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キミをこの剣で…~新選組~  作者: 三日月
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四章 護

新選組の屯所近くの茂みの中で

三人の浪士達が此方の様子を

伺っていた…。






『ふぅ…外に居ますね…』

『やっぱりか…』


『山南さんと土方さんは此処に居て下さい。僕と一君で見て来ます』

『…頼んだ』

『御意』






二人は立ち上がると広間を出た。

…大丈夫だよね。二人強いから…。






『智香さん?』

『は、はい?』

『貴女の事は私と土方君でお守りします』

『絶対外へ出るな』

『はい』


『近藤さん…思ったんだが

こいつが見た浪士の顔絵に描いてみないか?』

『おお!そうだな。智香ちゃん、見た浪士の顔を覚えているかい?』

『余り自信が有りませんけど…』

『よし』

『では、後で私の部屋へ来て下さい』

『はい!』






ヒュンッ!


キィィィィンッ!





『ぐはっ…!』

『弱いなぁ〜片腕でも斬れちゃうよ』

『総司…』

『三人だけじゃなかったみたいだね?』






斉藤と沖田は背を合わせる。

二人は剣を構えた姿勢だ。






『やるな。さすが新選組の沖田と斉藤だな?』

『あんたがこいつらの親玉?』






沖田は横目で大将を見る。

斉藤もまた沖田同様横目で大将の姿を

確認する。






『小娘が拾った瓶を渡して貰おうか?』

『あれー?自己紹介は無いんだ?』

『あの小瓶なら此処にはない』


『それはそれは』

『隊長!やはりあいつは此処へ来たようです。此があの茂みの中に』





一人の剣士が大将へ黒い布切れを渡した。

それを受け取る大将。






『やはり此処にあるらしいな?』

『今は此処に無いって、一君が謂ったよね?』

『挑発にのるな総司…』

『はいはい。判りました』

『渡さないなら力付くだ!かかれっ!』





大将が命令をかけると浪士達が束になって

攻めていた。沖田と斉藤は一瞬で数人を

倒す。沖田の後ろで倒れていた浪士が

フラリと立ち上がり剣を振り上げる。





『己!沖田ぁぁぁっ!』

『っ?!』





振り向く沖田を目掛け剣で斬りにかかる。






ヒュッ!





それを斉藤が助けた。

浪士は崩れる様にその場に倒れた。




『助かったよ一君、有り難う…ふんっっ!』





キィィィィンッ!





『人数が多い…副長を呼ぶか?!』

『大丈夫でしょ?一君、強いしさっ!』


『うっ…!』





剣がキラリと光る。

沖田と斉藤は斬った浪士達の血が

服や顔を撫でる。





『匂うね…はぁ…はぁ…』

『はぁ…はぁ…』

『大将さん…僕、こう見えて気が短いんだよね?いい加減にしないともっと本気出しちゃうよ?』

『ほう。俺とやり合うのか?』

『毎日一君と手合わせしてるから、あんたなんか直ぐ倒せると思うんだよね?』


『俺を挑発してるのか?』

『…ふふ』

『総司がやらなくてもあんたは

もう終わりの様だ』

『何?』




後ろを見る大将。気がつくのが遅かった。だが、体を出来るだけ逸らしたか

背後から襲ってきた山南敬助に腕を斬られてしまった。





ヒュッ!





