(失恋相談)
「はぁー」
「どうかしたの?」
「勝手に家に入らないでもらえないかい?
どうせまたピッキングしたんだろう?
警察を呼ばれたいのかい?」
「にこやかに辛辣だね。今回は善意だというのに。
それにね、残念ながら鍵はかかってなかったよ」
「……なら余計に一人してくれたらいいのに」
「そういわないで。僕でも相談相手位にはなれるよ」
「どうせまた話のネタにでもするつもりだろう?」
「それでもいいから話したいんじゃないか?」
「はぁー。いいよ、僕が君に勝てるはずもないんだ。
すこしだけ、話を聞いてもらおうかな」
「どうぞ、いくらでも」
「まぁ、君も知ってのとおり僕は恋をしているわけだ」
「4年も恋し続けて、全然気づいてもらえてないけどね」
「そうだよ、彼に彼女ができたらしいんだ。
4年も思い続けたけど、みんな水の泡だよ」
「……それほど傷ついてるわけでもなさそうだね」
「まぁたしかに。学校を休むほどでもなかったかな。
それこそ4年間わき目も振らずに彼を見ていたんだ、
好きな人がいることぐらいわかってたよ」
「じゃあなんで、学校を休んで部屋の片隅で膝を抱えてるの」
「……ふふふ、彼の恋路を応援するといった以上ね、
彼の恋が実ったんだ、祝福してあげないとね」
「そーかぁ、君らしくないね」
「自分が一番思ってるよ、それでも……
彼の前で情けない姿は見せたくない」
「んー、そっか。わかるけどね、その気持ちは。
でもね、たぶん彼は一番に君のところに来るよ。
それだけ、近いってことだよ」
「わかってるよ、だから……早く元気にならないとね。
うん、ありがとう。
かえってくれないかい?」
「うわぁ、元気になったと思ったらこれだから」
「これから着替えるんだよ、それともみたいのかい?」
「包丁突きつけられながらぜひとも、とはいえないよ」
「突きつけてなかったら言うんだね、君という人は。
ほんとにもう。感謝の気持ちが無くならないうちに帰ってくれ」
「はーい、わかったよ。
……あ、でもね、
まだ諦めてないから!」
「わかってるよ、僕と一緒に頑張ろうじゃないか」
「どっちかが諦めないとイタチごっこかぁ……」
「ふふふ、また何かあったら頼むよ」
「おっ! 一歩前進だね! じゃ、またね!」
「ああ、またね」