十六章 迷い猫
新選組も、長々と申し訳ありませんです。
夏休みの子供達…今回ゎ凄いの一言…。
時間見つけて頑張ります!
あれからどれ位の時が経ったのだろう?
あたしは相変わらず屯所の片付けや掃除をして一日を過ごしている。
『ふう…』
『どうした?』
『あ…斉藤さん…おはよう御座います…いえ、何でもないんです』
『思い詰めた溜め息に聞こえたが?』
『…実は…未来へ帰りたくないんです…』
『何故?…未来は智香が居るべき場所では無いのか?』
『そうなんですけど…あの時…急に未来へ戻った時、寂しかったんです。沖田さんが来てくれたのは嬉しかった。だけど…あたしは此処に居たい…皆さんと一緒に居たいんです』
『嬉しい言葉だが…智香は向こうへ戻るべきだ。お前にも両親が居るだろう?』
『あ…』
『親が居ての子だ…』
『……そうですね…何で親の事忘れちゃってたのかな…?』
『目の前の事しか考えられぬ時もある。ゆっくり決断を出すといい』
『はい…あ!裏の畑にスイカが出来たんです!手伝って頂いてもいいですか?』
『いいだろう』
『ありがとうございます!』
あたしは早速斉藤さんを連れて裏の畑へ急いだ。井戸に入れておけばお昼には冷えているだろう。
『隊士さん達には今朝出しましたので…』
『そうだったのか?』
『はい!引き上げるときちょっと苦労しましたけど隊士の皆さんの笑顔で吹っ飛びました。勿論、井戸だと限度があるので、少し行った小川でも』
『よく働くな…関心だ』
『えへへ』
大きいスイカを三つ収穫。
斉藤さんが篭を持ってきてくれたので、あたしは背負う斉藤さんの後ろへまわり支える。
それを見た近藤さんが篭の中身を見て大変喜んでくれた。
『お昼のお茶の時間に出しますね』
『嬉しいなぁ!畑にスイカなんてあったなんてなぁ!』
『近藤さん…これは智香が種から育てたスイカです』
『何っ?!我々の為に…くぅ!』
『そんな涙目にならなくても…』
近藤さんは袖で顔を隠す。
嬉しいけど、やり過ぎですよ?近藤さん?
すると近藤さんの後ろから欠伸をする土方さんがやってきた。
『斉藤に智香何してるんだ?』
『おお。トシか。見てくれスイカだ。智香君が育てたんだ』
『ほう。立派だな』
『お茶の時間にお出しします。塩をかけて召し上がって下さい』
『俺はそのままが好きなんだが…』
『熱中症予防です』
『それなら甘酒で十分だろう?』
『呑みすぎて仕事にならなかったらどうするんです?』
『…ん…』
近藤さんがギクリする。見逃しませんでしたよ?けれど、悪戯心で。
『どうした?近藤さん?』
『ま、まぁなんだ。たまにはスイカに塩をかけて食べるのも良いじゃないか…』
『副長、心当たりが…』
斉藤さんは土方さんへ
伝えようとすると近藤さんは咳払いをして
その場を誤魔化す。
『おっほん!さて、ぐるっと散歩でもしてくるか!』
『近藤さん…あんた呑みすぎたのか…』
『うっ!』
残念でしたね。土方さん勘がいいから…。
近藤さんはそのまま口笛を吹きながら屯所周りの散歩に出掛けた。
『たくっ…何してるんだか…』
ほぼ呆れる土方さんは近藤さんの
背中を見ながら謂う。そこへ来たのが平助君。
『あ!いたいた!土方さーん!』
『平助。なんだ?』
『えと、総司が何処にも居なくて…』
『沖田さんなら中庭じゃないですか?』
『…あいつ隠れたんだな!さっき行ったら居なかっただぜっ?!』
『此は俺と副長に任せろ。一緒に探してやってくれ』
『そうだな?行ってやれ』
『はい』
そういう事であたしは平助君と一緒に沖田さん探しをする事になった。
一体何処に隠れてるんですか!
