三章 ひとりじゃない
感情的になってしまいました(^-^;)
さて、今後とうなってしまうのでしょうか?
この作もお立ち寄り頂き有り難う御座います。
あれからと謂うもの
あたしはこの屯所を出る事ばかり
考えていた…。だけど…折角面倒をみてくれている新選組の皆に悪いような気も…。
夏の青い空をみあげる。
後ろでは沖田さんが縁側でうたた寝をしている。彼はよく中庭でこうしている。
箒を持ったまま、ボーッとする自分。
どうしてあたしが狙われているの全然判らない。
『…はぁ…』
『溜め息ばかりついてると幸せが逃げちゃうよ?』
『わっ!沖田さんっ!いつ目が覚めたんですか?!』
沖田総司。彼はいつの間にか
胡座をかいていた。いつもと同じ、意地悪そうな目だ。
『やだなぁ〜?うたた寝をしてたとでも?』
『…はい。てっきり…』
『また襲われるかも知れないのに
寝る訳ないでしょう?』
『…すみません…』
『ふぅ…何を考えてるか知らないけど
此処を出てく必要なんてないからね?』
彼は立ち上がるとあたしの方へ寄って来た。…考え…見抜いてるじゃないですか…。
柔らかい風があたしと沖田さんの頬を撫でる。
彼はちょっと困った顔をした。
『智香ちゃんさ、謝り過ぎ』
『え?』
『謝ってばかりだよ?』
『そうですか…?』
『そうですよ』
『すみません…あ…』
『ほらね?もっと気楽でいいじゃん?』
『お…沖田さんが気楽過ぎるんです!』
『そう?』
『…ごめんなさい…あたし、怖くて…どうして狙われているのか…見当もつかなくて』
『あの時何か見たりしなかった?』
『…何か?』
『うん』
『………』
あたしは記憶を一生懸命辿った。
本を手にしてからの記憶…。
この時代に来て初めて見たのは
沖田総司さん。そして手を縛られて…。
浪士
が…落とした物を…。
『あ…』
『何か思い出した?』
『はい…沖田さんがあたしの手を縛って歩き出す直前…あたし、浪士が落とした物を
…拾いました』
『ふぅん…それ、まだあるの?』
『部屋に』
中庭の掃除を途中のまま
あたしと沖田さんは今あたしが使っている
部屋へ行く。
『確か…あった!此です』
『小瓶?この中の液体は何だろう?』
『無色透明ですね…』
あたしと沖田さんは小瓶に顔を
近づける。本当に何の液体なんだろう?
すると後ろから……。
『二人揃って何をしているのですか?』
『あら?…この声は…』
『……?』
沖田さんが声の主を辿るよう後ろを振り返る。
そこには身なりが綺麗な成人男性が何かの包みを左手に持ちながら
あたし達二人を見下ろしていた。
『やっぱり!山南さん!いつ戻ったんですか?』
『少し前です。此方の女性は?』
『あ!お、お、お世話になっています!篠山智香と申します!…え?女性…?』
『そんな華奢な体格、女性しかいないでしょう?』
何でバレた?
あたしはまた混乱してしまった…。
『山南さんは大丈夫だよ』
『申し遅れました。私は山南敬助といいます。新選組の総長をしています』
『ところで山南さん?この小瓶の中
何だと思います?』
沖田さんがあたしの手から小瓶を取り上げると
山南さんへ渡した。
ソレを目の位置まで持ってゆく…。
『此を何処で?』
少し見てから山南さんが視線をあたし達へずらす。
説明をしようと一歩前へ出たのだけど
沖田さんが代わって山南さんへ説明をしてくれた。
『どうりで…不浪士達が騒いでいる訳ですか…』
『知ってるなら教えて下さいっ!山南さんっ!』
山南さんは目を丸くした。
あたしの行動に驚いた様だった。
『この中身は大変危険な猛毒ですよ』
『智香ちゃん…皆を集めよう…』
『はいっ!』
そして大広間へ隊長全員が集められた。
近藤勇さん、土方歳三さん、沖田総司さん、斉藤一さん、原田左之助さん、藤堂平助さん。
そして山南さんとあたし。
『本当か?総司?こいつが狙われている理由が判ったと…?』
『はい。僕が彼女を此処へ連れてくる時、実はこの小瓶を拾ったそうなんです』
『未来から持ってきた毒とは考えないのか?』
さすが土方さん…。
そうくると思ってましたよ。
『ですが土方君、私が此方へ戻る途中
浪士達が騒いでいたのですよ。
”早く見つけ出せ”と……』
土方さんは自分の顎へ右人差し指と親指を
つけると納得したような雰囲気をだした。
その後に沖田さんが続ける。
『なる程…』
『前に襲ってきた奴は何も吐かなかったんですか?』
『ああ』
沖田さんの問いに土方さんの変わりに近藤さんが応える。
『なので…引き続き智香ちゃんは此方で保護しよう。消される可能性が高い』
『近藤さんの謂う通りだな?』
原田さんがそう謂うと皆その言葉に
同意した。
『でもさぁ〜此処が奴に突き止められたらどうすんだよ?毒のありか絶対此処にあるってバレバレじゃねぇの?
