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群狼部隊  作者: bunz0u
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案内人

 その日の夕方、訓練を終えたナオヒト達はアテリイに呼ばれ、二台の車に分乗してパイロフィストの本部に向かっていた。


「いよいよ帰還できるという話だろうか?」


 ナオヒトが話しかけると、キーツは首を横に振る。


「それはさすがにないんじゃないでしょうか、まだ予定には十日はありますし。いや、でもひょっとしてあの人が来たのなら」

「あの人というのは?」

「アクシャさんという人で、だいぶ変わった人なんですが、色々と僕達の知らないことを知っている人なんです。あの人ならナオヒトさん達の帰還を早くする方法を知っているかもしれません」

「そんな人物がいるのか、会ってみたいものだな」


 それからしばらくして車はパイロフィスト本部に到着する。そしてナオヒトとデレクが車から降りると、いつの間にか緑のコートに同じ色の帽子と眼鏡をした女がその前に姿を現していた。


「あんたらがお客さんね、なるほどなるほど」


 その女は軽くうなずきながら二人をことを観察するように見て、キーツに向かって手を上げた。


「やあ、久しぶり」

「アクシャさん! いつ到着したんですか!?」

「ちょうど今朝、こっちに到着したんだよ。それより、立派になったじゃないか」


 そう言いながらアクシャはキーツの肩を叩くと、一歩後ろに下がった。


「ま、話は後で。お偉いさん達がお待ちだ」


 アクシャはナオヒト達に手を振ると、先に本部に歩いて行ってしまった。


「隊長、あの人は?」


 後ろから来たユウが聞くと、ナオヒトは首を横に振る。


「ついていけばわかるだろう。何か動きがありそうだ」


 キーツとケイツにナオヒト達五人はアクシャの後についてパイロフィストの本部に入っていく。そして、そのまま会議室に通されると、そこにはアテリイと団長のフォルブラン、そしてアライアルとレウスにストッフェルがいた。


「アクシャ殿、到着していたのか」


 アテリイが立ち上がって口を開くと、アクシャは帽子を取る。


「一足先に客人に会ってたんだよ。それ以外にも街の散策を少々ね」

「そうか、まあ来てくれたのだから構わない。団長、話を進めても構わないでしょうか」


 フォルブランが黙ってうなずくと、アテリイは先を続けた。


「予定ではあと十日ほどでナオヒト殿達の帰還の目途が立つ、だがアクシャ殿、こうしてここに来たということは、それに関して協力してもらえるということなのだろう?」

「まあね、実のところあんたらからだけじゃなくて、今回の件では別口からも情報があって、色々動いてたんだよ」


 帽子を指先で回しながらアクシャはアテリイの隣まで歩くと、それを机の上に投げてから両手の手袋を外してコートのポケットに突っ込む。


「事情はわかってるから、とりあえず全員座って話を聞いてくれるかな」


 その言葉に全員が椅子に座り、アクシャに注目する。


「まず、あたしの持ってる情報でそっちのお客さんの帰還は七日ほど早められるはずだ。もちろんそのためには同行する必要があるわけだけど」

「それなら問題はない。あなたには遠征部隊を率いて欲しいと考えているからだ」


 アテリイの言葉にアクシャは大げさに両手を上げて驚いたような仕草をした。


「それはまた思い切ったもんだね。それで、ほかにはどんな人選をしようって?」

「ここにいるアライアルとレウスの二人だ。後は技術者とストッフェル元団長に行ってもらう」

「なるほどねえ」


 つぶやいたアクシャはアライアルとレウスを順番に見て、口元に笑みを浮かべた。


「だいぶしごかれたらしいじゃないか。ま、あんたらなら大丈夫か」


 それからアクシャは空いている椅子に座る。


「さ、そこまで決まってるならあたしのことはいいから話を進めておくれ」

「では団長、お願いします」


 アテリイに話を振られたフォルブランは立ち上がり、ナオヒト達を見回して口を開く。


「もう十分体勢は整ったと言えるでしょう。皆さんが自分の世界に戻る準備も整いましたし、その最終的な準備にかかりたいと思います」


 その言葉にはナオヒトが立ち上がって返答をする。


「これまでの協力には本当に感謝しています、そしてこれからの協力にも。遭難者と言える我々には過分とも言えるものでした」

「いえ、ミュータルという新しい脅威に対応するために、あなた達の力と知識が大いに役に立ちました。ミュータルの正体が明らかにならない現状では、それは最上の価値を持つものです。そして、あなた達の世界への派遣は、そのミュータルのことをより知るためにはかかせないことでしょう、こちらよりも、そのミュータルの世界に近いはずですからね」

