第012話 狐と○王と2号さん
さて、最後に扶祢のステータス開示となる訳ですが。
名前:薄野 扶祢
種族:妖狐(異界妖:地球)
年齢:18
筋力:B 敏捷:A
耐久:B- 器用:B
精神:A 神秘力:E-[魔]/A[精霊力]
スキル:槍術A+ 体術B 霊術A 探索C 追跡E 料理C 神秘力感知A
(変装術A) (捕縛術C)
固有スキル:コスプレC
[変装時その存在を演じきる事で対認識判定にボーナス]
平和ボケC
[戦闘時や危機的状況以外精神判定にペナルティ。
精神が-2ランク扱いになる]
野生E-
[飼い猫の方がマシなレベル、もしかしたら探索や追跡に第六感が
働くことがあるかもしれない]
霊力S
[異界の神秘、神力の亜種に相当?]
魔力強制封印EX
[魔力ランク-6、下がった魔力ランク÷2(端数切り捨て)の霊力ランク
が上昇する。解除には多神教の主神クラスの強い加護を受けた大聖人
または英雄が自らの魂を捧げた上で長期間にわたる儀式を成功させる
必要がある]
(異界の魔王の残滓B
[覚醒済/記録の一部欠損により、内容の開示不能])
「「「……………」」」
「……てへ」
見た目恥ずかしげに頭をかく妖狐様。どことなく困ったような表情で、わざとらしく舌を出したりといったあざとさも皆無な辺り内心かなりテンパっている様子。つまり可愛い、じゃなくてだな……俺もちょっとテンパり気味かもしれない。
「……コスプレ」
「平和ボケ、ですか」
「妖狐なのに飼い猫以下の野生……」
「うん、分かってた……」
一方俺達の反応はと言えば酷いもので。これには扶祢も思わず別の意味で涙してしまったようだ。
いやさーほら、これに直で突っ込んだらシリアスになっちゃうじゃん?皆も空気読んでくれてるじゃん?
「だってだってさ!強く念じれば水晶板にも表れないって話を聞いた時にはもう判定終わってたしさ!あの後に何かしようとしたら怪しまれるじゃん!?」
「だからってこんなんそのまま馬鹿正直に見せるか普通……?」
「申し訳ございません、まさか身近でこんなネタ……もとい危険要素満載の鑑定結果が出るとは思わず。もっと細かに説明をすべきでしたわ」
「ネタ……」
あ、沈んだ。
やっぱり相当溜め込んでいたみたいだな。良い感じに砕けた空気になってくれたのでサリナさんにサムズアップをしたら、向こうもにこやかに頷き返してくれた。こういう人を本当のデキる女と言うのだろうね。
さて、このくっそ重そうな事実判明による最初の衝撃はどうにか回避出来た訳だが。
取りあえずネタ呼ばわりされてショックでテーブルに突っ伏してるお狐様が再起動するまで待……いや、折角良い具合にこいつの焦燥感を砕けさせられたというのに、ここで沈黙してるとまた精神的な袋小路に追い詰めてしまいそうでまずいか……?
