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群狼部隊  作者: bunz0u
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違う世界

 一面の砂漠。そこでは全長十メートルはある人型のロボット五機が、さらにその倍はある巨大な昆虫のようなものと戦闘を繰り広げていた。


 前衛に盾を持った重装の一機。その後ろにはマシンガンを装備した機体と、レーザーを多数装備した機体。最も後方には巨大なライフルを装備した軽装の機体と、ミサイルポッドを多数装備した機体という構成だった。さらに、上空には円盤型の飛行機らしきものが滞空している。


 巨大昆虫が体の前方を持ち上げると、ミサイルポッドを搭載した機体以外が一斉に散開し、残ったその機体がミサイルを一斉に発射した。それは全弾巨大昆虫の頭部に命中して巨大な爆発を巻き起こす。


 その勢いに押されて巨大昆虫の体はのけぞり、散開したうちの一機が正面に戻って腹部にレーザーを斉射した。さらにライフルの音が響き、弾丸がそこを抉る。


 巨大昆虫はさらに大きくのけぞって動きを止め、その隙にロボット達は退却していく。だが、昆虫の背中の外骨格が弾け飛ぶと、中からは紫でネバネバした不定形のものが飛び出し、昆虫の体を引きずりながら地面を這ってロボット達を追い始める。


 それの勢いは凄まじく、すぐに距離が縮まっていくが、マシンガンを装備した機体が減速して振り返り、銃弾の雨を浴びせた。不定形のものは回避をせずダメージがあるかどうかもわからなかったが、それでも速度は落ちた。


 そこに盾を持った機体が斜めから突っ込み、盾を構えて激突すると、さらに右手に持った大型の銃を連射して不定形のものの進路を変えさせた。進路が変わったことでバランスも崩れ、不定形のものは勢いよく地面を抉って動きを止める。


 それ以上の攻撃はしかけずに、二機はその場をすぐに離れて先行する三機に合流して退却を続行した。


 十分後、追撃を振り切ったと判断した一行は動きを止め、周囲を警戒していた。


「こちらナオヒトだ。レイヴン、機体の状況に異常のある者がいたら報告しろ」

「こちらレイヴン。全機異常はありません、パイロットの状態も問題はなしです」

「よし、ミュータルのほうも問題はないな?」

「こちらでは確認できません。ただ、連中を完全に捕捉する手段はありませんからね」

「わかっている。さっきのも今まで見たことがないタイプだったしな」

「いや、待ってください! これは!?」


 慌てた声が響くと同時に、一瞬でロボット達が立っている地面が液状化した。突然のことに五機は離脱することができずに、ぬかるみに足を取られてしまう。


 それは蟻地獄のようにすり鉢状になると、ロボット達を底に引きずり込んでいく。


「レイヴン! 状況がわかるか!?」

「状……不明です! こ……らにも突然!」


 そこで通信は途絶え、同時にぬかるみの周囲が光に包まれて視界もなくなっていく。


「まずいな。だが、どうにもならんか」


 ナオヒトはそうつぶやくと、次に何が起こっても対応できるように気を落ち着けて体の力を抜いた。



 近くの町に向かって山道を歩いていた黒い杖を持った男、レウスは何かを感じて空を見上げた。空は曇っている程度で特に変わった様子は見えなかったが、レウスは異常を感じたようで声を張り上げる。


「気づきましたか」


 次の瞬間、レウスの数歩後ろに赤い鎧をまとい、背中に同じ色のバックパックを付けた一人の男が勢いよく着地していた。その男、アライアルはレウスの隣に立って空を見上げる。


「空からでも見た目は何もおかしいところはなかった。でも、妙な感覚は俺も感じたな。なんだと思う?」

「わかりませんね。初めて遭遇する事態が起こったということくらいしか」

「実際に見てみるのが一番だな、連絡だけはしておこう。こちらアライアル、ちょっと妙なことがあったから確認してくる。そっちは待機していてくれ」


 返事を聞かずにアライアルは通信を切り、手を一つ叩いた。


「よし、それじゃ行こうぜ。何が出てくるか楽しみだな」


 アライアルはそう言うと、体を包むように白く光るマントを発生させた。それから何もしていないレウスを見てため息をつく。


「レウス、お前も飛べよ。ちゃんとキーツから受け取ったものは持ってるんだろ」

「あまり好きじゃないんですけどね」


 レウスはそう言いながらベルトに手を触れると、レウスと同じようにマントを発生させ、ゆっくりと浮かび上がった。アライアルはそれを見てうなずくと、レウスとは対照的に一気に上昇していった。レウスもそれを追って上昇していき、アライアルに並ぶと、北の方角を見る。