『悪いな』
『気にしないで下さい』
『そうか?サンキューな!しっかし総司の奴っ!』
『何かご用何ですか?』
『まぁな』
『ふふ。沖田さーん!』
その頃、沖田は迷い込んだ仔猫を自分の部屋へ連れ込んでいた。
『三毛猫の雄なんて、お前凄いなぁ〜?』
ミー
『何か外で僕のこと探してるみたいだけど…出なくていいよね?』
『良いわけありません!』
パンッ!
『智香ちゃん…早過ぎ…』
智香は中庭へ行こうとしていたが
念の為、沖田の部屋へきた。平助の読みは当たっていた。
『総司!お前何サボってんだよ〜?』
『サボってませんー。猫助けしてただけ』
『がっつりサボりじゃんかよ…俺一人であの量の皿洗うのかよ…』
『頑張って。平助君っ!』
『何謂ってんだよ!猫助けは智香に任せて早く皿洗い!』
平助は沖田の腕を掴むとぐいぐい引っ張って行った。身長の差なのか、沖田は少し前屈みになっている。
『はぁ…困った人ですねぇ』
『わっ!山南さんっ!いつの間に…』
山南は沖田が連れ込んだ仔猫を両手で優しく抱き上げた。
懐いているのか喉を鳴らしている。
『此処で動物を飼うのは少々難しいのですよ…特に猫はアレルギーとやらを持っている隊士が数十人居るので…』
『そうなんですか…』
『首に鈴がついてますね?』
『あ…本当だ飼い猫って事ですね』
『どうりで人懐こい訳か…』
『一緒に探してあげましょうよ?』
『私と貴女で…ですか?』
『お時間があれば…』
『構いませんよ』
『ありがとう御座います!』
『支度してきますので門で待っていて下さい。恐らく土方君が居ると思うので』
『あ…多分近藤さんが…。土方さんは斉藤さんとスイカを冷やしに…あたしの代わりで行ってくれてるので…』
『おや…楽しみですね。スイカ』
『はいっ!それじゃ、この仔を連れて待ってます!』
『はい。では後程』
あたしは自分の部屋へ水筒を取りに。早く飼い主が見つかればいいんだけど…。
門の前へ着くとやっぱり近藤さんが見張りをしていた。
『この仔猫をか?判った。俺から総司へ話しておくよ』
『ありがとう御座います』
『山南君が一緒なら大丈夫だな。まだ治安が悪くてな…』
『足手纏いにならないよう心がけます』
『申し訳ない』
洗い場では沖田さんと平助君が皿洗いを必死なって洗っていた。
『智香ちゃんが半分やってくれたけど…これ、結構キツいよね?』
『だから総司を探してたんだよ』
『探す暇があるならやってて良かったんじゃない?』
『まだ謂うか!』
『失礼します』
文句を謂っていると後ろから山南が
顔を出す。
『どうかしたんですか?』
『もしかして山南さんも皿洗いしたいとか?』
『んなわけあるかっ!』
『残念ながら違います。実は先程の仔猫なのですが飼い主を探しに智香さんと出て来ます』
『えー僕も行きたいなぁ〜』
『皿洗いっ!』
『あーはいはい』
『では、行って来ます』
『まだ暑いんで倒れないで下さいよ!』
『飲み物は持ちましたし大丈夫です。ではまた』
平助は山南に注意を呼び掛けた。
話し終えると彼は智香が待つ門へ向かった。
『可愛いなぁ』
『三毛猫の雄とは珍しいなぁ』
『本当ですね』
『名前は三毛猫だけにミケだったりな!』
『近藤さん…』
『真冬が来ましたよ?お待たせしました。智香さん』
振り向くと山南さんが水筒とちょっとした
荷物を持って来ていた。
『あ…山南さん』
『そうか?暑いが?』
『三毛猫だけにミケはちょっと』
近藤さんの言葉に苦笑いしながら
山南さんが応える。
『ぷぷっ!』
『いいじゃないか』
その事だと気づく近藤さんもまた
苦笑いを浮かべた。