「つか普通言わなくてもこういうのはもっと強く念じるだろ」
「キャー折角柔っこくした空気をまた張りつめさせてくれやがる釣鬼先生ステキ!お前ぇサリナさんと俺の気遣いをちょっとは察しろよ!?」
「いや、ここで黙ってるよりは良いんじゃねぇかと思ってだな……」
「えっと、扶祢さん?皆さんほら、こんなに優しく扱ってくれていますし。そろそろ復活しましょう?」
「――ううぅ。その見当違いな優しさに涙すれば良いのだか総ツッコミに枕を涙で濡らせば良いのだか……」
うん。まだまだ平常運転には程遠いが、何とか再起動は出来たようだ。さぁ、この後どう切り出したものか。
「まぁ色々と突っ込みたい部分はあるけどな。俺なんかそれこそ二ヶ月前までは人間以外のファンタジィな存在自体信じてもいなかった訳だし。事情の説明位はして貰うけど、基本的には扶祢とはこれからも仲間を続けるつもりだぞ?」
「やだ、頼太さんったら心のイケメンですわ」
俺の言葉に紅く染めた頬を片手で抑えながら潤んだ瞳で見つめてくるサリナさん。
前言撤回、この人多分扶祢と同類だわ。サリナさんって、むしろこの悪ふざけな性格が本性なのかもしれないなぁ。デキる女なのも間違いないんだろうけれども。
「あー、まずは()内のコレについては一応見せたくは無かった、ってことで良いんだな?」
収集が付かなくなりそうな空気を察したか、釣鬼が真面目な質問をし始めた。流石はリーダー、こういう時の落ち着いた風格は年季が入ってるなァ。
「――うん。頼太は気を使ってこう言ってはくれたけど……こんなのやっぱり気持ち悪いよね」
「いんや?俺っちは記載情報程度で人が知れるなんて思う程薄っぺらい人生を送ってきたつもりはねぇぞ?」
「釣鬼さん素敵ー!私、惚れちゃいますわっ!」
「うん、サリナさんも気持ちは分かるけど落ち着こうか」
「おっと、これは失礼致しました」
どうやらサリナさんもかなり動揺してはいたらしく、さっきから性格が爆走しちゃってるな。でもこれ以上空気が重くならないようにと自らを道化と化して気を使ってくれているのが分かる。
そもそもただの受付嬢なのにここまで肝が据わっているというか、一般の人間がこんな記載情報を見たりしたら怯えて即逃げ出してもおかしくないというのにな。扶祢の事を気にかけてくれているのだろう、良い人だ。
「いいから話してみ?まぁ俺っちもまだお前ぇ達と会ってから数か月程度しか経ってねぇからな、どうしても信用出来ねぇってなら仕方ねぇが。考えようによっちゃ此処まで気を使ってくれるこの場のお人良し連中の反応は、内情を話して信用のおける味方を作れるチャンスかもしれねぇぞ?いつまでも不気味がられるかもしれない、なんて疑心暗鬼のまま疲れる人生を送りたくはねぇだろう」
「うーんうーん……」
釣鬼もどう反応すれば良いか悩んだらしく、とりあえず正面から話を進めることとしたみたいだ。でも扶祢の方はまだ踏ん切りが付かない様子だな、どれ……。
「じゃあまずはそっちは置いといてだな。この魔力強制封印の方からにしようか。これはそのまま表に出てるってことは自分でも認識出来てなかったんだよな?」
「うん…そうだね。道理で生まれた時から六本も尻尾があったのね……二本や三本の尾を持って生まれる子は稀に居るみたいだけれど、最初から強い霊力を秘めた人型形態で生まれてしかも初めから尻尾が六本なんて聞いた事がないって母さんも言ってたよ」
ほー、扶祢って生まれつき人型形態だったんだな。それなら狐の妖怪なのに狐形態になれないのも納得と言えば納得か。
「俺も前に妖狐についてネットで調べてみたことがあるけど、七尾となると本来相当な年数修行を積まないとなれないみたいだったしなぁ、ネットの内容が当てはまるならだけど。実は年齢詐称の疑惑もあったが、ちゃんと齢書かれてて良かったな!」
「うぅう……アンタ、後で覚えてなさいよ……」
俺の言葉にギロリ、といった目付きで睨み付け唸り始める扶祢。でも唸り方が全然獣らしくないというか、むしろ泣く一歩手前の子供のような愛らしさが前面に押し出されてしまっている辺り、残念ながら本人の努力は徒労に終わっていると言えよう。つまり涙目可愛い。
「ははっ、そうそう。縮こまってるなんて扶祢らしくねぇよ」
「……むぅ」
「少しは気勢が戻ってきたみてぇだな」
「あーうん、サリナさんも有難うね。気を使わせちゃったみたいで」
「いえいえ。このお礼は私も事情を聞かせて頂くという事で結構ですから」
「うっ……」
まぁギルド職員としてはこれは内容が内容なだけに見過ごせないだろなぁ。それについてはどうしたものかと頭を悩ませていたのだが……。
「あ、勘違いなさらないで下さいね?私、ギルドは元より他の誰にも言うつもりはありませんから」
「「「――へ?」」」
「だって、こんなのを馬鹿正直に報告しても厄介事の臭いしかしないでしょう?どの道事情はお聞きする事にはなりますけれど、その事情がどちらに転んでも報告してしまうと後味も悪くなりそうですし……なので無かったことにしちゃいましょう」
いかにも名案を思い付いた、といった感じに軽く両手をポンと合わせるサリナさん。言いたい事は分かるがそれで良いのかギルド職員……?
