二十三章 気持ち
新選組お待たせしました!
今回の話は智香と日高りんが
再び対面しますっ!
隆夫が此方の時代へ来て一週間。
沖田さんは少し角がある感じだ。
けど、すぐいつもの沖田さんに戻ってくれる。
『智香ちゃん?』
『沖田さん…どうしました?』
『土方さんが探してるよ?』
『土方さんが?あたし何かしちゃったかな?』
『さぁ?早く行った方が良いんじゃない?こっちだよ』
『待って下さいっ!』
土方さんからの用事というのは
この屯所内で豚と牛を飼うという内容だった。どうしてそれをあたしに?と思っていると土方さんはこう続けた。
『お前の事だから動物に情が出るのではないかと思ってな』
『それで…て…事は』
『喰う為だ』
『食べる為に…』
『一応それ専門の人へは頼んである。もしかしなくてもお前と隆夫に手伝って貰う事になるだろうが』
『判りました』
『だから俺も呼ばれたのか…』
『初心者にはどうしても情が出るだろう?』
『そういう事』
『判りました』
『話はそれだけだ。下がってもいいぞ』
『それじゃ僕は巡察へ行く支度しますね土方さん』
『ああ。智香はなるべく俺の側を離れるな。今日は山南さんが居ないからな』
『はい』
『隆夫は平助の手伝いを頼む。あいつはすぐサボるからな』
『はい』
そしてあたしは土方さんの部屋の掃除と
庭の掃除をする事にした。
平助君は土方さんが見張りを隆夫に頼んだ事を何かぶつぶつ謂っているのだろう。
何故判るか、それはあたしも平助君の見張りを頼まれた事があるからだ。
『智香、今すぐこっちへ来い』
『…?はい…』
『近くに居る』
『…っ!?』
あたしは土方さんの隣へ座り込む。
土方さんは四方見渡す。
すると…何も知らない隊士の一人が
土方さんの部屋へやってきた。
『副長!』
『どうした?』
『実は今…日高りんという女性が…来ているのですが…』
『なんだと?…判った。今行く』
『失礼しますっ!』
『おい…』
『一緒に…ですよね…』
『そうだ。着いて来い』
『はい』
あたしは土方さんの隣りを歩く。
足が早いので自然と足早になる。
門まで行くと日高りんが居た。
此方を見て口元だけで笑う。
『ご無沙汰しています。先日は助けて頂きまして、有り難う御座います』
この口振りだと、新選組がこの”日高りん”を調べていることは知られていない様だ。あたしは彼女に不自然がられないよう
いつも通りを装う。
『ああ…あの時総司達が…いや、ただ不審者のようだったと訊いたが。此からは気をつけて貰おう』
『申し訳ありません…藤堂さんを好いてしまいまして…お会いしたくてつい、あの様な行動を』
『悪いが平助は仕事中なんだ』
『そう…何ですか…』
『すみません…』
『うふふ。いいえ…では、また。失礼致します』
彼女は来た道を戻って行った。
ただ、口元で笑う彼女を少し不気味に見えた。
『ふう…部屋へ戻るぞ』
『はい』
部屋へ戻ると土方さんは筆と紙をとり
”お前の様子を探っていたな”とあった。
やはりそうだったのかと思った。
午前中はこうして過ごした。
『ふぅん…僕達が巡察へ行ってる間、そんな事があったんだ?』
『はい』
あたしは沖田さんが帰ると
日高りんが来た事を文にして伝えた。何もされはしなかったけど…あんな事をされた後だから正直此処を訪れてほしくなかった。
『また近いうち、来るんじゃないかな…』
沖田さんは聞こえるか聞こえない位の
声で謂った。
『あたし夜が怖いです』
『………土方さんに話した?』
『まだ…です』
『謂ってみたらどうかな?』
沖田さんは後ろから
あたしを抱きしめてくれた。
肌寒くなっているから暖かい…彼の息が耳元で感じる。壁なんてない。あたしは目を閉じて沖田さんの話を訊く。彼の声と規則正しく動く心臓のリズム、お昼の後だから
眠くなってくる。
沖田さんは巡察中の話をしている。
あたしは頑張って眠らない様耳を傾ける。
恐らく中庭を見渡しながら訊かせてくれているんだろう…。
薄く目を開けると沖田さんの膝が両サイドにあった。また、目を閉じる。
『智香ちゃん?』
『…はい…』
『眠いの?』
『少し…眠いです…』
『いいよ。寄りかかっても』
そう謂うと沖田さんはあたしの体を預ける姿勢をとってくれた。
太陽が雲から顔を出す。あたしはそのまま、眠る。
『張り詰めてたんだね』
如何でしたでしょうか?
最後は沖田と智香の時間に
してみました!
次回、明日午後となります。




