第151話 異世界ホール内部調査②
本日より新章開始でございます。
新日程としては三日に一話のペースで書いていければ良いなと考えております。予定は未定なんで前後する可能性もありますが。
「却下だ却下!」
「何でだっ!?クナイは良くて余が駄目というのは差別だろ!」
「クナイさんは釣鬼の妹だし、最初からそういう約束をしてたから良いんだよっ。お前はただのオプションだろーが!」
「オプション扱い良くない!というか仮にも姫君である余に向かってお前とはなんだー!」
皆さんこんにちは、頼太です。
のっけからお見苦しい騒ぎをお見せしてしまい申し訳無い。
双果からの依頼に始まった釣鬼の故郷での闘技大祭が終幕し、それと共に俺達の契約期間も満了してより数日後のこと。傭兵の郷を発ち、その帰り道にクナイさんを三つの世界への入り口に案内すべく異世界ホールへと寄った俺達は、ある問題に直面していた。
釣鬼のランクアップ試験の結果が微妙な評価に終わってしまい、その追試という事で俺達のパーティには一つの課題が課せられた。
その課題とは……サナダン公国の北部に位置するインガシオ帝国の首都まで一人の依頼人を送り届ける、言わば護衛のような内容になる。そしてその依頼人というのが、今もこうして喧々諤々と俺との言い争いをし続けている、出雲姫だ。
この出雲姫、略式ではあるが相応に上等な衣装を着こなし、またそれに見劣りしない立場を併せ持つ一国のお姫様であるらしい。そして何よりも、
「一体余の何が気に食わないというのだ?何ならちょっとなら余の耳と尻尾を触らせてやっても良いのだぞ?」
「まだ子供の癖にどこからそういう発想が出てくるんだよお前は!?」
会話の内容はともかくとしてだ。本人の発言にもある通り、この子には獣の特色を宿した立派な狐耳と尻尾が生えていたのだ。お蔭でマイパーティのモフ率は一気に上がり、モフラーとしては眼福の極みにござる……ではなくてだな。
「え、この前そう言われたのだぞ?『頼太は耳と尻尾をモフらせておけば満足するからね~』って」
「……ほぉ?」
そいつは良い事を聞いた。道理でこの姫様、昨日今日と俺に対しやたら過剰なスキンシップを図ってきていた訳だ。当初は元々そういう性格なのかと思っていたが、こう見えて出雲姫も道中を共にする相手として打ち解ける努力をしてくれていたという事なのだろう。釣鬼やピノにも積極的に話しかけていたお陰で皆、この子に対する印象は概ね良好だったものな。
あと口調どころか声色まで似せてくれたお陰で容疑者が容易に特定出来たぜ。その貴重な情報をありがたく受け取った俺はその陰でこそこそと洞窟内へと逃げ込もうとしていた元祖狐耳の肩を掴み、優しく地上へと引き戻す。
「そうか、俺はそんな風に見られていたのか……残念だ」
「じっ、事実じゃないのさー!」
「そういった行為そのものに満足するか否かで言えば間違いなく是ではあるがね。それをまだ子供と言える年齢の相手にやらせるよう誘導するのは、如何なものかと思う訳ですよ僕ぁ」
その後、要らん事を吹き込んでくれた駄狐には罰としてモフりフルコースを華麗に決めておいた。それを見た仲間達がいつもの事だと呆れる中、出雲姫はまたしても大爆笑をしてくれていた。お気に召して何よりです。ナタ君やハクさんは俺のモフりテクを見る度に割とおぞましげな表情をしていたものだが、この辺りも本人曰く先祖返りな分、獣人族としての感覚に薄いという事なのだろうかね?
「頼太どんったら見事にセクハラマスターでありんすね」
「これで何だかんだで知り合いの獣人族達からは毛嫌いされるって訳でもねぇんだから、不思議なモンだよなぁ」
「あちきは残念ながら獣人ではなくって鬼のハーフでやんすから、その辺りのスキンシップを取ってくれないのが寂しいですん」
「クナイ、セクハラされたいノ……?」
そんな俺達の様子を眺めながら、鬼の兄妹プラスワンはこれまた風評被害になりそうな話を広めてくれていた。失礼な事を言いますね君達!あとクナイさん、スキンシップを求めているのであれば俺としては一向に構いませんぞ?
