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狐耳と行く異世界ツアーズ  作者: モミアゲ雪達磨
第六章 理想郷再び 編
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第116話 水晶鑑定②

「それじゃあ次は俺っちがいってみっかぃ」

「釣鬼は種族としては吸血鬼になったんだっけ」

「気持ちとしては今でも大鬼族(オーガ)のつもりだけどよ」

「頼太、生きてル?」

「痛てて……」

「ふんっ」


 扶祢の奴、本気で乱舞決めてきやがったし。

 ピノに怪我を治してもらってどうにか復活、お次の鑑定は釣鬼の番らしい。




名前:釣鬼(ちょうき)

種族:吸血鬼

年齢:54


筋力:A    敏捷:A

耐久:A-   器用:B

精神:A+   神秘力:B-[魔]


スキル:体術S 棒術B 投擲B 探索B 追跡B 罠感知C 釣りS 料理D 

    気配察知A (隠密B) (暗器術A)


固有スキル:魔弾掌

      [魔力を腕に纏い、魔導系、精霊系魔法を弾き飛ばす効果を

      創り出す。効果対象は単体魔法のみ。

      実際に弾き飛ばす行動の成功判定は体術スキル依存。

      魔法障壁とは違いベクトルを逸らす性質を持つので貫通スキル無効

      魔法回避判定に失敗した後の割り込み可能/使用条件:魔力B以上]

      魔法回避B

      [対魔法回避力を底上げする。1ランク毎10%増減。

      Bでは魔法に対する回避率+50%]

      食いしばりB

      [痛覚によるマイナス補正の激減、致命傷を受けても一定時間

      ペナルティを無視して行動する事が出来る]


      吸血鬼種族セット

      [他の吸血鬼からの吸血行為による眷属化の呪い無効。種族特有の

      弱点が存在する。詳細は弱点セット参照]

       吸血E

       [他者の血を吸う行為を通じ生命の源を奪い、その質と量に応じ

       自らの力を一時的に高める。適正不適合の為ランクアップ不可]

       ビルドアップD

       [自身の血液を体内操作する事で一時的に身体機能の向上を図る。

       デメリットとして効果中内出血によるHPへの継続ダメージ。

       Dでは筋力と行動力に+20%、1ランク毎10%増減]

       吸血の呪いE

       [血液を美味と感じ、吸血(しょくじ)への軽い衝動が湧きおこる]   

       再生D

       [受けた肉体的ダメージを徐々に回復させる。また身体の一部を

       失っても新たに生えてくる。ランクDでは再生速度は遅め]

       物理耐性C

       [物理属性ダメージを30%軽減、1ランク毎に軽減効果±10%]


      吸血鬼弱点セット/銀、陽光、白木、浄化

       銀

       [銀由来による攻撃の被ダメージに対しては再生能力が半減]

       陽光

       [陽光の下では全てのステータス判定に-1ランク]

       白木

       [白木由来による攻撃の被ダメージ量1.5倍。固有スキルによる

       再生不可能、自然治癒は可能]

       浄化

       [耐性が0になる]

      ※現技能保持者は生命ある存在である為、浄化の影響を受けない。




「お!釣鬼、種族名が吸血鬼になってるじゃん」

「おおっ!……っくぅ、毎日朝晩起きた後と寝る前に念じ続けてた甲斐があったらしいなっ。やったぜ!」

「「おめでとー!」」

「皆、いったい何を騒いでいるんだい?」


 いきなり沸き立つ俺達に困惑気味のアデルさん。それに対し、サリナさんが苦笑を浮かべながらに以前の鑑定結果を見せる。


「……ぷっ」

「五月蠅ぇ!もう済んだ事だからいいんだよ!」

「いや、ごめんごめん。これでは確かに、大鬼族(オーガ)でありたいと思ってしまうのも致し方なしというものだね」


 アデルさんがそんな反応を返すのも無理はない。あの時の釣鬼は元の姿に戻れるかも不明で、それが故かどこか精神的に追い詰められていた感があったしな。一先ずはこれで、晴れて種族が吸血鬼と確定した訳だ。とはいえ吸血鬼らしい部分がどこにあるのかと言われると、甚だ疑問な部分も残ってはいるのだがね。


「ところでサリナさん。こんなにころころと種族名が変わるなんて事はあるんです?」

「うーん。前例は非常に少なくはありますが、全く無い訳ではないのですよね」


 サリナさん曰く、自身の名や固有スキルの呼称に関しては当人の根源の部分に干渉するものでもあり、本人がそうと強く思い込んでいる場合は稀に変わる事もあるそうだ。近しい例を挙げればサザミ廃坑内で俺達を出迎えた岩軍鶏達などがそれに当たるのだろうか。


