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キミをこの剣で…~新選組~  作者: 三日月
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六章 剣士と沖田

翌朝。


沖田さんはまだ高熱にうなされていた。

額に汗が滲む。

山南さんが謂うには剣に毒でも塗っていたのではないか…。




『保冷剤でもあれば動脈を冷やせるのに…』




あたしは未来から来た時

一緒に持っていたバックを手に取り

何か無いかと探し出す。暫く漁っていると沖田さんが目を覚ます。





『…何…してるの…?』





弱々しい声が後ろから聞こえる。

振り向くと沖田さんは此方を向いていた。

辛そうだ…。バックの中を探すのを

止めようとした時、何かあたしの手に触れた。





『あ…』

『…どうしたの?』

『ロキソニン…あった!解熱鎮痛剤!』

『…え?』

『此、飲んでください』

『それ…なぁに…?』

『薬です。あ…飲む前に何か食べないと…』

『うん。…お腹、空いた』

『今、オニギリを作ってきますね』

『うん』





あたしは沖田さんの部屋を出ると

台所へ急ぐ。早く薬を飲んで良くなって

欲しいから。丁度朝食の途中だったので

土方さんにオニギリを握って貰った。





『少しは食欲があるみたいだな?』

『はい…でも、辛そうです…』

『お前が看病してるんだ。良くなるだろうよ?』

『ふふ』





あたしは土方さんへお礼を謂うと今来た

廊下を戻る。

その時、近藤さんと山崎さんが松本という医者を連れて帰って来た。あたし達は沖田さんの部屋へ向かう。




そして、診察が、始まる。






『先生…総司は大丈夫なんでしょうか?』

『…幸いに毒は弱い物でしょうな』

『熱の方は…?』

『まぁ、毒のせいだがこの毒消しの

薬とあまり効かんかもしれんが、熱冷ましを出しておこう』

『有り難う御座います!先生!』

『ところで、此方の方は?』

『お、お、お手伝いの篠山と謂います!』

『そうかい。君の話は新選組へ来る度

訊くよ。君も暑さや毒には気をつけなさい』

『…はい』




そう謂うと松本医師は屯所を後にした。

沖田さんは食事を、終えると自分の事を情けない。とボヤいた。



『情けなくないですよ』

『そう?』

『はい。こういう時代ですし…それに

インフルエンザじゃないだけいいじゃないですか?』

『何?そのいんふるえんざって?』

『感染症の病気です。型がA型B型って

あるんですけど…確かA型は物凄い高熱が出て頭が痛かったり、関節の節々が痛くなったり』

『もう一つは?』

『B型はA型より辛くないです。人によりますが』

『それって通年なの?』

『いえ。冬と春ですね』

『今夏だよ?全然大丈夫じゃん』

『夏はプール熱とか後O-157?あれ?』

『兎に角あるはあるんだね?』

『はい』





何だろう…弱っている沖田さんを

見ていると変な感じになる…。

変…気にしている…。

彼のことが好きなのかな?

いやいやいや!意地悪ですよ!彼は!



だけど…優しいところだってある。






『沖田さん…』

『うん?』

『大人しく寝ていてくださいね?』

『うん…』

『あ…』




急に殺気を感じたあたしは

後ろを振り向いた。



そこには綺麗な身なりをした

剣士が一人。

青い眼で此方を見ている。





『ぅ…彼女に何か…?』

『沖田さん!』

『大丈夫。さっきよりは良いから』

『新選組一番組組長沖田総司ともあろう者が浪士の剣の毒にやられたか…?』

『ふん。…ちょっと油断しちゃってね?』





沖田さんは起き上がる。

少しよろついている。





『駄目です!沖田さんっ!誰かぁっ!誰か来てくださいっ!!!』

『智香ちゃん…僕は大丈夫たから』

『駄目ですっ!』





ドスッ!