「それはそれとしてだ。真面目な話、護衛対象であるにも関わらず、余のみこの先の同行を拒否する理由は何なのだ?察するに、余の立場に起因するものと見たが」
流石は一国の特殊部隊を率いる長と言うべきか。この齢で見事に自らの役割とそれに付随する影響力まで熟知しているんだな。この様に場面ごとの切り替えも早いし、何より長としての言葉を口にする時の目の鋭さが尋常ではない。若干幼さの残る見た目や普段の言動とは裏腹に、相応の修羅場を潜ってきているであろう事が窺えた。
「まぁ、そうだな。正直な所、姫さんの立場を考えればちっとばかり面倒な事の火種になりかねねぇ要素が多いからな、この先は。ほら、ここの場所は表向き公国領でもある訳だしよ」
出雲姫の質問を受け、俺達を代表する形で釣鬼がそう答える。
俺と出雲姫の言い争いが目立っていたから個人的な話かと思われていたかもしれないが、一応異世界ホールについての情報は無闇に流布しないというのが俺達の中での共通認識となっていた。これは主に釣鬼とピノの実体験に基づく感想を参考に、パーティの方針として決めた事だ。今までの様に個人的に利用するのは良いとしても、やはり一定以上の規模の組織が関わってくると様々な政治的な思惑などが絡んでしまい厄介な事になるのが目に見えているからな。
三界側のジャミラ達は一度血に濡れた歴史を歩み、その手の痛い経験は嫌気が差す程にしているからそういった心配はそうそうは無いだろうが、概ね平和を享受していたこちらの住民達は違う。特にリチャードさん曰く近頃不穏な噂の絶えない皇国の姫君、それも裏の仕事を主とする特殊部隊を擁する者ともなれば俺達が警戒するのは当然の事と言えた。
「何だそんな事か、それは無用な心配というものだ。別に余はそのような政治的介入をするつもりは無いぞ」
しかし当の出雲姫はと言えばそれを一笑に付し、自身の現状を俺達へと打ち明ける。
「余自身、そういった類の話には飽き飽きしておるからな。概ね予想しておるとは思うが、実は余とリチャードは互いの国の都合を別として、現在協力関係にあるのだ。だから一部の極秘情報を除けばほぼリチャードには伝わるよう手配しておるし、またその関係を維持する姿勢の現れとして余、自らが単身でお前達に護衛の依頼を出したのではないか」
「……お抱えのシノビ部隊も連れてきてないのか?」
「うむ。連絡要員として一人だけ後方に付けてはおるがな」
その言葉を聞いて思わず聞き返してしまった俺に、当然とばかりに言い切る出雲姫。それが本当だとすれば一国の姫君がたった一人で異国の地に出向いたという事になる。
この発言にはつい驚きを通り越して呆れ果ててしまった。それは不用心に過ぎるだろ……。
「――本当ダ。あの岩陰にそれっぽい反応があるネ」
「リチャードさんがこの子をお転婆と言ってたのがよく分かるわね。お姫様が一人で旅をするだなんて……」
「行動力がある方だと言って欲しいなっ!ではあいつも呼んでくるか」
そう言って出雲姫は俺達の返事も待たずにその岩の側へと走っていった。
どうやらピノの神秘力感知にも感知範囲ぎりぎりの場所に一人、隠れて付いて来ている人影が引っかかったようだ。それにしても―――
「豪気というか何と言うか。よく単身で国外に出るのを皇国の王様が許したよな」
「兄様達の決勝戦の裏であちきが対峙した時も、あの姫様の胆力には少しばかり気圧されっちまいやしたからねぇ。あちきが言うのも何ですが、あまり見た目の愛らしさに騙されない方が良いと思いやす」
「お前ぇが気圧された、ってまじかよ……人は見た目によらねぇモンだな」
長年戦場を渡り歩き、百戦錬磨とも言えるであろうクナイさんをして若干の警戒心を抱かせる程の相手。そんな話を聞いてしまうと、あの出雲姫からは底知れぬ怖さというものを感じてしまう気がするな。
