狐の五 幻想世界・極限モード⑤
突然ですが、その総評を読んで思う所も多々ありまして「もっと読んで貰える」ような作りに大幅改稿をしていくことにしました。
長文になりますので続きは後書きにて。暇だし読んでやってもいいぜーという方がおりましたら本文の後にでも少々お付き合い宜しくお願いしますm(_ _)m
23:35追記:後書きの影響で悪魔さんの投稿キャンセルします。多分二日後辺りに第17話目投稿予定。
「――来たか」
迷宮の入り口に立つ一つの影。地下40階より転送クリスタルの前に現れたシズカ達を確認したその者は、低く落ち着いた声で言葉を紡ぎ出す。
「……こりゃあ、参ったな。まさか【竜王】本人がこんな始まりの修練用ダンジョンにまで出張ってくるとはなぁ」
「抜かせ。我とてこの世界ではプレイヤーの一人に過ぎん。やっとの思いで集めた我が可愛い従僕達をまたぞろ貴様の[魔霧の牙]で殺し尽くされては敵わんからな。こうして我自らやってきたという訳だ」
ライが口にした【竜王】という言葉、つまりは目の前に居る黒い髪から突き出る角とその背に生やした皮膜の翼、そして爬虫類然とした尾を持つ竜人こそが―――
「扶祢。厨二コスプレ趣味もやり過ぎるとまた母上に叱られるよ?」
「なっ!?わ、我は扶祢ではない!最早あの本体とは完全に別個の存在と化した者、その名もミタマノツカイと――シズ姉?」
「シズカはこっち。わらわはこの前現世で復活したばかりな扶祢の姉の静だよ」
「……え、えぇえええっ!?」
唐突に始まった目標の一人とライによる戦闘前の口上の如き会話ではあったが、静のこの身も蓋もない横槍とその後に続く驚愕の事実の暴露により見事に中断する羽目になってしまった。
「……そうか。それであの子が我の言い付けを守り上空からの攻撃に徹していたにも関わらず、あれ程の手傷を負っていたという訳か」
「全く、面倒なモンをけしかけてくれおって。汝が姿を現すのがもう暫し遅ければあのクソトカゲを平らげて新たな素材にしてくれたものを」
「あの子を捕獲するのすっごい苦労したんだからそれは勘弁して、シズ姉……」
【竜王】とて元は扶祢。やはり扶祢をベースにしたミタマはシズカ相手に強く出る事は出来ず、つい扶祢の名残としての素が出てしまったようだ。その横では複雑そうな表情のライが、それでも大人しく座談会に加わっていた。
『それじゃあミタマちゃんは別に面と向かって敵対するつもりは無くって、ただあたしがライちゃんと仲良く喋ってたのが楽しくなくて家出しちゃっただけってことなのぉ?』
「うぅ、家出とか言うなっ!……そうだよあの晩に貴様は何と言った!?どんな貌でも気にしないって言ってくれたじゃあないか!だのに我がちょっと表に出ただけであっさりと敵対しおって、あんな真似されたら我だって引くに引けないじゃないかあっ!!!」
「え……いやそれは本体の話だろう。それにあれだけのドラゴン軍団を俺に指し向けておいて『我が軍門に下るが良い』なんて言われたら普通敵役かと……」
「五月蠅いっ!男が細かい事をグダグダと抜かすな!今まで我をヤキモキさせた責任を取っていい加減我の物になれー!」
このようにして、ミタマは襲い掛かってくるどころかまるで知己に対する態度でライに食ってかかっていた程だ。
暫しの間、喧々諤々と言い争っていた二人だが待てども待てども戦闘に発展するような気配は無く、またミタマもその場に居座り逃げる気配すらも感じられなかった。
「何じゃ、つまるところ汝等の場合はただの痴話喧嘩かや」
「扶祢とは違ってミタマはそういう所、自分に正直なんだね」
「はいはい、ごちそうさまー。結局この弓、作る必要無かったわね」
どうやらこの世界で互いに自我を得た際に、タイミング悪く他の二人と同時に袂を分かつような事を言われたライが勘違いをしてしまったようだ。その後はライの言い訳にある通り、直情気質なミタマからの方向性の若干ずれたアプローチによって更なる誤解を生んでしまったのが事の顛末らしい。全く人騒がせな話であった。
「ま、それならば話が早いのぉ。ミタマよ、我等と共に来るならば、事が終わった後であればライを好きにして構わぬぞ」
「本当か!?ならば我も行くぞっ!ではライ、これを以て我と貴様は和解となるなっ!」
「ちょっ……」
「なむなむ――こっちの扶祢をよろしくね、ライ」
「まじかよ……う~ん、元々ミタマは仲間同士だったしな。そういう事情ならうん、まぁな」
