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狐耳と行く異世界ツアーズ  作者: モミアゲ雪達磨
裏章 幻想世界編
179/439

閑話⑩ 裏郷に出づる者:中編

 やっぱり三部構成になりました。

 描写を重視するか、冗長化防止に駆け足で進めるかの配分が難しい所ですね。

 ―――ギ。グオオオォォォ……!


「……ふうっ」


 最後に湧いた巨大な悪魔を斬り伏せた後、モルトは何処かへと剣を仕舞う。その頃には魑魅魍魎達も完全に消滅し、裏郷の澄み渡った空気が再び広がっていった。


「こりゃあ凄いな。ただの人間がまさか『出し入れ』まで出来るとはねェ」

「……驚くポイントそこかよ?もっとこう、あるだろ。何故幽体を斬れるのかとか、あれだけあった魔気をどうやって浄化したんだとか」

「別にその程度ならアタシだって出来るしね――それに」


 どうやらモルトとしては霊的存在に対抗する手段にそれなりの自信があったようだ。その様子にどこか、覚えたばかりのおもちゃの使い方を披露したがる童のような可愛げを感じるサキだった。


「出来るって……サキっ!後ろだ、避けろ!」


 その一瞬弛緩した空気を狙ったかのように、サキの背後の空間より先程斬り伏せた筈の傷だらけの悪魔が現れる。そしてモルトの叫びに先んずる事数瞬、巨大な拳を振り上げサキの頭上へと打ち下ろし―――


「――言っただろ?この程度、アタシだって出来るとさ」

「なっ!?」


 そのサキの言葉に、そして目の前で起きた出来事に。俄かには理解が追い付かず固まってしまったモルトを愉しげに見つめるサキの両手には……片や七尺にも届こうかといった巨大な戟の柄、此方それを以って斬り落とした悪魔の生首が、それぞれ握られていた。


「……サキ。何故君が悪魔(ディアボロス)を斃し、あまつさえ素手でその身体を掴み上げることが出来るんだ?それは魔に属するモノ。同じく魔に属するモノであるか、もしくは対応出来る『力』を持つ者でなければ触れた瞬間に全てを侵食されひとたまりもない。そして『力』を持つ者は俺の一族を除いてこの世界には居なかった筈だ」

「と、言われてもねェ。資質はそりゃそれなりに必要だろうけれど、退魔そのものは力じゃあなくて先人達より連綿と受け継がれてきた技術の賜物だ。その手の技術としちゃ御先稲荷(ウチ)が最先端の自負があるからとしか言えないよなー。だよな、霞?」


 何処か先程の悪魔に対してよりも警戒をする様子で唇を引き締めサキを問い詰めるモルト。一方のサキはと言えばその様子を気にした風も無くのんびりとその問いに答え、そして霞草へと同意を求める。


「そうですな。初見のモノ相手故、我等一様に見に徹してはおりましたが、最後のデカブツ以外でしたらそこらで寝ておる雑兵共でも十分に対応可能でしょうなぁ。流石に素手で魔に触れても平然としていられるのはサキ様位でありましょうが」

「そんな馬鹿な!?この聖剣は代々俺の一族に伝わる世界でただ一つの『力』だと聞いていたのに……」


 信じられぬとばかりに話を振られた霞草へと確認を取ったモルトではあったがその補足にまたも驚愕し、今度こそ呆然としてしまった。


「『力』ねェ。まぁその聖剣とやらは兎も角、どうやらお前の居た界隈じゃあこの手の現実は一般的じゃあ無かったようだね。その辺りも含めて、飲みながら話して貰おうか。クククッ」


 その既に浄化が為されている悪魔の血に濡れた手をモルトの背後に回しそのままバンバンと上機嫌に背中を叩き始めるサキ。対するモルトの表情はと言えば多大な困惑に満ち満ちていたのであった―――








