三十三章 休息
今回はのほほんとした
話になっています(*^^*)
飼育している豚さんは前より
全然餌を食べてくれるようになった。
隆夫もホッとしているし、土方さんも肩を撫で下ろした。
山南さんはというと
暫く安静にしてもらう。
彼の周りの雑用はあたしと隆夫が
任されることになった。
『失礼します』
あたしは山南さんへお茶を持って行く。
『おや…智香さん。どうぞ』
障子を開けると山南さんは机に向かって
座っていた。
『お茶をお持ちしました』
『有り難う御座います』
『何をしているんですか?』
『本を詠んでいました。智香さんもどうですか?』
山南さんは、お茶を受け取ると
あたしへ本を渡してきた。
中身を見てみる……繋ぎ文字で
さっぱり詠めないっ!カナも時々混ざっている。
多分…顔が引きつっていたかも…。
『すっかり冬ですね』
山南さんはお茶を一口飲むと
切なそうに謂った。
確かに秋から冬へ変わる季節は
切ないイメージがある。
『智香さんは風邪など大丈夫ですか?』
『喉が痛いですけど平気です。嗽も急須に残ったお茶でしてますし』
『お茶で?』
『はい。お茶にはカテキンが多く
含まれているので喉の殺菌に効果的なんです』
『でわ、私もやってみますか…』
『今此処ではやらないで下さいね?』
『ふふ。しませんよ、そんなはしたない事』
ツボに入ったのか
山南さんは笑った。笑う目に涙がある。
面白かったのだろう…。
つられて自分も笑ってしまう。
『本当に貴女は…楽しい方ですね…ふふ』
『流れですよ流れ!』
山南さんと笑いながら話をしていると
障子が開けられた。
振り向いてみると近藤さんが入って来るところだった。
『すまんな山南君、声をかけようと
したんだが、何やら楽しそうなんで』
『いいえ、大丈夫ですよ』
『身体の方はどうだい?』
『はい。大分良くなっています』
『そうか。だが、油断は出来んからな?
まだゆっくりしていてくれ。
隊務の方は火の用心くらいだからな』
『申し訳有りません』
『いや、君が病気でなくて何よりだ』
近藤さんはあたしと山南さんの
間に座る。
『あ、近藤さんにもお茶持って来ますね』
『おお。すまんな智香君』
『いえ』
あたしはそう謂うと山南さんの部屋から
出て行く。台所へ着くとお盆と湯のみを
取り出し、急須へお茶の葉を入れる。
『あれ?何してるんだ?お茶か?』
『永倉さん。はい!永倉さんも飲みますか?』
『おうっ!頂くぜ!』
『はい!承知しました!』
『元気だなぁ智香ちゃんは?』
『永倉さんこそ元気じゃないですか』
『まぁな!ところで山南さんはどうだった?』
『”大分良くなっています”って
仰有ってました。けど、近藤さんは
油断は出来ないからまだ
ゆっくりしていてくれって』
『だろうな?山南さん、少し体調が
良くなると頑張っちまうからなぁ
本調子になるまでは簡単な仕事だけを
やってもらう方が
身体にはいいかもな』
『そうですね。お茶、入りました』
『有り難うよ…はぁーあったけぇ〜』
『火傷しないで下さいね?』
『平助じゃあるまいし』
『ふふ。では、あたしは近藤さんへ
お茶を持って行きますね』
『おう。転ぶなよ?』
『ムッ!転びませんてばっ!』
『その膨れっ面いいねぇ〜』
『ふんっ!』
『お!怒った?』
『ふんっ!』
『可愛いなぁ〜』
『ふんっ!』
『はははははっ!』
『冷めちゃうのでもう行きますっ!』
『あいよ』
あたしはふてくされながら
再び山南さんの部屋を目指す。
山南さんの部屋までちゃんと転ばず持ってきましたよーだっ!