静の言葉を受けて改めて意識をしてしまったのだろう。やはり何処となく気恥ずかしい様子ながらも満更では無さそうな表情を見せるライ。(*1)
こうして幻想世界を巡る旅の道連れがまた一人、増えたのであった。
その後、ミタマが上空に控えていた古代竜ヴィアスマウグを呼び寄せライとの和解を伝えたところでまたひと悶着が有りもしたが。概ね順調な流れで元パーティメンバー同士の和解は成り立った。
そしてミタマを含めた五人はヴィアスマウグの背に乗り、快適な空旅を経てアベルの街へと到着する。
「それじゃあ雑貨の買い出しと大神様の分霊や残りの二人についての情報収集に分かれて動きましょうか」
「ならば童は情報収集に回るかのぉ。ミタマよ、付いて来やれ」
「我か?それは別に構わないが……出来ればライと久しぶりに一緒に歩きたかったなぁ」
瑠璃の提案により情報収集組と物資購買組とに分かれて動く事となり、シズカが情報収集を買って出た――のは良いのだが、何故か相方にミタマを指定していた。
「これから何時でも共に居れるじゃろうが。聞くに汝は些か直情的な思考を好むようじゃからな、この機会に童が情報収集のいろはを通じて自律的な思考というものを教えてしんぜよう」
「むぅ。それじゃライ、また後でな」
「ああ。シズカと喧嘩したりするんじゃないぞ」
「我はお子様か……」
ライと和解してよりこの僅かな時間でミタマは見ている側が恥ずかしくなる程にライにべったりとくっついていた。だがシズカに指摘された事も頭では理解も出来るのだろう。名残惜しそうな様子ではあったが、特に抵抗をする事も無くシズカと共に歩き出す。
その後数分程は経っただろうか。それまで互いに他愛もないやり取りをしていた二人だったが、裏通りに入り人の往来が目に見えて減り始めたのを見計い、不意にシズカが言葉を発する。
「ときにミタマよ。汝、目覚めておるな?」
その問いかけに一瞬ぴくりと反応を見せるミタマ。そのままたっぷり一分程を数えた頃か、長い後にようやく口を開いた。
「――さて、何の事やら……ぃだだだだぁっ!?」
「正直に言わぬとまた触手風呂の刑(*2)に処するぞぇ?」
「うぅ、シズ姉は理不尽だ……」
そしらぬ顔をするも力いっぱい頬っぺたを抓られてしまい、思わず涙目になるミタマ。その頬の形をむにむにと直す様に擦った後に僅かな逡巡を見せるが――やがて不貞腐れた様子で首肯する。
「あぁ、その通りだ。我は既に目覚めている」
「ふむ。そうかぇ」
そして二人にとっては意味のあるその少ないやり取りを終えた後、暫し沈黙の時間帯が続く……。
「……おい。それだけか?」
「あん?仰々しく魂消ろとでも言うつもりかや」
「いやそうではなくてだな……ええい、一体何を言いたいのだ貴様は!」
「――貴様?」
「いひゃいいひゃい!?うぅ……何が言いたいのよぅ、シズ姉ぇ」
またしても頬っぺたを抓られたミタマは遂には口調すらも変えてしまう。その様子をひとしきり楽しげに眺めた後、再びシズカは語り始めた。
「別にだからと言うてどうという事など有らぬよ。童も長い事生きておるでな、そういった不可思議な事の一つや二つ、とうの昔に体験済みじゃわ」
「………」
「ま、今時魔の王なんぞという恥ずかしい単語を並べ立てねばならぬ身の苦労。察する位はしてやろうぞ?」
何とも皮肉な言い回しではあった。だがミタマを見るその目付きは以前と変わることのない姉の妹に対するそれであり、そのような優しい面持ちを向けられたミタマは不意を衝かれた様子で頬を赤らめてしまった。そのまま知らずそっぽを向いてしまうミタマ。
「ふ、ふんっ。別にシズ姉にどう思われようとも我には関係は無いがなっ」
「そんな事言われるとお姉さん、悲しいのぉ」
「……安心しろ。今の我は所詮この世界に投影された複製だ。本体の奥底に根付く本来の我は未だ深き眠りについているさ。だからこそ今此処に居る我はその役割からも解き放たれ、こうして終わってしまった後の余生を満喫しているのだしな」
「そうかぇ」
そのやり取りを区切りとして今度こそ二人の間には沈黙が訪れる。だがしかし先程までとは違い、その沈黙は決して重苦しいものでは無かった。それが証拠に自身の頭を撫でる手を振りほどく事もなく、ミタマの目にはうっすらと光るものが見えていた。
「――やはり、シズ姉は理不尽だ」
「そうかぇ」
