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キミをこの剣で…~新選組~  作者: 三日月
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七章 姉

沖田さんが毒状態となってから

15日が経った。




『近藤さん!沖田さん見ませんでしたか?!』

『やぁ、智香君。総司ならトシの部屋に居るぞ?』

『土方さんの部屋?』

『屯所を抜けて剣の練習をしようと

してたらしくてな』

『…あ…はは…』

『斉藤君も一緒だ』

『斉藤さん…とばっちりですね…』

『彼は大丈夫だ。しっかりしているからな』

『そうですね。ありがとうございます』

『どう致しまして』





近藤さんはそういうと

持っている木刀を振り上げた。

体が鈍らない様にしているのだ!

あたしは土方さんの部屋を目指して

走った。新選組の屯所は広く見えて

実は狭い!けどあたしは走る!





『此処だ。失礼します…』





障子を開けると

土方さん、沖田さん、斉藤さんが

胡座をかいていた。





『どうした?』

『えと…沖田さん宛てに手紙が届いたんです』

『僕に?』

『”姉より”と…』

『姉さんから?』

『……………』

『……………』

『どうしたんですか?二人して?』

『いや…』

『別に…』

『僕の姉さん、恐い人だから』

『副長も苦手な相手だ』

『そ…そう何ですか…』




沖田さんは手紙を開き内容を

確かめる。みるみる表情が暗くなる。





『何てあるんだ?総司?』

『…どーぞ。詠んでみて下さい…』

『ふぅ…………何?!』

『あのぉ…』

『姉さん、此処に来るって』

『何と…』





何故か沖田さんまでもが

溜め息をつく。ふらりと立ち上がる沖田さん。





『近藤さんに伝えて来ます…』

『ああ…』

『あたし、付き添います』

『ありがとう』






近藤さんの所へ行く間

沖田さんはずっと腕を組んでいた。

”あ〜…”とか”はぁー…”とか溜め息。

そんなに恐いお姉さんなのかな?


プライベートな事だから無闇き訊けないし。

近藤さんはまだ木刀を握っている。






『ふんぬっ!』

『近藤さーん!姉さんが来るってぇ!』

『ふん…はあぁぁぁっ?!何だ急に…』

『知りませんよ。姉さんから文が届いたと思ったら、そんな事書かれていたんですから』





沖田さんは両手をお手上げ状態にしなから近藤さんへ説明をする。






『様子を見にか…』

『今までは抜き打ちで来ていたのに…』

『…よし!今から屯所を片付けるぞ!』

『それならさっき…沖田さんの所へ行く前に終わりました』

『そ、そうか…智香君はマメだからな…』

『僕、釣りに行ってきまぁす』






そう謂うと沖田さんは両手を頭にやると

くるりとUターン。

良いんですか!沖田さん!!

お姉さんが来るのに釣りって!


ん?もしかしたら…お姉さんの為の?






『逃げたな…総司…』






逃げたのかいッ!





『あの…釣りって…何処へ?』

『ああっ!総司!戻れ!』






近藤さんは走り出し沖田さんを

追いかけた。





『いつもこんな感じだったのかな?』

(十分騒がしいと思いますが…)





とりあえず、あたしも沖田さんを

追うことにした。

近藤さんは木刀が邪魔をしているせいか

走りずらそうだ。真剣と重さも違うから?






『土方さんが来ましたよぉーっ!』

『そんな手には乗りませんー』

『もうっ!』






早歩きをしていた沖田さん。

疲れたのか立ち止まる。





『沖田さん…?』

『ふぅ…土方さん付きの釣りならいい?』

『…多分…』

『はぁはぁ…そうだなぁ?トシが付いているなら許可しよう』

『それじゃ、土方さんに謂ってきます』

『智香君も頼んでやってくれ』

『はい!』







何だろう。嬉しい。

久し振りに沖田さんと外へ出られる。

あたしは沖田さんの大きな背中を

見ながら後ろを歩く。






『智香ちゃんさ?』

『はい?』

『いつも僕の近くに必ず居るよね?なんで?』

『……なんでと謂われても』

(土方さんからキツく”見張れ!”と

謂われてるからなんて…謂えない…よね…)

『…?』

『心配だから…です…』

『本当に?』

『本当です!』

『へぇ〜?』






沖田さんはあたしを疑いの目で見る。判りやすい?!