「――それじゃあアンタ達は狐人族どころか人間ですらなく霊獣といった存在で、ここは俺が居た世界とは別の世界だという事なのか?」

「サキ様の妄想理論が正しければ、だがな」

「妄想ってお前。せめてご想像とかオブラートに包んだ言い方をさぁ……」


 再び本殿へと戻り、久々の大型案件であった魑魅魍魎退治に霊狐達が話を咲かせる宴の中。

 サキの説明努力も虚しく、出所(ソース)が創作物の英雄譚という事で霞草からは一言で切って捨てられてしまった。実は結構な確信的予感があっただけに霞草の言葉に内心涙するサキではあったが、冷静に考えてみれば我ながら荒唐無稽な話だなとも思ってしまう。


「ですがあの裏鬼門にあった魔魅穴は、このモルトの姿が裏郷に確認されたのとほぼ同時刻に発生しておるようです。その事実を踏まえればサキ様のご想像も強ち的外れとも言えますまい」

「だよねェ。たとえ修練を重ねた者とは言え人間がアタシ達に気付かれず、しかもいきなり拝殿前に現れたってなるともうその位しか考えられないんだよなー」


 そう言ってサキと霞草は揃って腕を組み唸り始める。

 この神宮裏郷は遥かな昔より表の神宮から皮一つ裏側に存在する、いわば霊狐達の拠点として創られた異界だ。それ故神秘を視る力を持つ者でなくばそもそもが認識する事すらままならぬし、霊狐達の領域にそれ以外の異物が入り込めば直ちに感知出来る仕組みとなっている。

 だから、仮にモルトが裏郷の外からたまたま拝殿付近に入り込んでくるまで気付かれなかったという仮説自体が有り得ないのだ……そう、その場に出来た魔魅穴を介して直接何処かより入り込んででもこない限りは。


「そうだったのか……ところでそのマミアナっていうのは何なんだ?」

「アタシが最近読み始めた創作物によくある表現を借りて言えば、別の空間へのワープゲートといったところさね」

「元は雌狸を現す(マミ)、から来ている当て字だがな。総じて人を誑かすモノ全般を指すその道での呼び名の一つ、つまりは魔の通る穴という意味だ。先程のお前の様子から見るに心当たりはあるのだろう?」


 質問へ返すサキに補足を入れる形で、霞草が紙にそれぞれの文字を書きながら丁寧に説明を入れる。それを見たモルトは少しの間眉間に皺を寄せて考え込んでいたが、やがて納得のいった様子で息を吐き言った。


「言っている事は分かったが文字がさっぱり読めん。というか見た事も無い文字だし、ここが異世界だというのも事実なんだろうな」


 分かったような分からないような、何とも微妙な情けない顔をしながらうんうんと頷くモルト。それを見た二人の肩が思わずずり下がり脱力してしまったが、何処となく憎めない人懐っこい表情に、サキはつい吹き出してしまう。


「あ!人の仕草を笑いやがったなコノヤロ!大体あの穴がもし俺の世界に繋がってたんだとしたらもう戻れないじゃないか、どうしてくれるっ」

「っくく。ゴメンゴメン、今のお前ったら結構シビアな現実に置かれてるっぽいのにやけに物分かりが良かったからさ。何かつい笑っちまったよ。しっかし確かにアレ、どうしたものかねぇ……」


 何処かシリアスになり切れていないモルトの非難を受け、サキは口を濁しながら窓の外を覗き見る。

 その視線の先――裏鬼門の方角には拝殿の付近に位置する場所にある魔魅穴、と呼ばれたモノの残骸。

 無論、物質的な穴ではないので残骸という表現は的確では無いが……悪魔に止めを差し、返す刀でサキが叩き割った形となる魔魅穴は見事なまでに拉げ潰れており、とても当初の人一人が通れる程の大きさや原型を留めてはいなかった。


「うーん。外界に放り出しても文字も読めない、戸籍も知識も履歴も無いじゃ暮らしていけないだろうしねェ。最悪うちに住み込みで雑用でもしとくかい?人間の寿命程度なら面倒見てやっても構わないけど」