「で、でも水晶板でもう鑑定結果が出ちゃったし……」
「ですから証拠を隠滅してしまえば良いのです♪」
なおも不安がる扶祢とは対象的に、為すべき事が決まったプロの顔を見せながらサリナさんが宣言する。それを言い終わると同時にパチンッ、と指を鳴らす音がして――水晶板が音も立てず粉微塵に砕け散った。
「ほぅ、見事」
釣鬼が手を叩いて褒めているが……え、何今の。もしかして魔法、か?扶祢も付いていけていないらしく、ただただ茫然とするのみ。
「だけどよ、非常時の報告対応まで想定してるなら多分この部屋にも何らかの記録装置の類は設置されてるよな。その辺についてはどうする気だ?」
「だよな。虱潰しに探しても全部見つかるとは限らないし」
コクコク。扶祢はもう喋る事すら出来ないようで同意の旨を動作で示している。
対しサリナさんは徐に部屋を見廻し、少しの間考える素振りを見せた後にぽつりと呟いた。
「……消し飛ばしますか」
「「――は?」」
「少々危険ですので対爆結界をかけさせて頂きますわね」
直後サリナさん自身を含めた四人の周りに防御膜?が張られ、サリナさんはいつの間にか取り出した短杖を構え詠唱を始める。そして……、
『爆炎!』
その掛け声と共に視界がホワイトアウトした―――
―――三半規管が復活してきた頃には視界に映る青い空と、部屋だった場所の周りに人だかりが出来始めているのが確認されており……。
「あんた何て事してんすか!?」
「シッ、私の仕業とばれてしまいますと三か月は減俸が確定してしまいますのでご内密に!」
「オイオイオイ。どうすんだこりゃあよ……」
驚いた事に、応接室の合った一角が物の見事に消し飛んでいた。
呆気に取られる俺達を尻目に、慌てて駆け付けた他のギルド職員に対し落ち着いた様子で報告をするサリナさん。そして俺達にも向き直り、こう言った。
「取りあえずは私が説明しますので。お三方は適当に口裏を合わせておいてくださいまし」
「いいけどよ…後で説明頼むぞ」
そんな状態で俺等二人が突発的状況過ぎて頭が回っていない中、経験の差か釣鬼があっさりと返す。あ、扶祢がまたフリーズしとる……寝るなー、寝ると死ぬぞー!ペチペチ、むにむに、モフモフ。
「あぅあぅあぅあ……」
気付け代わりに扶祢の頬を軽く叩いたりつねって引っ張ったり、尻尾と耳とモフったりしてやると涙目で言葉にならない文句を言いながら睨んできた。しかし、やはり状況に付いていけないらしくまだ目には力が無い。やべぇ……これ衆人環視の中じゃなかったら自重出来なかったかもしれないぜ。
その後、騒ぎを聞き付けてやってきたギルドマスターに監督不行き届きとして一月の減俸と後始末等の手続きのサービス残業を言い渡されるサリナさん。
そして俺達は―――
「えー。君達は故意ではないとは言え爆発物とも言える物をギルドへと持ち込み、結果この状況を招いてしまった。サリナ君の釈明や君達の事情も鑑みて登録自体を不許可とするような事はしないが、周りへのけじめを付けるという意味で損害額の半分を受け持ってもらおう。よってギルドに対し15万イェンの支払いを命じる事とする!」
ギルドマスターきたよ!予定していたのとは別ベクトルで注目受けちゃったよ!!登録と同時に借金持ちだよ!?どうしてこうなった……。
「これは痛い出費ですわ……」
それはこっちの台詞だよ!?