『さ、行きましょう。おっと…沖田君には私から話しておきましたので』
『おおそうか!あ…トシ達が戻って来たな』
『何処か行くのか?智香』
『はい。この仔の飼い主を探しに』
『まぁ、山南さんが一緒ならいいか』
『はい。スイカ冷やしご苦労様です』
『副長、俺も着いていきます』
『んーそうだな頼む』
『御意』
こうしてあたし達は飼い主を探しに町へ出た。猫の行動範囲は広いので結構大変かも知れない。
『賑わってますね?』
『此処は祇園祭が終わっても賑やかなんですよ』
『へー』
『斉藤君、大丈夫ですか?』
『あ、はい。問題ありません』
『そこの団子屋さんで少し休憩しませんか?』
『そうですね』
『けど…』
『斉藤さん、冷やしに行ってからあるってばかりじゃないですか?』
『そうだが…俺は全然…』
『ご主人、三人分お願いします』
『山南さんご注文してますよ?』
『それじゃ…休憩とするか』
『はい!』
長椅子へ座ると斉藤さんは仔猫に水をやっていた。彼はたまに屯所へ来る仔犬にもこうして飲み物を与えている。
沖田さんだったら絶対遊んでそう。
『喉が渇いていたんですね?』
『みたいです』
『お待ちしました。団子とお茶ね』
『どうも。あの、この辺りで三毛猫を飼っているお宅をご存知ないでしょうか?』
『ん〜?迷い猫ですか?』
『はい』
『三毛の雄だったら知ってるよ。雌は沢山いるから判らないけど』
『ありがとう御座います。何処になりますか?』
『ウチで雇ってるタエちゃんの猫だよ。そういや一昨日から帰って来ないって謂ってたなぁ〜?ちょっと待ってて下さいな』
そう謂うと店主は中へ入りタエさんて方を呼ぶ。暫く待つと店主と可愛い人がやってきた。
『この娘がタエちゃんだよ。ほらタエちゃん』
『あの…先程お話をお聞きしまた。あ、失礼しました。初めまして、タエと謂います』
『新選組総長の山南です。本題に入りますが…此方の仔猫はタエさんのお宅で飼っている仔ですか?』
『ミイ!何処に…何処に居たんでか?!』
『先程屯所へ迷い込んだらしく、飼い主を探していた次第です』
斉藤さんが礼儀正しくタエさんへ
説明し頭を下げる。
『ありがとう御座います!いつもならちゃんと戻って来るのに…捜していたんです…本当にありがとう御座います!』
『良かった…直ぐに見つかって…』
『そうだな』
あたしと斉藤さんは並びあって
話しをしていると山南さんが何かを思い出し
あたしと斉藤さんを紹介する。
『あ、失礼しました。此方の方は篠山智香さん、そして此方は斉藤一君です』
『タエと謂います。皆様、本当にありがとう御座います!何か御礼させて下さい!』
『えっ?!御礼なんてそんなっ!』
『俺達は飼い主が見つかればそれで…』
タエさんの一言にまたもあたしと斉藤さんは
目を丸くし、慌てる。だって飼い主が見つかればそれでいいと思っていたから…。
『けど…此処まで来てくれたのに…』
『感謝のお気持ちだけで我々は十分です』
タエさんが喜んでくれて良かった。
御礼はいいと断ったんだけど、どうしてもと謂うので団子とお茶の代金を、あたし達の代わりに払う事となった。
『御馳走様です』
『いえ、本当にありがとう御座います』
最後にまた来て下さいと謂ってくれた。なので、次回来たときは自分達のお金で支払おう!
このまま屯所へ戻ると思えば山南さんと斉藤さんがこの町を案内してくれた。
そういえば…此処へ来てから新選組の皆が案内するって、謂ってくれてたっけ。
今日一日は和んだ日になった。
そうそう近藤さん、残念ながらあの仔の名前はミイちゃんでしたよ?