「そうですわね。彼等は自身を岩軍鶏として認識しており、その強い思い込みが当時はまだ未確定だった種族名として確定してしまったという例でしょうか」

「言われてみればあの時の釣鬼の種族名って、妙な説明書きが多くて何だコレ?って感じだったもんな」

「まだ未確定の場合、そういった説明が表示される事が多いのですよね。慣れてくれば、あぁ、ここはまだ未確定な部分なんだなと見えてきますし中々興味深いですわよ」


 は~、そりゃ確かに面白そうだな。だからアデルさんもこうして首を突っ込んできてまで色々と見たがっていたのかな?


「他に変更点と言えばー。うん、やっぱり気配察知があるわね」

「予想通りAか。釣鬼が気配を読めないなんて想像出来ないもんな」

「だよネェ。あと、魔法回避なんてのもあるネ」

「魔法回避か、また随分な固有(ユニーク)スキルだね。向こうの公都ではシェリーの『お仕置き雷電パニッシュメント・ボルト』も結局全弾避け切っていたものね。あの時は少しばかり呆れてしまったよ」

「俺っちからすりゃ、あれを何発も喰らって耐え切るお前ぇのが理解出来ねぇって」


 全くだな。俺達の再鑑定が始まる前にアデルさんのデータも見せて貰ったが、ちょっと意味が解らんかったものな。よくサリナさんが「中身は小人族(ドワーフ)」なんて比喩的表現をしていた覚えがあるが、まさか本当にドワーフっぽいステスキルがあったとは。その上であの魔法抵抗力の高さだ、この人本当、魔法使い系の天敵だよな。


「後は、大きな変更点で言えばビルドアップに魔弾掌かな。もう突っ込み所が多すぎてあれだけど、これも魔法に対する実回避に貢献しそうだよな」

「便利そうだけど、魔力B以上かぁ……」

「ボクも魔力はCだからナー。残念」

「この記述からすれば、実際に弾く際の技術的な問題もある様ですわね。今のところはこれもある意味、釣鬼さんの固有技能といったところでしょうか」

「つっても陽が出てる間は魔力も1ランク下がるからよ、実質夜しか使えねぇんだけどな」


 という事らしいです。夜だけでも十分だって!


「このビルドアップって、説明からすると血液操作の亜種みたいな感じに思えるけど、何だろね?」

「あぁそういやな、何時の間にか体外の血液操作が出来なくなっちまってなぁ」

「「へ?」」


 そう何気なく語る釣鬼の言葉に含まれたあまりな内容に、俺達一同揃って間の抜けた声を上げてしまう。使えなくなった、ってそんな事有り得るのか?


「ほら、日本に行く前にお試しで一度使ったきりだったじゃねぇか?変化施術をして貰ってから暫くの間は激しい運動も禁止だったのもあってよ。それで暫く忘れてたら、使えなくなっちまったんだよな」


 それ、結構大事な事だと思うんだが……だが当の本人は驚きの色を隠せない俺達とは打って変わってあっけらかんとした物言いで呟いていた。確かに今思い返してみれば、日本からの帰りに異世界ホール内で腕が破裂した時も血が止まる気配も無かったな。少なくともあの時点で既に、血液操作が出来なくなっていたという事か。


「あははっ、すっかり忘れてしまっていたなんて釣鬼らしいね。でもそれで特段問題があった訳でもないんだろう?」

「まぁ、そうなんだよな。妙ちくりんな血液操作なんてものよりは、このビルドアップってやつの方が俺っちにゃ余程合ってはいるもんな」

「ですわね。今の釣鬼さんの様に必要や好みに応じてスキルが特化していくことは珍しくないようですし、気にする程でも無いのではないでしょうか」


 こうして釣鬼の鑑定結果の検証も終わり、サリナさんが帳簿に何やら書き込みながら処理が完了した様子。


「んじゃ、次は俺が――」

「エー、頼太は後デショ」

「え?何でまた」


 俺が水晶板へ手を伸ばそうとしたところで何故かピノに押し留められ、周りでは他の皆もうんうんと頷いていた。何ぞ?