結果的には爆発オチというか。詳しくは俺達がたまたま持ち込んでいた希少な精霊石が水晶鑑定に激しく反応し爆破炎上してしまった、という何とも奇天烈な言い訳で押し通す羽目になった。
実際に組み合わせで[爆炎]の効果を発揮する精霊石自体はあるらしく、本来そういった品を持ち歩く場合には細心の注意を払うべき事ではあるらしい。
だが俺達と言えば異邦人二人と魔法関連に疎いオーガの組み合わせだったのもあり、それでは知らなくても無理は無い……と事情説明の終盤には野次馬連中からも半分同情の目を向けられてしまったようだ。
「君達も運が悪いとしか言えないが、弁償はきちんとしてもらおうか。ただし事情が事情なのでギルド側で建て替えてはおくし、利子も取りはしないから頑張ってくれたまえ」
「ご迷惑おかけして申し訳ありませんでしたぁっ!!」
成程そういう流れか、ということで土下座をかます。
野次馬達の視線は先程の事情もあってか何処となく生暖かく、とんだ冒険者デビューになっちまったぜ……。
―――PM2:30 サリナ宅にて。
「もう少しやりようはあったんじゃねぇか、とも思うんだがな……」
そして場面は変わり、現在俺達はサリナさん宅にお邪魔して登録用の書類の作成作業中だ。
ギルド内の応接室の惨状もあり、本日はサリナさんの責任として自宅で手続きをする流れとなった訳だが。流石にいきなり15万イェンもの借金を背負わされるのは納得がいかん!とばかりに釣鬼が不満を漏らしていた。
「仕方がありませんわ、あの位はしないと万一の情報漏れという恐れがありますし。それに多分ギルドマスターも、内情の詳細はともかく爆破の理由についてはある程度は勘付いているでしょうから」
だからこその私への減棒でしょうし、とサリナさんは口惜しそうな表情で拳を振るわせていた。
なんというか、この人さっきのトンデモ魔法を見ても分かる通り凄い魔法使いなんだろうけど、減棒でここまで悔しがる辺り妙に俗っぽいというか……最初のイメージとのギャップが物凄いよな。
「その辺りはギルマスをやっているだけはあるってことか」
それと苦労人の中間管理職に見えるギルドマスターだったが、確かに説教をされはしたけれどサリナさんの口頭一つで表向きは納得されてしまったんだよね。やはり人は見掛けによらないな。
「ですわね。借金に関しましては、私も可能な限り条件が良い依頼を優先して斡旋しますので、この騒動と合わせ工作費という事で納得して頂きたく存じます」
「むう、しゃあねぇか……じゃあまずはさっきの話の続きといこうかね」
「あぅ」
む。よく見ればまだ扶祢の幼児化が解けてないな。二人共それには気付いていないみたいだし言っておくか。
「リーダーリーダー、当人がまだ立ち直れてないみたいだからもう少し待ちましょうぜ」
「ぬ、そうか。じゃあまずは他の書面関係から潰していくか」
「あ、なら先に質問良いかな?」
「はい、何でしょうか?」
どうやらやるべき事が決まったらしい。なので作業に入る前に色々聞いておくとしよう。
まずは突っ込みたくて仕方が無かった事からだな。
「サリナさん、さっき物凄い魔法ぶっ放してましたけど、本当に受付嬢なんすか?」
「ええと、ですね。実は、私も元冒険者なのですよ。冒険者相手に受付業務をしていると柄の悪い方が来る頻度もそれなりに高いですし、この街のギルドの構成員は概ね何らかの元冒険者で構成されていますわよ」
「そうだったのか……」
説明されてみれば仰る通りと思えるが、全員そういった経験があったんだな。朝にギルドに行った時見た他の受付嬢の子達、普通にどこにでも居るような町娘にしか見えなかったものだけれども。
「確かに経験者なら多少の荒事位じゃ動じねぇよな」