「……勘弁してくれよ」


 随分とスケールの長い居候提案をされ顔を引き攣らせながらそう返すモルト。

 しかし後の聞き取り調査により、戦闘と軽い自炊位しか出来ない事が判明したモルトは結局雑用としての住み込みが確定してしまったのだ。








「サキ、デート行こうぜデート!今度開催する港の博覧会ってのが凄い規模らしいんだ!」

「……お前ね。その空気の読めなさっぷりはいっそ清々しいというか、その内刺されても知らないよ」

「大丈夫だ。軽い呪詛込みまでの傷なら死ななきゃ自前の回復能力で全快出来るから!」


 それから一年程が立ち、モルトは見事に住み込みの下男ポジションを確立していた。

 だがそれなりの精悍な顔付きとそれに似つかわぬ話好きで快活なその性格のギャップも相まって、雑用然とした立場の割には同じく修行中の若い地狐連中からの受けは良く、思いの外この裏郷生活を満喫しているようだ。


「クッソォ、俺のチコちゃんにベタベタくっつきやがって。あのクソ人間、いつか潰してやるっ!」

「サキ様に対するあの馴れ馴れしい態度、今日という今日は許さん!そこへ直れ下郎!!」

「くぁあ~!何で霊狐が人間の日本史を習熟しなきゃいけないのよっ!?そこの下男、気分転換に付き合いなさいっ!」

「ちょっ……アンタ一人だけ理由がおかしいだろ!?」


 反対に年季の入った仙狐達からは蛇蝎の如く疎まれ、またごく一部、体の良いストレス解消のサンドバッグ代わりにされていたりもしたが。

 しかし本人の高い戦闘能力と生命力によりそれなりにあった命の危機もまぁ、どうにかなってはいたようだ。


「俺、こっちの世界に来た当初こそ戸惑ったけどさ。英雄の一族とか勇者の再来とか言われたりせずこうして普通に一般人出来て、今すっげー楽しいんだぜっ」


 今、サキの目の前で嬉しそうに言うモルトからは出会った当初のどこか堅苦しい雰囲気は感じられず、まだ若干少年時代の名残を残す年齢相応の人格を見る事が出来ていた。


「だから今まで自分を抑えていた分の反動で思うままに生きようってかい?やり過ぎは欲の暴走に繋がって互いを不幸にするよ、心しておきな」

「そういう所はやっぱり齢食った年長者って感じだよなサキは。まぁ肌はすべすべだしその透き通るような白い髪も、耳と尻尾もフワフワのモフモフで触り心地が良いから全然気にならないけどな!」

「……んなっ!?」


 このようにして、ここ一年でのモルトの豹変っぷりは凄まじいものだった。


 霊狐達からは既に半ば権現と同類に扱われ、崇拝する対象とすらなっていたサキにとっては久しく感じる事の無かった、長年蝕まれていた退屈を祓うには十分過ぎる程の刺激。

 サキ自身、前の良人と別れて以来その手の縁談が山のように持ち込まれてはいたがその気が起きず、特に静の一件があってよりは哀しみに暮れ長い間男女間の情愛といったものからも離れていただけに、この手の誘いへの抗体が薄れてしまっていた。

 そのような状態でこの直接的かつ諦める事を知らぬ若く瑞々しいアプローチに毎日のように心を揺さぶられ、また半ば政略結婚とも言えた過去の良人とは違い立場を気にする必要の無い相手。その距離が存外に心地良く、いつしか憎からず想う間柄となり始めていた。


「いやぁ、あのサキ様に今更ながら春が来るとは。我等天狐四者、皆お祝い申し上げますぞ」

「霞、お前は猛反対するかと思ってたけどね」

「何をおっしゃる。サキ様はこの裏郷に於いて絶対的に過ぎる御方でしたからな、むしろ浮ついた話の一つも上がれば皆親近感も湧くというものでありますよ」

「あぁそうかい……」


 サキの補佐兼周りの纏め役である天狐第二位の霞草からしてこの始末であり、本当に一部の仙狐達を除けば専ら歓迎ムードとなっていた。ある意味都合の良過ぎる展開に一度はモルトが洗脳能力でも持っているのではないかと本気で疑い、身体的霊的共に本格的な検査の敢行までしてしまった程だ。


(でもあの時のコイツの泣きそうな情けない顔はちょっとぞくっときたよね――違うそうじゃなくって!)