「最近の頼太の体術の伸びっぷりは凄いものがあるし、それに狗神(ミチル)のこともあるからね~。きっと劇的ビフォーアフターを遂げてくれると期待してるのよね」

「そうかぁ?体術は確かに上がってそうだけど、精々忠犬の忠誠がそれっぽいスキルに変わってる程度じゃねぇ?」

「お前ぇ、気付いてなかったんか……いや、どうせなら鑑定まで待った方が面白ぇかもな」

「へぇ。わたしはここ最近の頼太しか知らないからよく分からないけれど、何か面白そうなものがまた見れるということかな。それは楽しみだね」

「ウンウン」


 何言ってんだ、こいつ等?

 あれか。こうやって期待感を演出しておいて後でがっかりプレイでもしてくる気だろ。どうせ俺は一般人だからな、そんなのハナから期待しちゃいないのさっ!……ウッ、自分で言ってて泣けてきちまったぜっ。


「ついでにピコ君の詳細も調べちゃいましょうか。見た目からしても恐らくゴルディループスだとは思いますけれど」

「ソダネ、ピコこっち来ナー」

「わふん」


 そんなこんなでピノが先に鑑定をする事となり、数分後にピコ共々専用の水晶板へと鑑定結果が映し出された。


名前:ピノ

種族:上位妖精族(ハイフェアリー)

年齢:45


筋力:E   敏捷:A+

耐久:E   器用:B

精神:A   神秘力:C[魔]/A+[精霊]


スキル:精霊魔法A+ 強化魔法B- 隠密C 調教術D 騎乗B 神秘力感知S

    体術C 料理E 罠感知C ピッキングD


固有スキル:飛行B-

      [空を自在に飛ぶことが出来る。移動速度は四足獣と並走出来る程。

      B-ではアクロバット飛行も可能、空中制動へ微ボーナス]

      思念感知B

      [言葉を話せない、または精霊の様な自我の薄い存在からの思考を

      読み取る事が可能。読心とは違うので相手がコミュニケーションを

      望んでいる場合に『聞こえる』と言う表現が近い]

      【力学精霊魔法】A-

      [異界の力学知識を基に組み立てられた新たなる自然現象制御技術。

      この『魔法』の最大の特徴は、直接的な影響を齎す効果部分が

      全て純粋な物理現象効果となる事である。故にこのダメージの軽減

      には魔法防御ではなく物理防御が適用される。

      その性質から基点となる精霊魔法が発動可能な環境さえあれば、

      魔法無効化フィールドの内部にも十分な効果を期待できる]

      【『狂妖精(マッドフェアリィ)』の卵】

      [禁断の知恵の果実を求め彷徨い続ける探求者の資質、今はまだ

      『卵』だが、今後の行動により変化していく可能性を持つ段階]


名前:ピコ

種族:金狼(キンロウ)(ゴルディループス変異種)


筋力:B   敏捷:A+

耐久:B   器用:C

精神:B-  神秘力:-


 シルバニアウルフが異界妖の霊気に中てられ、その下で修行を課せられたことにより進化先が捻じ曲げられてしまった突然変異。現時点では特にこれといった能力は持たないが、全体的にバランスが良く基本種よりもステータスが高めとなっている。


固有スキル:霊力C[異界の神秘、神力の亜種に相当?]




「「………」」

「あの、さっきの釣鬼が霞んで見える位の突っ込みどころ満載な鑑定結果なんですが」

「力学精霊魔法は良いとして、ピコの種族が……」

「いやいや!?固有スキル欄に【】が付くのは余程の事ですからね?」

「金狼、かぁ。ゴルディループスとはまた違うんだね」


 まずは直ぐに片付きそうな力学精霊魔法から整理していこうか。

 これはお馴染みここ最近のピノのお気に入りである、精霊魔法を基点とした副次的かつ強力な、様々な自然現象や力学法則に則った物理作用を発揮させる例のアレの事だ。扶祢にさらっと流されかけて慌てて訂正していたサリナさん曰く、固有スキル欄に付いた【】のマークは要注意スキルというか、大っぴらにするとまず面倒事に巻き込まれる類のスキルに対する警告なのだとか。

 サリナさんもその対象となるスキルを一つ持っているそうだ。公都ヘルメスで使っていたあの【絶対領域】がそれに当たるらしい。【】付与の判定基準はよく分からないが、うん……力学魔法は間違いなく碌でも無い事に巻き込まれそうな危険性を孕んだスキルだと思う。特にあの公都までの道程をショートカットしようとして使ってみせた『電磁加速砲(マグネティックランチャー)』、あれはこっちで言えば禁呪の類に当たる程の威力だもんな。位の高い雷精の協力が必須なのと、台座を作るのに時間がかかるのが難点と言えば難点ではあるが、そのデメリットを含めても圧倒的な性能と言えよう。