『うっ!』

『沖田さんっ!?』





剣士は沖田さんの首へ一撃すると

彼は膝をつきながら倒れ込む。

見下ろす様に剣士は呟いた。





『張り合えぬ者とはつまらぬ。お前が

動けるようになった時…この女を

さらいに来るとしよう…それまで女、待っていろ』

『………』





そう謂い残す剣を仕舞い立ち去った。

すれ違う様に土方

さんと平助君がやってきた。





『なんなんださっきの奴は?!』

『あっ!おい!総司っ大丈夫かよ!』





あたしは呆然と気絶している

沖田さんを抱き寄せているだけで

暫く説明も何も出来ないでいた。

広間に沖田さんを除く皆が集められた。





『総司を看病していたら急に現れた。か…』

『剣の腕も良いのかと…』




土方さんと斉藤さんが言葉を交わす。



あの青い眼を思い出す。

背筋も凍る様な冷たい視線。





『もしかしたら…』

『ん?』




あたしが疑問に思っていた事を口にする。





『もしかしたら…あの日あの浪士達を束ねていた人が謂っていた…』

『……可能性はなくは無い…か』

『なぁ?土方さん?どうせ今の総司は

あんななんだし、暫くは来ない…んじゃ?』



土方さんがあたしの言葉に同意すると

平助君が意見を述べた。すると…。



『平助…考えが甘いな…?』

『だから青二才なんだよお前は』





土方に引き続き原田さんも謂う。






『ひっでぇーっ!なんだよ青二才ってぇー!』

『そのまんまじゃねぇか?』

『土方さんまで…』






大丈夫だろうか…?






『あたし…沖田さんの容体見てきます…』

『なら…俺も見に行くかぁ』

『頼んだぞ原田』

『はーい』


『土方さん…』

『なんだ?平助?』

『本当にあいつに任せていいのか?』


永倉が右親指で二人が出た方を指す。



『…は?』

『ま…!智香の事たべなきゃ良いけど?』



平助は土方へ助け船をだした。

その言葉に気づいた土方は立ち上がり

智香と原田の方へ駆け寄った。



『……原田…やっぱり俺が付き添う』

『えっ?!俺…信用ないなぁ…』

『……どうしました?』

『いや、行くぞ智香』

『あ…はぁ…』




原田さんは何故か肩を落としていた。


あたしは土方さんの隣りを

歩く。いつも真剣の土方さん…。

沖田さんの容体を見に行くだけでも

隙がない。




じっと見ていると

あたしに気づき顔を赤らめた。

少し顔を逸らすと”じろじろ見るな”と

恥ずかしそうに謂った。






『妹ですから!ね?お兄ちゃん?』

『お前…この俺に喧嘩売ってんのか?』

『ま…まさか!御座いません!御座いません!』





沖田さんの部屋へ着いた。





『あ…沖田さん大丈夫ですか…?』

『うん。大丈夫だよ?』

『顔色も良いな?だが昨日で今日だ。毒が抜けるまで安静にしていろ』

『全く過保護なんだから…土方さんは』

『心配してくれているんですよ?』

『勿論、判ってます』

『あまり智香に心配かけるなよ?総司?』

『え?』

『屯所の中が暗くなる』

『えぇーーー?』






あたし?

何で?…もしかして…それだけ一人で

騒がしい??





『あ…あのぉ…』

『なんだ?』

『あたし…そんなに騒がしいですか…?』

『え?』

『はぁ?』

『え?!』

『あっはははは…!』

『お前…何勘違いしているんだ?』

『え?!え?!』

『くっくっくっ…あっはははははっ!

やっぱり智香ちゃん面白いっ!』

『笑いすぎだぞ総司?』

『だって…だって…ぶはっ!』





そこへ山南さんがやってきて

何をそんなに笑っているのか訊いてきた。

笑って説明出来ない沖田さんの代わりに

土方さんが山南さんへ謂う。






『一人で騒がしいとは…ふふ…

自覚があって良かったじゃないですか?』

『あっははははは…自覚とか…山南さん…あっはははははっ!』

『山南さん…あんたまで…』

『二人とも意地悪ですよ!』

『意地悪ですよ』





ニコリとしながら山南さん…。

酷いです…あたし…一体…。





『お腹…痛…い…くっくっくっ…!』

『この屯所に笑いが沢山になるとは…以前までは思いもしませんでした』

『確かに。明るくなったな?』

『そういう意味では智香さんに感謝しています』






『感謝…』






初めて謂われた言葉だった。









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