そして再び大通りへと出た二人は今度こそ情報収集へと取り掛かる。そこには当初のぎこちなさなど微塵も感じさせず、仲睦まじい姉妹の姿があった。
「むぅ、シズカばっかりずるい。わらわもミタマと姉妹のスキンシップしたいのに」
「後で好きなだけしなさいな。これ以上見てるとシズカに気付かれるから、そろそろ私達も買い出しに戻るわよ」
「はは、ああいうミタマも新鮮で良いな」
遠くからそれを眺める出歯亀が三人程居たのはご愛嬌。
久々の我ちゃん登場。分霊的な存在だけど。
尚この後、静のスキンシップによりミタマの精神に百合気味な精神的外傷が刻まれたらしいです。
*1:爆発すればいいのに。
*2:第38話参照。時系列的にミタマにも超有効な精神攻撃と思われる。
※改稿予定についてのお話
今年に入ってから自身でも序盤中盤の流れや説明の冗長が目に付く部分が多々あり細々と修正はしていたのですが、ネット小説大賞の総評文内容を読み、これを機会に一度説明部分と描写部分を全て見直していきたいと考えました。
最初は色んな作品を読んでいる内に自分でも「まずは書いてみたい」という気持ちで書き始めたのですが、書いてる内にやはり「読んで貰いたい」といった気持ちが強くなる自分がいました。そうなるとやはり当時の自身の方向性と今の方向性に結構なずれを感じ、そこの違和感がどうにも納得出来なくなってしまいまして……。
まずは今の閑話部分を全て書き終えてからの話となりますが、現在予定しているのは、
①脚注を可能な限り廃し、本文の中に描写として組み込む。
②敢えて多用していた無駄な漢字やルビを省き、パッと見で読み易い構成にする。
③無駄な説明部分の修正等。
①は元々コメディタッチで進めるつもりだったので、お馬鹿なセルフノリ突っ込み的に書いていたのですが、最近はほぼ文章内に組み込めてしまう体感があったので三界編辺りから付けるかどうかを悩んでいたんですよね。やはり今読み返しても「これは残したい!」と強く思うものもあるので全廃という訳ではありませんが、これはほぼ消去する予定です。
②について。はい、リアル厨二病ですね。日本の妖怪が出てきた辺りからは特に、和風の世界観を意識し始めてえらい増えてしまったと思ってます。そういう風な方が好きだ、といった気持ちも相変わらず有りはするのですが、やはりどうせ書くなら多くの方に読んで貰いたいと思うのが正直な欲求ですので。
③について。ここが品質といった意味で恐らく最も重要な点でしょうか。
元々私自身、面白設定を見てツボる事が多かったので、序盤は特にそのノリで書いていたものです。ただ自分で見返してまず思う事が「説明ばかりでくどい」なんですよね。第一章なんかぶっちゃけ読まなくてもいいんじゃないかななんて思ってしまう位ですし。なので序盤中盤は多分描写や説明部分に関して大幅に推敲する事になると思います。
ただし、基本となるストーリーは今のところ変える気もありませんし、大筋は相変わらず異世界ホールをくぐった先のお話なので話自体はそのままです。そこまで変えるくらいなら新たに書き直した方が良いですし。
ただ勢いでちょっと場面描写そのものを作ってしまうかもしれない可能性についてはご容赦下さいまし。
なのでこの作品をここまで読み続けて下さった皆様でしたら特に戻って読み直す必要は無いように作りたいと思います。ただ推敲に向けて更新頻度は若干下がります、これについては申し訳ない。
現在の予定では、新章以降は一~二日更新が三日前後更新位に変更となります。なるべく更新間隔は保ってはいきたいと考えておりますが……。
目下進めている閑話・幻想世界部分についてが終わった後からの推敲となりますが、ここで急いで閑話部分まで品質下げては元も子もないので特に急ぐつもりもなくだらだらと……もとい手早く纏めたりはせずに書き上げるつもりです。
その後、誠に申し訳御座いませんが一週間程は推敲優先にして新規投稿は滞るかも。現状ではその辺りまでは決めていないのでまた決まり次第お報せします。
最後になりますが。
初稿部分から全てを見通して綺麗に書くとか無理だって!なので初稿時のアレな文章は相変わらず続くと思うけど勘弁してね!
それでは日々のご愛顧の感謝も含め、最後までお読み頂き有難う御座いました。
今回の話についての駄目出しも含め、ご意見・ご感想等、お待ちしておりますm(_ _)m