 少しばかりアブない方向へ進みかけてしまった思考を慌てて頭の中から追い払い、サキは改めて無駄にニコニコと楽しそうに笑いかけてくるモルトを見やる。


 とは言え後継ぎがどうといった小難しい話ではなく、あくまでサキとモルトという一個人同士の問題だ。

 強いて言えばモルトが人間であり若すぎる事が懸念として挙げられるが……幸いモルトに力尽くで押し勝てる者自体、霊狐達の総本山であるこの神宮裏郷の中でも片手で数えられる程しか居ないのだ。次の世代へ優秀な子孫を残すべき(つがい)の相手としては申し分が無く、また今日も今日とてその若さからくる活力に流されて、こうして外界に出てまで仲睦まじく博覧会巡りなどをしてしまっていた。


「むぅ。この齢になってこんな乳繰り合いの真似をする事になるとはね……」

「何言ってんだ。恋愛に齢の差なんて関係無いのさっ。それに、サキは見た目だけじゃなくて動きも十分に若々しいしさ。ほら、あーん」

「ほっ、本当にそれをやらないといけないのかい?うぅ……あーん」


 幸福感による嬉し涙かそれとも羞恥によるものか。顔を真紅に染め上げつつ溢れ出してしまう涙を拭い、心の中で静に詫びながらもそのかけがえのない一時を享受する。

 そして博覧会巡りの最後に、またモルトが騒ぎ出して二人で乗った大観覧車の中で―――


「――サキ、有難うな」

「……何だい藪から棒に」

「もうばればれかもしれないけどな。俺って元居た世界じゃ勇者ってヤツをやっててさ」

「ふぅん」


 地上から離れゆく揺り籠の内部で、沈みゆく夕陽を背景にモルトの告白が始まる。

 対するサキは心への衝撃は思いの他少なく、やはりそうか程度に思いながらもそっけなく返す。サキはこちらの世界に来てからのモルトしか知らないし、特に以前を知りたいとも思わない。

 よく恋は盲目などと言われるが、正にその通りだなとサキは思う。本人の口からこうして直接言われたとはいえ、未だ確たる証拠も無く正体不明であるこの男を身近に感じてしまう自分。警戒感の一つも湧かないどころか長きに亘り空虚であったサキの心の中は今、こんなにも満たされているのだから。


「何でもご先祖様に何代か前の魔王を斃した勇者が居たんだと。餓鬼の頃からずっとそんな話や代々の英雄譚を聞かされてさぁ、まぁご先祖様については尊敬しているし、俺もそうなれれば良いな程度には思ってたんだけどな……」

「………」

「――あの日。俺は、俺達は。魔王の復活を目論まんとする最後の魔軍の将との決戦に臨んでいた。結果としちゃどうにか斃しはしたんだがよ、どうにも話が違ったんだよな。魔軍の将を斃す度に、国のお偉いさん達の顔には薄っぺらい笑顔の仮面が増えていって、そしてその数だけ仲間達が世界から退場していった……頑張れば頑張る程に民からは神の遣いと持て囃され、だけど決して同じ人間としては扱われなくなる。もう頭がどうにかなりそうだったよ」


 普段のお調子者で考え無しな性格も間違いなくモルト自身なのだろうが、告白を続ける様子からは普段の軽さが完全に消え去り、その若さからは想像も付かない程の深い心の闇といったものが貌に刻まれていた。

 人の心というものは相反する感情を抱えてしまえるものだ。長きを生き、人間達の舞台裏を見続けてきたサキにはそれを誰よりも理解出来てしまうが故に、先程とはまた別の意味での沈黙を貫く。

 そんなサキの面持ちを覗き込んだモルトは困ったような笑顔を形作り、だが真摯な目で続きを促すサキに応えて再び続きを語り始める。


「俺は何をしているんだと自問自答した事は数え切れない程にあった。いつしか旅立ちの頃から共に居てくれた、本当の意味での仲間達相手にすら怖くて本心を打ち明けられなくなってしまったんだ。そんな折だ、最後の魔軍の将が今際の際に作り出した異界への門が全てを飲み込まんと暴走を起こしたのは」