「――それでは、お頭単身であの不可思議な洞窟に入るのですか。それはあまりに危険では?」
「とは言ってもなぁ。奴等、あのヘイホー支部の爆弾娘二人とも懇意にしておるらしくてな。下手な事をすればあの二人まで敵に回す事になりかねんからなぁ」
「『突撃臼砲重戦車』に『絶対領域』の二人ですか……そりゃあ面倒な事この上ねぇですな」
頼太達がそんな感想を抱きながら出雲姫についてあれこれと噂していたその頃。
出雲は岩陰へと歩み寄り、一人の壮年の男と内密に話し合っていた。
「だろ?それにここは連中の言う通り、比較的平和な公国の管轄だからなぁ。命まで落とす様な事にはならんだろ」
「では、森の側に控えさせている手勢は如何致します?」
男の口にした手勢という発言。それの意味するところはつまり―――
釣鬼が危惧し指摘した通り、出雲は麾下総勢三十余名をピノの感知網の更に外側に待機させていた。その実働部隊の長である目の前の壮年の男のみを敢えて一人ピノの感知網ぎりぎりにかかる様に配置をしておき、虚実を織り交ぜた言動を以てさも自身の御付きが一人しか居ないように見せかけていたのだ。
「半数は帝国に先行して潜入し、内情の調査をさせておけ。残りは……そうだな、リチャードが交渉をしておるあの耳長族の村があったろ。あそこの村興しの手伝いでもさせて恩を売っておくとするか」
「そういう事ですか。そこで半数を村へ送り込み、ギルドとの協力関係は維持しているというアピールの狙いもあると?」
「まっ、この程度の騙し合いなぞリチャードの奴ならお見通しだろうがな。向こうも少なからずやっておる事だ。そう強く言ってはこないだろ」
国が違えど、あるいは世界が変わろうとも。人の業といったものはそう容易に変わるものではない。一つの共同体を構成しそれの都合を通す為に、時には別の組織と対立し、時には同じ組織内ですら争い主導権を我が物にしようとする。
彼等のような諜報を主とする性質の組織であればそれは尚の事であり、それ故に男も特に出雲の発言に対して抵抗感を感じた様子も無く賛同する。
「では、そちらの段取りは儂が担当するとしましょう」
「あー、それがな?話の流れでどうも、お前は余等と行動を共にする事になってしまってな」
「……お頭、そういうところは相変わらず抜けてますなぁ。攻め手として策を巡らす時は滅法強いってのに、受け手に回っちまうとどうにも穴がある」
「ほっとけ!」
壮年の男に呆れ顔で言われ、出雲は思わず声を荒げてしまう。
ワキツ皇国第三皇女にして皇族直属シノビ部隊の総大将でもある出雲姫、御年十五歳。
先祖返りの少女がその身に宿す素質は高く、未だ生まれてより十余年という短い人生の中ではあるが、修羅場もそれなりに潜り抜けてきた。しかし、まだまだ圧倒的に経験といったものが不足しているのであった。
「まぁ、なんだ。あのエルフの村には余計な手出しをして争いの種にするよりもだな。安定して各種特産品を取引出来る環境を作った方が、長く見れば得だとは思わんか?」
「……ワガシでしたか。ありゃ極上の甘味でしたなぁ」
そんな事を言いながらデンスエルフの隠れ里に立ち寄った時の衝撃を思い返し、二人してその至福の余韻に浸っていた。その顔は裏の稼業にどっぷりと浸かった者とは思えない程に緩み、暫しの間蕩けきった顔を晒し合う。
「っと、いかん。そろそろ戻らねば奴等に怪しまれてしまうな」
「そうですな。では護法文書だけ部下達に飛ばしておくとしましょう」
そして一分後、男があらかじめ用意をしていた使い魔の型に術式を込めて護法文書を展開し、二人は冒険者達の居る異世界ホールへと歩いていった。
Scene:side 頼太
「随分かかったな」
「うむ。こいつが中々引き下がらなくてなぁ。余計な手間を取られてしまったぞ」