「最近のお前ぇの知識欲というか実験への無闇な熱意はこの【『狂妖精(マッドフェアリィ)』の卵】ってやつの影響だったのか……怖ぇなオイ」

「ウーン。だから皆に逢った頃に比べて最近、自然への愛着が薄らいできたんダネ」

「ピノちゃん、それ妖精族としては一番言っちゃいけない台詞だと思うの……」

「しょうがないじゃナイ。実験と検証が楽しいんだモノ」


 これには俺達も驚愕してしまい、口々に自重を促してみるが本人は特に気にした様子もなく言うばかり。そういえば俺もよく、こいつの事をマッドサイエンティスト的な比喩として狂妖精(マッドフェアリィ)なんて呼んでいたりはしたが……いや、まさかな。


「ふむ?この記述からすると、称号獲得の前段階に見受けられますわね」

「称号か。という事は誰かしらにその名で呼ばれ、それが不特定多数に受け入れられたという事実が付随する可能性があるけれど……皆、そんな心当たりはないかな?」


 どうしよう。心当たりが多過ぎて皆を見回すアデルさんの視線が痛くて敵わない。扶祢も似た様な心境だったらしく、二人して冷や汗をかきながらアイコンタクトによる責任の押し付け合いを始めてしまう。


「でもまぁ、まだ『卵』の状態であれば殆どの場合は消える事が多いからね。特段気にする必要もないだろう。わたしも何を隠そう、実は一度『破壊王』の卵というスキルが付いたのだけれども、でも何時の間にか消えていたりもしたからね」

「あの頃の貴女は訓練の度に学院の施設を壊しては先生方に泣かれていたものね。いつの間にか皮肉気にそんな渾名を付けられたのが始まりだったかしら」


 しかしそんな俺達とは対照に、二人は当時を懐かしむ風にのんびりとそんな事を言い合っていた。なんだ、これってそこまで気にする程のモノでも無かったのか。


「あとの細かい部分だと――お、精霊魔法と強化魔法が上がってるな」

「あれだけ色々使いこなしてればねー。他は体術に罠感知にピッキング、料理と、幻想世界(ファンタズムプレイン)での経験が活きた感じかな?」

「そうダネ~……ガクガク」

「まだ精神的外傷(トラウマ)から回復しきれてなかったか……」


 最後の最後で思い出したくない記憶を呼び起こしてしまったらしい。ガタガタと震え出してしまったのでそっとしておくとしよう。ピノ、哀れなり。


「最後にピコ君となりますが。異界妖、これはもしや扶祢さんの事でしょうか?」

「うーん、もしかしたら日々の暮らしでちょっとは影響あったかもですけど。修行によりって明記されてますし、むしろこれに該当するのは――」

「シズカ、だよなぁ」

「わぅぅ……」

「サキの姐さんも入ってはいそうだけどよ」


 あぁ、あの人もだな。サキさんも何だかんだでノリノリで修行に付き合ってたらしいからね。

 こうしてピコが変異種進化に至ってしまった原因は、大体あの母娘のせいという事で満場一致の解決を見た。変異種とはいってもピコの場合、これまでの街中活動でも問題もなく平穏無事に過ごせているからな。特に何が変わり危険になったという訳でもなく、これからもきっと犬ポジという立ち位置は揺るぐものでもないのだろう。


「それじゃあ、最後は俺かな」

「頼太か。トリを飾るに相応しい鑑定結果を期待しているよ」

「ミチル君が一体どうなっているかも気になりますわね」

「何だか妙な期待を寄せられているみたいですけど、俺は他三人と違って至って普通ですからね。がっかりな結果が出ても文句言わないで下さいよ?」

「「「無い無い」」」


 これである。仲間内のみならず、この二人までずっとこの調子だ。本当にさっきから何なんだろうね?

 とはいえだ。皆の様子からしても何かしらの心当たりはあったのだろう、斯く言う俺も実のところ、ミチルに関しての面白鑑定結果が出るだろうな、程度の予想は付いていた。しかし、まさかあんな結果が出てしまおうとは―――

 この章を含めた今後暫くの行動判定の基準となる設定部分なので少しばかり説明多めです。やはり頼太までは入らなかったようだ。

 シェリーの『お仕置き雷電パニッシュメント・ボルト』とアデルのキャラクターデータについては、楽屋裏④⑤のそれぞれの項を参照で。

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