吸血鬼(こっち)の身体に戻ってんだ!」

「そういえばそうダネ。もう見慣れちゃってて気付かなかったヨ」


 この様に、何時の間にか釣鬼の姿が吸血鬼ヴァージョンに戻っていたというハプニングもあったりしたが、ゲーム内の姿がまんまだったので誰にも気づかれなかったという悲しさ。本人も風呂の話がなきゃ気付いてなかったかもしれないな。


「あぁ、サキさんが言うにはだな。暫くは気を抜くと変化姿(オーガ)になったり吸血鬼(もと)に戻ったりと変態を繰り返すって話じゃったから気を付けぇ」

「マジかよ。こりゃ本格的に安定するまでは外出れねぇな……」

「ところでいつから吸血鬼(こっち)に戻ってたんだ?」

「ぬし等が潜航(ダイブ)して五分もせん内に変わっとったな」

「すぐじゃねぇか……」


 どうやら釣鬼の変化まだまだ安定はしないらしいな。施術したてだし仕方がないけどなー。


 ・

 ・

 ・

 ・


 夕飯の時間になりリビングに行ったところ、シズカとサキさんの姿が見えなかった。食器も二人の分が無いみたいだな?


「あれ?母さんとシズ姉は?」

「一週間程出かけるそうよぉ。ちょっと用事があるからって言ってたわぁ」

「えー……ここの管理はどうするのよ」

「そこはあたし達が責任を持ってやっておくわ~。でも出来れば、料理は扶祢ちゃんにお願いできると嬉しいかなー。今夜と明日の朝の作り置きだけは姐さんが作って行ったから大丈夫だけれど」

「そっか。それじゃあ潜航(ダイブ)で時間かかっちゃうから、仕込みだけはお願いしますね」

「了解~」


 サキさんとシズカは共に出かけているらしいな。一週間とはまた長いが、どうせ釣鬼の体が安定するまでには二十日程かかるらしいし、一応非常用の連絡手段もあるとの事なので問題は無い、か。


「ピコも居ないネ。どこ行ったんダロ?」

「そういえば一緒に連れて行かれとったな」

「エエッ?……せめて死なずに帰ってきてネ」

「もう初登場時のピコ愛はどこ行ったって感じだな」

「敢えて見守らない愛もあるのサ」


 こうして姉貴分にまで見捨てられてしまったピコ。きっと出先で扱かれまくってるんだろうなぁ。何もしてやれないが、せめてご冥福だけでも祈っておくとしよう。






「うーし、腹も膨れたし寝る前にもう一潜り行っとくかぃ」

「オー!」

「君達、食べてすぐ潜航(ダイブ)すると身体は寝てるのと同じ状態になるから太るよ」

「う……」


 夕飯も食べ終わり、食後のひと時をのんびりと過ごした後に釣鬼が言い、残る面子もそれに応えて立ちあがる。そこに入る弄人さんからの忠告に約一名程が反応し、


「ピノちゃん。ちょっと散歩してこよう?」

「エー?すぐ潜るで良いジャン」

「……じゃあ釣鬼は」

「散歩する位なら組手……あぁ、激しい運動はダメっつってたな」

「うぐぐ」


 理由は分かる、分かるからこそ口には出せないが――体重気にしてるんですよね。

 さて、今現在何故か俺だけ誘われないこの状況で俺に取れる選択肢は幾つかあると思う。


①盛大にからかう。

②見て見ぬフリをして黙りこくる。

③気付かないフリをしてこちらから散歩へ誘う。


 ①は論外。最悪リアルHPが0になる危険有り。

 ②は事なかれ主義の典型だが不自然過ぎて勘付かれる可能性大。最悪①ルートの結果へ復帰の恐れも。

 ③、これが無難な気もするが、誘い方によってはあからさまに怪しまれるかもしれないな。あとこれってどこの鈍感系対応だよって思わなくもない。

 しかし他に良い方法も思いつかないので仕方が無い。③のプランでいくしかないか。


 す~はぁ~す~はぁ~。深呼吸により覚悟完了、いざ任務へ入るッ!


 だが、目を開けた俺の視界に入って来た光景は……おや?何故皆さん揃ってこちらを優しい目で見ていらっしゃるのでしょうか。扶祢だけはちょっと恥ずかしそうなジト目だったが。


「どうやら青少年が気を使ってるみたいよぉ?」

「ふほほ、微笑ましいの」

「あんだけパーティ内で醜態晒し合ってんのにまだそんな純情が残ってたんか……」

「夢見る青少年……いや性少年ダネ」


 え?何言ってんのこいつら?俺はただ被害を受けたくなくて丸く収まる方法をだな。


「はぁ……もう良いよ頼太、ちょっとこっちまで恥ずかしくなるから普通に軽口叩いといてくれれば」


 なんか当の扶祢にまでこんな扱いを受けていた。どういう事だ……あっ。


「いやちょっと待て、お前等絶対誤解してるだろ!俺はただ――」

「はいはいみなまで言わない。自分でも最近忘れかけてたけど私って美人だしねー。最初はフォローしようとしてくれたんだろうけど、二人きりの夜道の散歩を意識しちゃって自分から誘うのは純情な青少年にはハードル高かっただけだよねぇ?」


 ―――あ?


「ハッ、何自意識過剰発言してんだよ。意識は意識でも普段あんだけ残念な言動などこかのお狐様が増量確定した体重を気にしてるのがツボに入っただけだっつーの」


 ニヤニヤと如何にもなドヤ顔を見せつけてくるウザ狐にイラッときてしまい、つい一気に本音を吐き出してしまったが……発言を振り返ると完全に喧嘩売っちゃった形だなこりゃ。やっちまったか、と一瞬後悔しかけたものだが、当の扶祢の反応と言えば落ち着いたもので。


「ふふ~ん。アンタ、この状況でその物言いはただの照れ隠しにしか聞こえないの、分かってる?」


 ニヤニヤ感を更に深めた様子でそう言ってきた。なん…だと……?

 その言葉に我に返り、周りを見回す俺。そこには―――


「「「ニヤニヤニヤニヤ」」」


 ………………………


「違うのぉー!ホント違うんだってー!?」


 らめぇぇええええ!そんな生暖かい目で僕を見守らないでぇぇぇ!!

 その後暫く弄り倒され、精も根も尽き果てました……当初は扶祢の自爆のフォローをするだけの予定だった筈なのに、何故俺がこんな目に……。

 という事で頼太弄られ回でした。

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