「お頭はいつも無鉄砲過ぎるのです!本当は今でも儂は反対なのですからな……」
あぁ、典型的な爺やポジの人か。そりゃ確かに、こんなお転婆姫のお目付け役としては小言の一つも言いたくなるってものだよなぁ。今も目の前で苦言を呈しながらも全く聞く耳を持たない様子の出雲姫を見て、何だか少しばかり同情してしまったな。
「それで、お前達の要求通りこのトビもこうして連れてきたし、余は皇国の皇女としてではなく出雲個人としてお前達に同行する。これで異存は無いよな?」
そして今度こそドヤ顔を決め、受け入れて当然とばかりに宣言をする。
「う~ん……リーダー、どうする?」
「仕方ねぇんじゃねぇか?こっちの出した条件は一応満たされてっからなぁ」
そうなんだけどな……どうも虫の知らせというか、何かが妙だと感じてしまうんだよな。
それは神秘力感知、つまり霊感の高めである扶祢とピノも感じたらしく、同じく釈然としない面持ちをしながらもやはり確証を得るには至らなかったようだ。特に何も言うでもなく、こうして出雲姫の同行が決定した。
「じゃあ一応同行OKだが、この事は他言をするなよ?」
「勿論だっ!どうせ暇潰しを兼ねた、面白いもの見たさなだけだからな!」
俺の念押しに、余りにも自分に正直な発言で返す出雲姫。さいですか……。
「それと、洞窟内部じゃ勝手に動き回ったりドアを開けたり中に入ったりしない事。良いな?」
「余はお子様かよ……」
俺のあまりと言えばあまりな要求に、出雲姫は若干むくれてしまう。仕方が無いんだよ、あの内部は永遠に迷子になる程度ならまだマシな方で、酷いとゲートをくぐった時点で身体が爆散しかねない危険で一杯だからな!
それと、君は十分にまだお子様な齢だと思うぞ?
「他に何か注意点ってあったッケ?」
「う~ん……あ、出雲ちゃんって最初は帝国の首都に行くって言ってたけどさ。そっちの方は時間かかっちゃっても良いのかな?ほら、一応これも依頼だから期限が守れなかったら釣鬼の昇級試験落ちちゃうかもだし」
「それについては問題無いぞ。この依頼を受けた時点で成功失敗に関わらず、依頼の終わりと共に釣鬼はBランクに上がるそうだ。あくまで余の護衛に雇いたかったからリチャードに言って追試という形にしただけだからな。あいつも言ってたろ、ギルドとしてはお前達のやり方は十分に合格だと」
そうだったのか、それは朗報だな。
これで釣鬼も晴れてBランクの仲間入りをする訳だ。そこからAになるまでがどの位かかるのかは分からないが、あと1ランクで時空ポケットという浪漫アイテムに手が届くぜっ!ふへへ。
「――ん、待てよ?という事は本来傭兵の郷の依頼だけで終わっていたところを、お前の都合の為だけに余計な依頼を増やされたという事か?」
「そういう事になるなっ!ご苦労さんだ、わははっ!」
ほぉ……そういう事を言うか、言っちゃうのか。
「出雲ちゃん?それはちょっとおイタが過ぎると思うんだけどなー?」
「うにっ!?扶祢、いきなり何をするのだ!余の耳をそんな引っ張るなぁぁ……」
「んじゃ俺はこっち側を担当するかー」
「にぃぃっ!やめっ、もふもふするなー!」
もふもふもふもふ―――
勝手知ったる何とやら、言葉の意味するところを考えれば別に間取りにだけ使わねばならないと決まった話でもあるまい。俺は普段慣れ親しんだモフり経験により、そして扶祢は自身のやられて嫌な場所の自覚により、的確なツボを熟知している。
こうして暫くの間、我儘お姫様への私刑執行は続いたのであった。
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「……うぅ、これ程の辱めを受けたのは十二の時に親父様が親子のスキンシップと称して湯浴みに乱入してきた時以来だ」