「向こうから妙な感じがしますね」

「お前はまだ感じるのか。なら、先導を頼むぜ」


 アライアルの言葉にレウスはうなずき、先に動き出した。



 通信は回復せず、周囲の状況もわからなかったが、ナオヒトは軽い浮遊感を感じ、何か変化したのがわかった。


「さあ、何が起こる」


 ナオヒトはつぶやいて何が起きても対応できるように集中する。それからちょうど十秒後、周囲の光が消え、ナオヒトは自分の機体が空中にいるのを確認した。


「全員着地に備えろ!」


 回復した通信で呼びかけると同時に、ナオヒトは下が草原であることを確認した。それに驚くよりも先に着地体勢を整えると、多少の衝撃と共に地面を踏みしめる。


「全員状況を報告しろ!」

「こちらデレク、異常なし」

「カロンゾ! 問題ないぜ!」

「ユウです。損傷はありません」

「こちらセレン、隊長は大丈夫ですか?」

「こちらレイヴン、全機モニターできていますが、この状況は理解不能です」


 ナオヒトは全員が無事だと確認できて安堵したが、すぐに切り替えて周囲の状況の確認を始めた。そこは今までの砂漠とは全く違う緑豊かな草原で、明らかに全く違う場所だということだけはわかった。


「レイヴン、現在地を確認できるか」

「いえ、現在地は不明です」

「カロンゾ! 何を!?」


 ユウの焦った声が響き、ナオヒトがそっちに目を向けると、カロンゾの機体のハッチが開いているところだった。その中からはパイロットスーツ姿のカロンゾが姿を現し、ヘルメットを外していた。


「ああ、ほこりっぽくない空気は最高だっ!」


 ナオヒトはそれにため息をつく。そこにレイヴンからの通信が入った。


「隊長、現在地なのですが、どうもここは異星なのかもしれません」

「異星だと? 大気は、大丈夫そうだが、この様子だと生物もいそうだな」

「はい、生体レーダーに反応があります。もしかすると交渉がもてる相手の可能性も」

「話が通じる相手だといいがな。ここがどこでも現状では帰還できるかどうかもわからないのだから、厄介なことは増やしたくない。とりあえず周囲の状況をある程度モニターしたら降りてきてくれ」

「了解。いえ、待ってください。上空に奇妙な反応が」


 その通信にカロンゾはヘルメットを装着してコックピットに戻った。それを確認したナオヒトはマシンガンをチェックしてからそれを構える。


「全員散開して周囲を警戒しろ。ただし、ミュータル以外に対する発砲は禁止する」

「了解」


 各機はすぐに周囲に散開していき、ナオヒトの機体を中心とするフォーメーションが出来上がった。それからちょうど三十秒後、空中からの衝撃波が五機を揺るがし、レイヴンからの警告が全機に入る。


「上空二千メートル、ミュータルの反応が現れました。追ってきたようです」

「あいつか。カロンゾとユウはできるだけ距離をとれ、セレンとデレクは距離をとらずに攪乱だ。正面は私がやる」


 指示を受けた四機はすぐにその通りに動き、一機でその場に残ったナオヒトは姿勢を低くして上空に意識を集中した。


 最初は黒い染みのようにしか見えなかったが、それはどんどん大きくなっていき、一度上空百メートルほどで停止した。そして、不定形のものは一気に収縮し、巨大な甲虫の姿となって地面に降り立つ。


「……一回り大きくなったな」


 ナオヒトはつぶやいてトリガーに指をかけた。そして、甲虫が前足を動かした瞬間、そこに向けて銃弾を放った。それは地面を削り甲虫のバランスを崩させる。


「駄目か、硬すぎる」


 甲虫の背の羽が開くと、そこから紫の触手のようなものが伸びてきた。ナオヒトはそれを大きく横に跳んで回避すると同時に通信を開く。


「まずはセレン! 次がカロンゾだ!」


 直後、側面からレーザーが斉射され、さらに上空からミサイルが降り注いだ。だが、その中から甲虫が飛び出し、ナオヒトの機体を飛び越えていくと、そのまま滑空してカロンゾの機体に一直線に向かう。


 そこにユウのライフルから放たれた弾丸が頭部に直撃するが、軌道はわずかしか変わらず、カロンゾが回避行動をとってやっとぎりぎりかわせる程度でしかなかった。


「まずいぜ隊長! こいつ速くなってる!」

「それに重いです」


 カロンゾとユウから焦りを感じさせる通信が入り、一瞬悩んだが、ナオヒトはすぐにブースターを起動した。


「続けデレク!」


 ナオヒトの機体は勢いよく跳び、方向転換中の甲虫の上をとると、肩のロケットポッドからありったけの弾を浴びせた。さらに、同じようにブースターに点火をしたデレクの機体が側面から迫る。


「貫く」


 デレクは銃と盾を捨てると、背中にある太い杭が装着された銃のようなものを手に取る。そして跳躍すると、甲虫の頭と胴体の継ぎ目に向かって、杭を突きつけると引金を引く。射出された太い杭は深々と突き刺さった。


 甲虫は一瞬体を痙攣させるが、すぐに体をその場で勢いよく回転させてデレクの機体を弾き飛ばした。


「くそっ!」


 ナオヒトはすぐにその上をとろうとするが、それは甲虫の背中から飛び出した紫色の触手で弾かれてしまう。それから甲虫は垂直に飛ぶと、紫の触手を五機全てに伸ばす。


 しかし、その攻撃は上空からの赤い閃光によって甲虫が地面に叩きつけられたことによって遮られた。


 その赤い閃光、アライアルは、地面に半分以上めり込んだ甲虫の上で周囲を見回し、足元の甲虫以外にも見たことがないものがいるのを見ると、両手を広げて大声を上げた。


「まったく、面白いことになってるじゃないかよ!」

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