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キミをこの剣で…~新選組~  作者: 三日月
8/45

八章 企

釣りを始めて数時間だろうか

太陽が真上まで来ていた。




『沢山釣れましたね?』

『でしょう?此処は僕のお気に入りの場所なんだ』

『鮎ばかりだがな』

『いいじゃないですか?鮎の塩焼き』

『俺は甘露煮の方が好きだが』

『甘露煮は落ち鮎じゃないの?』

『関係ないと思いますよ?』



沖田さんと土方さんが鮎について

語り合っている。

まぁ、そんな他愛もない話をしていると

後ろから誰かやってきた。

因みに最後の台詞はあたし。




『総ちゃん?あなたまた釣りなの?』





総ちゃん?

ちらりと沖田さんを見ると

口を”いーっ”とやっていた。

竿は手から離れ落としている。





『これはこれは、総司の姉上。お元気そうで』

『土方さんもお元気そうで何よりです

総ちゃん、ご迷惑をおかけしていないでしょうか?』

『全然。毎日新選組の為頑張ってくれています』

『そうですか。あら?此方の方は?』

『新人の篠山です。今は総司の世話役なんです』

『あ、今日和。初めまして篠山といいます』

『女の子みたいね?』






…痛いところをつかれてしまった…。

流石に女です。なんて謂えない…。





『よく謂われるんです。こいつ』

『あら…ふふ…。可愛いものね』

『あはは…』

『はぁー。それじゃ姉さんが来た訳だし、沢山釣ったし戻りますか』

『やっと口を利いたわね?』

『さー!”篠山君”も行くよー?』

『あ!待って下さい!沖田さんっ!』






こうして

あたし達は屯所へと戻った。




『智香ちゃん…』






部屋の片付けをしてるいと沖田さんが

やってきた。

何だかどこか沈んだ様子に見える。





『沖田さん…どうしたんですか?』

『…うん…実は姉さん、泊まるらしいんだ…』

『いいじゃないですか?長旅だったって訊いてますし?』

『今までも確かに泊まってたけどさぁ〜』

『何か問題でもあるんですか?』

『僕、君の部屋で寝るようにって…』






な、なんですとぉぉぉぉぉぉっ!





『なんで…なんであたしの部屋なんですかっ!』

『土方さんが智香ちゃんを紹介するとき世話役って謂ってたからだよ』

『もしかして…?』

『そう』

『土方さんと近藤さんは何て?』

『しどろもどろしながら…そうしろって』

『そ…そうですか…』

『そうなんです…』






二人して溜め息をついていると

近藤さんがあたし達を呼ぶ声がした。





『行きましょう』

『そうだね…』





近藤さんは大抵広間か自分の部屋に居る。

広間に居なければ部屋へ行こう。

そう思っていたら近藤さんの方から

ひょっこり現れた。




あたし達三人は中庭へ移動。

相変わらず移動ばかりしている。






『すまんな…智香君…一晩だけ総司を

君の部屋に泊めてやってくれ…』

『沖田さんの部屋は?』

『総司の姉上が使うんだ。いつもは空いている部屋を使ってたんだが…昨日で部屋が埋まってしまってなぁ…』






そうだ。

入隊する人達が思っていたより

沢山いたんだ。あたしはその事を思い出す。





『俺とトシの部屋狭くてなぁ…』

『原田君は鼾があれだし、平助は一人が好きだし、斉藤君は遅くまで起きているし』






仕切りを用意してくれると近藤さんは

謂ってくれたけど…沖田さん…何だか可哀想…。





『別に一緒に寝て貰っても構わんがな?』

『『寝ませんっ!』』





この時、あの謎の剣士が沖田さんの回復を

今か今かと待ち受けていた。

あの日顔はよく見なかったけど、もし…小瓶を落とした者なのか?



浪士のふりをしていた…なんて…ないよね?もし、そうだとしとら…ワザと?

まさか…。






ー池田屋ー





『いらっしゃい!松尾の旦那、久し振りですね』

『どうも。今日は一人じゃないんだ

この後、もう一人来る。奥、良いかな?』

『どうぞ』





少し遅れで謎の剣士が池田屋へと

やってきた。





『此処か…ん?あの奥の部屋だな?』






中へ入ると池田屋の主人が松尾が居る部屋へと案内をした。

剣士何の興味も無いのか、ただ部屋を目指す。






『此方になります』

『ご苦労』





襖を開けると松尾が酒を片手に剣士を出迎えた。彼は睨む様な目で松尾を見る。







『まぁまぁ、そう怒りなさるな。座りなさい』






そう謂われると松尾の向かいへ

腰をおろす。






『ふぅ…。沖田はどうだった?』

『毒に遣られていた』

『そうか。勿論とどめを?』

『弱った奴を斬るほど卑怯者でないのでね。奴の回復を待っている』

『そんな!』

『いいではないか?目的はあの小娘と小瓶だろう?』

『まぁ…な。だが、沖田ももしかしたら

あの瓶を落とした奴を知っている可能性もあるからな。必ず消してくれ。うちの者だとバレたら大変な事になる』

『高いぞ?』

『金ならいくらでも出す』

『ふん…。話はそれだけか?』

『ああ』

『なら俺は帰る。あんたはどうする?』

『今日は泊まる』

『そうか…』






そう謂うと剣士は池田屋を後にした。






ー新選組 屯所ー






『あーあ』

『どうしたんだよ?』

『べーつーにー?』





平助君と沖田さんの会話が耳に入った

原田さんがあたしの所へやってきた。

話ながら手伝ってくれる。




『なぁ、智香ちゃん?』

『はい?』

『総司、どうしたんだ?』

『沖田さんですか?』

『昼からずっとあんな感じなんだ。何か知ってるか?』

『……さぁ…』

『そっかぁ…まぁ、お姉さんが泊まりな訳だし気が滅入ってるのかもな?』

『そんな…悪く謂ったら罰が当たりますよ?』

『そうだな?…けど、久し振りだけど

総司の姉さん、綺麗だよな?』

『憧れますね』

『君も憧れがあるんだな?』

『はい。あぁっ!原田さん!お鍋!』

『ああぁっ!』






話に夢中になっていたあたしと原田さんは

鍋が噴いている事に気が付かなかった…。

煮物は大丈夫だ。取り敢えず良かった。






『さっきの叫び声、どぉしたの?』

『あ、沖田さん。いえ大丈夫ですよ』

『ふ〜ん。僕、まだ此処に居なきゃ駄目?』

『駄目です』

『諦めろ総司』

『だって暑いじゃない?此処』

『あたしだって暑いです!』

『はぁ…夏だけは冷たいお茶、飲みたいよねぇ〜。冬は冷たい水が飲めるけど寒いし…けど温かいお茶、飲めるんだよねぇ〜』

『そこに居るなら手伝って下さい』

『戻りまぁす』

『原田さんも休んでいて下さい。後は一人で出来ますから』

『そんな。手伝うよ二人の方が早いだろう?』







確かに此処は沢山居る。

けど、本当に良いのかな?手伝って貰って?なんて思ってしまう自分。

夕飯はそれぞれ時間が決まっている。


組隊長は最後。

此だけで判るかな?





『智香ちゃん?』

『はい?』

『僕もやっぱり手伝うよ』

『ありがとうございます。お二方に感謝します!』

『うん』

『いいな。その笑顔』






沖田さんと原田さんからの言葉。

ほんの少しだけど…彼らの笑顔がとても

嬉しいから…頑張れる…。




あたしも自身の事も沖田さんの事も

護れる強さが欲しい…。



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