『だあぁぁぁぁっ!!』




『申し訳ありません。忸怩しくじってしまいました…』

『いいじゃないですか?剣を持つ者に

とって大切な腕を使えなくしたんですから…はぁ…』



沖田が両手を挙げると背を伸ばす姿勢をとった。

斉藤は沖田を横目で見たのち山南へ向きを正す。





『山南さん、有り難う御座います』

『いいえ。遅くなってしまいました…』

『中は大丈夫でした?』




少しばかり気にしていたのか沖田は山南へ問う。

その応えに山南は顔をしかめた。




『それが数人、あの後入ってきてしまいまして…安心して下さい。倒しましたから…』


『土方さんは?』

『智香さんの手当てをしています』


『何故…?』

『怪我をしたって事?』



斉藤と沖田は目を丸くして驚いた。

何故智香が怪我を…。

山南は沖田の"何故"という言葉に俯き溜息をもらす。




『相手が投げた手裏剣が運悪く

彼女の腕に命中してしまったんです…』






それを訊いた沖田と斉藤は広間へ急いだ。

襖を開けるとぐったりとしている智香がいた。

土方はその横で難しい表情をしている。

それを見た沖田が土方へ何が遇ったのか訊いた。





『一体何があったんです?』

『副長、山南さんから訊きました…』



土方へ訊くと斉藤が割って入ってきた。

まるで彼を庇うかのような仕草だ…。




『そうか…お前達が行った後に五人屋敷へ入ってきてな…こいつを庇う様に戦ったんだが…』


『……ぅ…』

『智香、大丈夫か?』




土方は智香の怪我具合を気にしている。

目は心配そうに彼女を見る。




『…はい…すみません…土方さん…』

『謝るな。お前は悪くない』


『でも…土方さん』

『今晩は俺が責任を持ってお前を護衛する』


『それじゃ僕は?』

『悪かった…お前は今日休め』

『判りました』

『そっちはどうだった?』



土方は山南へ訊いた。




『私が主の隙を見て腕を使えなくしました』


『敵は沢山居ましたけどね』



沖田はやれやれとした素振りをした。

確かに人数は居た。



『ただ…前に来た奴がこの黒い布切れを。

目印として茂みの中にあったそうです』





土方さんは難しい顔をしながら

斉藤さんから布切れを受け取る。

あたしはそのやり取りをじっと見ていた。


そして就寝の時


土方さんはあたしが使っている部屋の

外で見張る。ずっと立っているので

声をかけてみた。





『土方さん…』

『どうした?傷、痛むのか?』

『平気です。何故、座らないんですか?』

『敵が来たら直ぐに動けるからな?』





さすが土方さん…やっぱり副隊長とだけはある。沖田さんは座って護衛をしてくれる。脚は広げているみたいだったけど…。


直ぐに立てる様に?かな?






『あの…自分を責めないで下さい…』

『ああ…』

(こいつ…案外優しいんだな…妹が出来たみたいだ)

『…………』

(眠ったか…)





土方は夜空の月へ目をやった。

この暗い夜を照らす月。闇に潜み活動する

浪士達は出来るだけ林の中や茂みを好む。

見つかってしまっては

任務を遂行出来ないからだ。




『トシ…』

『近藤さん…』

『智香ちゃんの具合はどうだ?』

『毒でやられた熱はひいたよ』

『すまない…一緒に居ながら押し付けてしまって…』

『いいんだよ。俺はあんたの命令は絶対だと思ってる』

『すまん!トシ!』

『だから頭を上げてくれ』




『あれ〜?近藤さんまで護衛ですか?』

『総司…お前今日は…』

『落ち着かないんですよ』



土方が確認で訊くが彼は近藤の隣へ座る。





『今日の月はやけに明るいですね…』

『そうだなぁ…』



沖田がポツリ呟くと近藤も月を見て同意見だった。月の周りに淡い光がかかっている。

土方も月を見ながら二人へ言葉を発した。




『明日、襲って来た奴の情報を調べたいのだが…』

『そうですね、調べてみましょう』

『うん。今は手掛かりが少ないからな』




沖田と近藤もまた賛成する。

情報を集め突き止めなければならない。

月を見ていた土方は足元へ視線を落とした。


『それじゃ明日の巡察の時にでも

調べるか』

『はーい』

『お前は残れ。明日は俺と原田で回る』

『え?』

『お前が護ってきた女を傷つけてしまったからな』

『…土方さん…何か勘違いしてません?』

『勘違い?』

『僕は彼女を連れてきた張本人だから

護衛してるまでなんですけど?』



近藤が二人の会話に入ってくる。

沖田はあの時の事を指摘されてしまう。




『では何故平助を殴った?』

『うぐ…それは彼女の気持ちを考えない

平助に頭にきたんです!』

『ムキになるところが怪しいなぁ〜』


『近藤さんの謂う通りだ』

『あーのど乾いた…水でも飲んできまーす』




ふてくされた沖田は台所へ行ってしまった。

今晩は昨日より涼しい。

どことなく夏の終わりを感じさせる夜風だ。残された二人は夜風と月を満喫する。

土方は明日朝の巡察の予定を考える。


いつもなら目を光らせ怪しい奴が居ないか

見回るだけだが、今回は似顔絵を使って

”小瓶を落とした男”を捜す。



月を見ていた土方が異変に気づいた。



『…っ!近藤さん…』

『何人だ?六人は居るな?』





キイィィィィンッ!




『…?総司か?』

『行ってくる。トシは此処を頼む!』

『判った』





そう謂うと近藤は沖田が居る場所へ急いだ。



近藤が沖田の所へ行くと土方の所に

一人やってきた。






『そこを退け』

『そう謂われて俺が退くと思うか?』

『そうくると思ったよ…覚悟!』






刀を抜いた浪士が土方目掛け刀を向けてきた。

彼もまた刀を鞘から引き抜くき構えた。





剣と剣が交差する。

とたん火花が散る。

その騒ぎで目を覚ます智香。

出たらいけない。自分が外へ出たら

戦っている土方に申し訳ない。





『土方さん…』





あたしは膝を抱きしめ顔を埋めた。

そうする事しか出来ない。

もどかしい…。






『少しは出来るみたいだな?』

『あいつらと一緒にしないで貰いたいね?隊長がやられたのは計算外だったよ土方さんよぉ!』





ヒュンッ!