 最後の将は人間達と未来を分かち合う事が出来ずに没した魔王の嘆きを代弁し、人間達を神の尖兵と断じて呪いを吐きながら逝った。その凄まじいまでの想念が形を成し、異界への門に作用したのだろう。

 その門の先に歓迎すべき隣人の姿は無く、唯々……絶望のみが這い出るばかり。


「別に自己犠牲なんてつもりは無かったけどな、俺の居た世界じゃ今代の勇者としてやるべきことも終わっていたし、もう良いかなんて思っちゃったんだよ」


 そしてモルトはその身に残る僅かな神力を使い、引き留める仲間達を緊急用の脱出魔法で彼方へと送り出した。その後、門を内側から閉じるべくその中へと身を躍らせ―――


「――で、気が付けば裏郷に居たって訳かい」

「あぁ。体力も神力もからっからな状態でいきなりの霊狐達との百人組手だ、あの時程色々と底をついたのは初めてじゃねぇかなー」

「あの時は力を隠してたんじゃなくて既に出せる力が残っていなかっただけって事なんだね。道理でその後の日々じゃ規格外をまざまざと見せ付けてくれた訳だ。うちの霊狐共の大半がこの一年でお前を見続けて自信を無くしちゃったり、逆に更に修行に没頭するようになっちゃったからねェ」


 この一年。モルトを気に入らぬ者達との立ち合いの類も幾度かは行われたが、ただの一人も人間であるモルト相手に膝を付かせる事は出来なかった。

 また霊狐達の修行にも積極的に参加をして無駄に余りある才能により霊術の類もどんどんと習得してしまい、これまた地狐達を泣かせる羽目になったものだ。一度は座学のストレスで行き付く所までいってしまったあの瑠璃草相手の正式な立ち合いでも予想以上の善戦をし、霞草をはじめとする天狐四者達ですら目を丸くしてしまった程だった。


 だが、それは善き刺激でもある。

 以来霊狐達に長らく見られた驕りは鳴りを潜め、地狐達にとっては僅かな時間であるこの一年で相当数の者達が熟し、遠くない後に位階を登る事となる。そしてまた裏郷自体に活気も溢れ出していた。


「お礼を言うのはアタシの方さ。個人的な話をさておいてもお前のお陰で裏郷に新たな風が吹いた。決して悪い風潮ではないし、アタシ等としちゃ歓迎すべき事だからね」

「――そうかぁ。何か恥ずかしいもんだな、そういう言われ方」

「……普段あれだけ小っ恥ずかしい事を囁いてくる口でよく言うよ」


 そんなやり取りをしていると籠の戸が開き、二人だけの空間から現実へと引き戻された。

 どうやら話に興じている内に観覧車が一回りしていたようだ。途中から景色を楽しむよりも話の方に夢中になってしまったが、二人は並んで地上に降り立った。


「さぁって。今日は丸々遊んだし、明日からはまた面倒なお役目に戻らないとね」

「面倒っつってもサキさー。たまに他の天狐のオッサン達と会議をする程度で、大体は座敷に座って酒飲んでるか気分転換に霊狐達の修行と称して遊んでるだけじゃないか?」

「……信仰されるのもお役目の一つだよ」


 そして二人はまだ若干のぎこちなさが残る様子ではあったが互いに手を取り合い、仲睦まじく夜の街の中へと消えていった。


 ―――こうして二人きりの一日は終わる事となる。


 霊狐と人間という別種の存在。

 互いの生きる時間が噛み合う期間は非常に短い、だがその分今をより噛みしめて生きていこう。そんな想いを胸に抱え、また明日からは今までと変わらない毎日が始まる事を……その時の二人は疑いもしていなかったのだ。

 恐らく今まで一、二を争う黒歴史会。

 これ書いてる途中でリアルMPが八割位削られた気がします、どこでとは言わないけど。


 尚、瑠璃は当時の時点で既に実技や戦闘面ではサキ以外の四人とタメ張れる程の実力だったらしいです。精神面がちょっと残念な子というだけで。

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