毒だけ残してこいつが未来って所に戻ったら……』
『平助っ!』
怒鳴り声をあげたかとおもうと沖田さんが藤堂さんを
殴った。あたしはただ驚いた…。
穏やかな沖田さんが手を挙げるなんて…。
『沖田君!……その位にしてあげなさい?』
『…ちっ!』
山南さんが止めにはいると
沖田さんはそのまま広間を出て行ってしまった。
『いってぇなぁ〜…総司の奴ぅー…何も殴ることねぇじゃん…』
『平助、お前が悪い』
『何だよ土方さんまで…』
『ごめんなさい…あたしの…せいで…』
気がつくとあたしは皆が居るところから飛び出していた……。
堪えていた涙が…。
『智香っ!』
『あーあ。泣かせたな?』
『なっ!何だよ!』
あの大広間に居てはいけない気がした。
未来から着たあたしのせいで!
此処に居てはいけない…。
あたしは気がつくと涙を流していた。
部屋まで来ると畳の上で泣き崩れた。
『もっと気楽でいいじゃん?』
出来ないです!
気楽になんてなれないです!
どれくらい泣いたのだろう…。外は薄暗くなっている。今なら此処を出ても
気付かれないだろうか…?
『少し…風にあたろう…』
あたしは立ち上がると障子を開けた。
その時誰かが居る事に気付く。
障子を開けるとすっかり見慣れた彼が居た。
『沖田…さん…?』
『泣き止んだみたいだね?
ごめん。平助が酷い事謂っちゃって…
けど、悪気は無いんだ…って殴った僕が
謂う台詞じゃないか…』
『………』
『大丈夫だよ。どの道今回の件はやらなきゃいけない事だから…』
『……』
何を謂って良いのか判らなくて
ただ沖田さんの言葉を訊くだけ…。
『あの…』
『うん?』
『いつから此処に居たんですか?』
『障子が閉まる音が聞こえてからずっと』
『え?』
『君、泣いてるから…中に入りづらくて』
『…有り難う御座います…』
『此処を出るなんて危険な考えは捨てなよ?』
『けど…』
『僕達新選組に任せてよ?』
『…はい…有り難う御座います…』
『君のお陰で脚が痛いよ』
『え?!』
『なんて冗談。夕飯、一緒に食べようよ?』
『でも…』
『土方さんなら気にしなくていいよ。その鬼副長が呼べって謂ってるみたいだから』
『…はいっ!』
沖田さんと話して居ると藤堂さんが
やってきた。
『えと…さっきは悪かった…』
『藤堂さん…』
『うっ…早くしないと晩飯無いからな!』
『全く…素直じゃないねぇ…』
沖田さんは悪戯な笑みで藤堂さんを見て謂う。
また此処でプチ喧嘩が始まると面倒なので…。
『沖田さんも一緒に…』
『そうだね。今日は素直になろうかな?』
『…?いつもは素直ではなかったのですか?』
『えー?知らないなぁ〜?』
『意地悪です!』
『ふふっ』
あたし達は
藤堂さんの後に続いた。
夕飯はさっきの大広間だ。
彼等はいつも此処で食事をしている。
談笑したり、喧嘩をしたり…。
土方さんと沖田さんはお酒を呑んだり。
『今晩の見張りは…』
近藤さんが謂う。
『僕の班ですよ』
『そうか。あまり呑み過ぎるなよ?総司?』
『判ってますって』
『気をつけるんだぞ?』
『大丈夫ですよ』
その時
この屋敷に近付く不気味な影があった。
今日はぽちりぽちりと
微妙な時間が出来たので投稿致しました。
ご愛読ありがとうございました。
またのお越しを
お待ちしています。