「そりゃあ確かに鬱陶しいですなぁ。あちきも傭兵時代にそんなおっさんがいやしたんでよく分かりんす」
いい加減モフ成分に満足――もとい出雲姫への罰を与えて開放した後、洞窟の入り口には力無く崩れ落ちた皇国産狐耳の姿があった。
途中お目付け役であるトビさんが止めに入ってくれるかな、なんて期待もしていたのだが、何故か俺達のいきなりの暴挙にも特に反応せず早速釣鬼と何やら相談などをしていた。お陰でちょっとばかりやりすぎてしまった感は否めないぜ。
「出雲ちゃんのお父様はともかくとして、クナイさんのそれってもう覗きってレベルじゃないわよね?」
「傭兵組織なんてそんなものでやんすよ。個人のプライベート空間なんざあってないようなものでさぁ」
「そ、そうなんだ……」
そんなクナイさんの語る現実に釣鬼もうんうんと頷いており、若干慄いてしまう俺達だった。
「ま、まぁそれじゃあ行くとしようか」
ともあれ気を取り直し、俺達一同は、揃って異世界ホール内部へと入っていった。
「特に変わったところは見られないかな……あの上級者コースのバリケードもそのまんまだね」
「……ガタガタ」
あの魔境への門もそのままか。という事は――うん、三つの世界行きの中級者コースにも特に変化は無いな。
だが、俺達がそんな確認作業をしているその時、大惨事のきっかけとなる事件が起きてしまう。
「上級者コース?何だそれ面白そうだな」
「「やめろぉっ!?」」
あれだけ念を押しておいたのにこの姫様、あっさりそれを忘れてバリケードの間をすり抜けて入っていきやがった。俺は思わず手加減無用で手を伸ばし、ぎりぎり掴む事の出来た尻尾の一本を力一杯引っ張ってしまった。その結果……。
「……ぐぇっ!?」
―――ゴンッ、ベシャッ。
やはり今回もヒキガエルの断末魔の様な声が上がった後、硬い物が何かに当たるような音が響く。事が済んだその場には床に倒れ伏し、ぴくぴくと痙攣をする出雲姫の姿があった。
「お頭、さっき言われた事を忘れたんですかい?この洞窟内は危険が多いから勝手に動かないって言ってたじゃないですか」
「……うぐぐ。だ、だがそれにしてもだな。大の男二人で余の身が宙を舞う程のダブルスロウは無いと思うぞっ!」
「あぁ、お前ぇも届いてたのか」
涙目で頭と尻尾を抑えながらの出雲姫による苦情に横を見れば、どうやら釣鬼も同じ惨状を想像したらしく、割と本気で投げてしまったらしい。こいつに本気で投げられたらその衝撃だけで身体がズタズタになりそうなものだけど、どうやら俺の加えた別ベクトルの力が良い感じに衝撃緩和の方向に働いたみたいだな。大事に至らなくて何よりだ。
「ここに入ったらお前死んでたんだぞ?比喩とか危険度が高いとかそういうんじゃ無しに入った瞬間ボンッ、ってな」
「……そ、そうなのか?」
コクコク。俺の言葉に恐る恐る周りに意見を求めた出雲姫だったが、それに対する答えは訳を知る者達の沈痛な表情による無言の首肯のみ。それを見てようやく事態の重大さに気付いたのか、さっと顔を蒼ざめていた。本当、危ねぇったらありゃしない……。
「こっちの三差路側は全部変わってないネー」
「そうだな、あとは日本側の確認か」
まぁ、確認とはいっても約二週間程前か。一度六郎さんの店へ物資調達に行った時にも使っているし、どうせ異常も無いだろうな。
―――その時の俺達はそう、思っていた。
まさかこの僅かな期間で、異世界ホールの内部があそこまで変わっていようとは……。
ついでに若干の告知です。
序章第0話を追加し、第一章から第三章まで楽屋裏以外の全話を改稿完了しました。
一部ほぼリメイクと化しちゃってる部分もありますが、文章としては読み易くなったんじゃあないかなと思います。気が向いた時にでもヨロシクー。