「ですわね。ただそうは言いましても受付の場合、接客の都合上で腕っ節よりは見た目の方を優先して考慮されていますので、実戦に向かなかった見習いや途中で心折れて引退した子が多いのも事実ではありますけれども」
そういう事ならさっきのサリナさんの肝の据わりようも分かるってものだな。ただの一般人がいきなり職場の応接室を爆破する、なんて普通ありえない事だろうし。
「さっきの言動を見た感じだとどう見てもサリナさんは別枠ですよね?」
「あら、それは一体どういう意味かしら?」
俺の言葉にサリナさんは如何にも「私、心外ですよー」だとばかりに傷付いたような表情を作ってみせていたけれど。若干そのベクトルが斜め上にぶっ飛んでいるとはいえ、あの瞬時の決断力と言いしらを切り通す図太さといい、道半ばで心折れ引退した人とは到底思えないもんな。
「ですが頼太さんの仰る通りですわね。私は当時所属していたパーティが解散したことが切っ掛けで、安定を選んで引退をしたという形になりますわ。当時は貯えもそれなりにありましたし」
「なーる、ところで差支えなければ教えて欲しいんですけど、職は大魔導辺りですかね?」
これでも森の修行中に釣鬼から職についても色々教えて貰っていたからその辺りの職名とかはそこそこ知ってるんだぜっ。
魔導師系のランクとしては、魔術師→魔導師→大魔道、だったっけな。
石造りの建物の一角を消し炭にする程の高火力なのにあの部屋以外には一切被害を与えないなんていう精密度の魔法操作で、しかもあの短時間の詠唱。その前の二種に至っては無詠唱なんて実力なら当然大魔道だろう。
こうやって少しは訳知り顔をして「こいつ、出来る……!」と思わせておくのも将来への布石となるのだッ!
「――うーん、どうせおいおいその辺りの話も皆さんの耳に入ってくるでしょうし。こちらだけ秘密を作るのも良い姿勢では無い、か」
サリナさんはちょっと迷う素振りを見せていたが、やがてぽつりと独白し俺達へと向き直る。
そして心なしかその佇まいを正して答えてくれた。
「いえ、私の最終職は大賢人となりますわね。一応一通りの種別の魔法は扱えますが、主に結界系と迫撃系を得意とする移動砲台担当をしていました。役目上宮中儀礼等も多少は齧っておりますわ」
何と大魔導どころか賢者の上級職だったらしい。大抵の事は魔法で出来てしまうからつい魔法でごり押ししちゃう魔法脳ってやつか。魔法系脳筋とも言う。
因みに、賢者とは魔導師系と司祭系の両方の資格を持つ上位職となる。小五ロリの書を入手したり遊び人から転職したりする必要はないが、二つの異なる系統の資質に加えどちらも習熟するだけの努力と結果が必要なので初心者は真似しちゃいけない。器用貧乏となりがちで名前負けの現職が一番多い職でもある、らしい。
「それは、凄いわね……」
などと言う話を確認がてら混ぜながら聞いていると、いつの間にか扶祢が復活していた。
「お、正気に戻ったな」
「ごめんね、気持ちを落ち着けるのに手間取っちゃって」
それは仕方が無いよな。なんたってあんな恥ずい……もとい、ちょっと表に出せないような重い事が書かれていたんだからな。
「さぁ、私の一月分の減俸の分位はきりきりと話して頂きましょうか」
「いや、それはアンタの自業自得ですから」
「頼太さん酷いですわ。女性にはもっと優しくしておかないと、ノーマルエンドまっしぐらになりますわよ?」
「がっかりさんだ!この人がっかりさん2号だよ!」
「……1号が誰か後でとことん話し合おうか、頼太君?」
うん、調子が戻ったようで何よりです――それはそれとして恐怖の話し合いに強制参加をさせられるであろう数時間後の俺、南無であります。
実際いきなり魔王()とか言われても返って来る反応ってこんなモンだと思うんですよね。