まさか、そんなこと無いよね…。





『早く土方さんの許可、貰わないと

日が暮れちゃいますよ?』

『はいはい。判りました』




土方さんの部屋前まで来ると山南さんが

障子を閉めているところだった。

あたし達に気が付くと、いつもの笑みを

浮かべた。





『土方君にご用ですか?』

『はい。ちょっと付き添って貰おうかなぁ?って』

『それはそれは。今、少し機嫌が悪いようてすので気をつけて下さいね?沖田君』

『はぁい』

『では、失礼』






山南さんてとても綺麗な言葉使いだよね…。身なりも綺麗だし…。

未来で謂うとスーツをバシッと決めてる感じ。





『土方さぁん?失礼しまーす』

『し、失礼します…』

『なんだ?二人して?』

『あ、あの…』

『近藤さんが土方さんが一緒なら釣りに行ってもいいって謂うんで…お願い…』

『されん』

(早っ!)

『早いなぁ〜?良いじゃないですかぁ?』

『駄目だ。お前、まだ毒が抜けきっていないんだぞ?』

『じゃー庭の鯉でも釣りますよ?』

『近藤さんのだぞ?』

『うっ…』

『諦めろ』

『土方さん…あたしからもお願いします…沖田さん…ずっと屯所の中ですし…

身体の調子が悪い訳でもありませんし…』

『はぁ…判ったよ。ったく、お前に頼まれると嫌とは謂えねぇな?』

『ありがとうございます!』

『あれれー?』

『支度をする。少し待っていろ』






あたし達は土方さんの謂うとおり

部屋の前で待った。沖田さんの釣り具は

通りかかった平助君に頼み、持ってきて貰った。





『智香も行くの?』

『はい』

『本当、総司にべったりだよな?』

『どういう意味です?』





あたしは意地悪く睨みをきかせてみた。

すると平助君は謝りながら広間へと

逃げて行った。






『僕にべったり?』

『沖田さんッ!』

『くっつき虫』

『もうッ!』





いちいち意地悪な人だ。

あたしがふてくされていると

中から土方さんが部屋から出て来た。





『総司にべったりかぁ…』

『んがッ!』

『ぷっ!』

『中まで丸聞こえなんだよ』

『ふんっ!』

『いじけていないで行くぞ』

『はぁい!』

『ふんっ!』

『ふ…ほら、荷物重たいぞ?』






土方さんが荷物をあたしから取る。

優しい表情だ…。沖田さんは目を丸くしていたけど、彼はたまに微笑む時がある。

鬼の副長と謂われてるからか、あまり出さない表情だ。



荷物を持って貰うとあたしは

風呂敷に入った手拭いだけになった。

川に着くと土方さんと沖田さんは餌を付け始めた。





『餌って何ですか?』

『見せない方が良いんじゃない?』

『あ?ああ。こいつだ』





土方さんが針に通された餌というものを

目の前に出した。

虫…。





『きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』






土方さんと沖田さんは耳を塞ぐ。

沖田さんは口を少し尖らせ目は空を見るように。

土方さんはあたしの悲鳴に驚いたらしく

本当に驚いた顔をしていた。






『むむむ!虫じゃないですかっ!』

『だから見せない方が良いって謂ったんですよ』

『女だったんだよな…はぁ…すまん…

いつもの調子で…』

『魚逃げたら土方さんのせいですからねぇ?』

『付き添ってやってる俺に謂えるのか?』

『あっ!かかった!』

『ったく…お前は…』





その頃、沖田さんのお姉さんが新選組の

屯所近くまでやってきていた。

そして、沖田さんを見張る黒い影。




ずっと楽しい時間だけが

続けばいいのに…。


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