キイィィィィッン!






『悪いが俺達は強いぞ?』

『そうかよ?隊長が戦えないのに随分と

強気じゃないか!』

『代わりは居るんだよ腕の立つ剣士がっ!くっ!』

『何?』






ヒュッ…。






その瞬間土方の刀が浪士の目の前で止まる。

月明かりで怪しく光る…。







『誰と謂う奴だ?吐け!』

『そのうち此処に来る…はははははっ!』

『ちっ!』





土方は相手を瀕死状態まで

追い込んだ。





『近藤さん…土方さんの所も来たみたいですね?』

『ああ。だがトシが勝ったらしいな』

『鬼の副隊長ですからね』

『さて、此方もこいつらをお縄にしよう』

『はーい』






外が静かになったので

少し開けてみる事にした。


そこには倒れている人と返り血を

浴びた土方さんが居た。怪我もしている。

あたしは咄嗟に部屋から出た。





『土方さん…怪我してるじゃないですか!』

『智香…此くらいどうって事ない。お前はもう大丈夫なのか?』

『はい。土方さんの看病のお陰で良くなりました』






月夜に照らされる土方さんは

ぽつりとあたしに謂った。





『お前は一人じゃない。怖かったり

困ったりしたら何でも謂え』




その言葉はとてもありがたくて

感謝の気持ちでいっぱいになった。

彼は瀕死状態となった浪士を抱き抱え

あたしの前から姿を消した。






『有り難う御座います…』







あたしは頭を下げた。

そして朝になり屋敷内の掃除をする。

起きてくる隊士達に挨拶をした。






『おはようございます。今日も良く晴れてますね』

『おはよう新人さん。雨よりはマシだよな』





すると斉藤さんも起きた様で

眠たそうに欠伸をしている。






『斉藤さん、おはようございます』

『ああ。おはよう。もう身体の方は良いのか?』

『はい!この通りピンピンしてます!』





あたしは斉藤さんに力瘤を作って見せた。






『なぁに?このプヨプヨ瘤?』

『うわっ!』

『総司…』

『昨日、あの後拷問したんだけどさぁ〜

全然口を割らないんだよねぇ〜?』




沖田さんはあたしの二の腕を摘まみながら昨夜の事を話す。

何をしても話さなかったらしい。




『沖田さん!摘むのやめて下さい!』

『だってぇ〜気持ちいいんだもん

このプヨプヨ瘤さぁー』

『その辺にしてやれ。困ってるぞ』

『困ってます』

『はいはい。それじゃねぇー、僕顔洗っては来るからぁ』







沖田さんは右手をひらひらと振りながら

廊下を進んだ。




『…昨日は大変だったな…』

『はい…けどこの時代を生きる人達は

凄いと思います』

『そうか?』

『はい』

『…俺も顔を洗いに行ってくる。何かあったら呼びに来い』

『はい』






中の掃除を全て終わらせると

あたしは中庭と門の掃き掃除へとりかかる。

この時ばかりは沖田さんが側に

居てくれる。あたしが箒を持って

掃いていると必ず声をかけてくる。





『マメだよねぇー?智香ちゃんて』

『普通ですよ』

『ふぅん…そうだ。今度町を案内してあげようか?』


『え?でも…今は…』

『勿論、落ち着いてからだから

心配しないでよ?』

『はい!約束ですよ?』

『なぁに?その小指?』

『ゆびきりげんまん、です』

『えぇー?指を斬るの?』

『違います!もう!』

『あははははは…!智香ちゃん怒ったぁ!』






あたしは頬を膨らませながら

進める。全く!いつもこうなんだから!





『ねぇ?』

『今度は何ですか?』

『んー?』





この爽やかな笑顔が!

用事がないなら話かけないで下さい!

いや、爽やかな笑顔じゃなくて

意地悪笑顔だっ!





『だって君の反応面白いから…つい…』

『遊んでます?』

『もしかして今気づいたの?』

『くぅっ!沖田さんっ!!』





思わずあたしは箒を持ち上げ

沖田さんを追い回す。それを見ていた

土方さんが笑う。

こんな日がいつまでも続けばいいのに…。







今回もこの作品を

詠んで頂き有り難う御座います。

如何でしたでしょうか?


何かあれば

御指摘下さい。




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