『ふんっ!』
『…?』
『…?』
あたしは障子を開けると
近藤さんと山南さんは何事かと
思う目であたしを見た。
『どうかしましたか?』
『何か…遭ったのかい?』
『…別に…お茶、どうぞ…』
二人は首を傾げるので
台所で何が遭ったのかを説明した。
永倉さん…。
『はぁ〜。謂われてみれば
昨日の昼、大広間に入ろうとした
智香さん…確かに転んでましたね…』
『見ていたんですか?!』
『はい』
山南さん……”はい”って…。
しかも真顔で応えなくても…。
『うんうん。門の前でも転んでたなぁ』
『近藤さんも見てたのですか…』
気づかなかったぁっ!
二人に見られていたなんてっ!
『見ていたのは私達だけではないですよ?』
『…えっ?!』
『土方君も沖田君も見ていますよ?』
『嘘っ…』
『皆見てたと思うぞ?』
それって要は全員に見られたって
事ですね…。
トホホ…。
『山南さん、入るぞ』
『どうぞ』
土方さんが山南さんの部屋に
入って来た。
『何の話をしていたんだ?』
『智香君がよく転んでいた話だ』
『昨日数回転んでましたし。近藤君へ
お茶を煎れに行った智香さんが
永倉君に指摘されたそうです』
『あ〜…なる程』
『ふんっ!知りませんっ!』
知らない事はないだろう?智香』
『段差と石のせいです』
『段差と石ですか…私は転んだ事
有りませんよ?』
『俺もだな』
『俺もだ。智香君急ぎ過ぎ何じゃないかい?』
『そうですね…いつも小走りですし』
『違うおっちょこちょいなだけだろ?』
『土方さんの鬼っ!』
お盆にもう一つお茶があったので
土方さんへ差し出す。
『お前のじゃないのか?』
『いえ。前に山南さんが助言してくれたので』
『助言?』
『はい。近藤君が来る所は大抵土方君も
来ると』
『そうなのか?近藤さん?』
『謂われてみればそうだな』
『なのでお茶は二つです』
『タイミングがあるだろう?冷めてから
来るかも知れないだろうよ?』
『その時は煎れ直してきます』
あたしは山南さんの部屋を後にし
飼育小屋へ向かうことにした。
手拭いを頭に巻く。
『飼育小屋…掃除しなきゃ』
『おっ。遅いぞ智香』
『山南さん達にお茶を出してたのよ』
『ふ〜ん…なぁ…智香?』
『うん?』
『俺…お前と別れて本当謂うと後悔してるんだ』
『何?急に?』
『今更だけどな…』
『あー蠅が隆夫の頭にー』
バシッ!
『いてっ!ワザとだろ?』
『んん』
『だってすげぇ棒読みだったぞ?』
『知らないっ』
『こいつ…』
『……ねぇ……』
『あ?』
あたしは牛の前で体育座りをして
まじまじと牛さんを見た。
『この仔…雌?』
『これこそ今更だな…そうだよ。こいつの腹の中には赤ちゃんが居るんだ』
隆夫は雌牛の頬を撫でながら謂う。
どうりで…お腹が大きくなる訳だ。
『お産、近いな』
『赤ちゃん…そろそろなんだね』
『新しい藁が必要だな』
だから豚さんの餌を調達した時
藁も…。
牛さんの話をしていると
沖田さんが水を持ってやってきた。
『智香ちゃん』
『沖田さんっ!この仔雌牛だったんですよ!』
『………まさか知らなかったの?』
『…え?』
『はぁ…だから今更って謂ったんだ』
『あー隆夫の口がアヒルの口にぃー』
『させるか!』
『君達…何してるの…』
『さ!お掃除お掃除!』
『智香ちゃん訊いてる?』
今日はなんというか…。
可笑しな日だ。
後半日頑張るぞっ!
いつも詠んで頂き有り難う御座います
(≧∀≦)
新選組…十万字…頑張らなきゃ…!
師走…投稿出来るか心配です…(T^T)