「なるほど」


 ナオヒトはそれだけしか言えなかったが、フォルブランは話を続ける。


「そういうことですから、何も気にすることはありません。後はそちらの世界であなた方の所属している傭兵団に受け入れてもらえれば問題はありません」

「それなら心配は無用です。我々の傭兵団は来るものは拒まないことで有名なので」

「そりゃあいいねえ、そうならあたしみたいな流れ者でも居心地は悪くなさそうだ」


 アクシャが笑うと、フォルブランも笑みを浮かべた。


「最前線で戦う傭兵団ならば、我々ともうまくやれるでしょう。国家からの横槍は望ましくありませんが、荒れ果てた大陸ということならば、すぐには心配ないですか」

「あなた達から頂いた力のことを考えればすぐに情報は伝わると思います。まあ、ミュータルが片づくまでは手は出させないと思いますし、そもそも、我々の世界には魔法技術はないですから、手を出したところで無駄なわけですが」

「そうですね、魔力の補給はできないと考えて、こちらから出来るだけマジックカートリッジを持っていく必要があるでしょう。その手配を急がないといけませんね」


 そう言ってフォルブランは立ち上がった。


「アテリイ、私はその件も含めて会議があるので後は頼みます」

「わかりました」


 フォルブランは部屋から出て行き、それを見送るとアテリイは口を開く。


「さて、補給の問題は団長に任せるとして、こちらは人選について話を進めよう。実働部隊の三人に、元団長、キーツとケイツにグラーレで七人はすでに決まっているから、残りは三名でいいんだな、ケイツ」

「うん、それくらい」

「まあ、後の三人は技術のほうで決めてもらうとして、問題はナオヒト殿達の機体の完成状況だ。まだ完全ではないのだろう?」

「今日のテストではいい結果が出たので、あとは調整で、三日もあれば戦闘にも投入できる手応えはありますね」

「なるほど、ナオヒト殿がそう言うのなら問題はないのだろう。アライアル、レウス、二人ともあと三日で仕上げるから覚悟しておけ」


 アライアルとレウスは同時にため息をつき、アクシャは笑みを浮かべる。


「そりゃ面白そうだ。見学させてもらおうかな」

「手伝ってくれても構わないが」

「そっちは遠慮しておくよ。客人達の様子も見ておきたいし」


 そう言うと、アクシャは立ち上がって手袋をつけ、帽子を手に取った。


「そういうわけだから、明日からの忙しさに備えて、ちょっと客人達と親交を深めてこようと思う。ケイツ、一緒に行こうか」

「わかった」


 ケイツも立ち上がり、それに一呼吸おいてナオヒトも立ち上がる。


「そういうことなら、お言葉に甘えましょう。我々はこの街を散策したこともあまりなかったですからね」

「だと思った。ほら行くよ」


 アクシャとケイツが部屋を出て行くと、ナオヒトは隊員達をうながしてそれについていった。


「賑やかでいいですね」


 ストッフェルは穏やかな笑顔で言葉を発した。それにはキーツが応える。


「アクシャさんはそういう人ですから。でも、あの人がいればミュータルもなんとかなると思えます」

「その通りですね。勇者の代行者というのも信じられます」


 アテリイもその会話に笑顔を浮かべると立ち上がった。


「そう、だから彼女と一緒に働く二人にはそれに見合うだけのものが必要です」

「わかった、わかってる。時間もないんだから、これからやろうじゃないか」


 アライアルが勢いよく立ち上がると、レウスも無言で立ちあがった。


「そうですね、まだ完成してませんから」

「二人ともよく言った。限界まで追い込むぞ。では後は頼みます」


 アテリイはストッフェルにそう言うと、アライアルとレウスと一緒に部屋から出て行った。最後に残った二人も、


「では、キーツ君、私の準備の手伝いをお願いできますか?」

「はい」


 ストッフェルと一緒にキーツも立ち上がり、会議室には誰もいなくなった。

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