(なにから)
「さて、何から話そうか?」
「何でもいいでしょう」
「そう言われるのが一番困るっていろんな人が言ってたよ」
「何でですか? 自分の好きなように出来る選択肢がもらえるのに」
「何でもいいと言って、その実やりたくない事はきちんとある。
そういうのがうざったいらしいねー」
「それは、困る必要はないと思いますね。言う方が悪いです」
「でもそんな風に言うと友人関係が悪化してしまう、困りものだねー」
「まずそこが気に入りません!」
「ん?」
「友情、友情。仲間、仲間。絆、絆。どれも気に入りません!
一朝一夕で出来る仲間なんてアニメやドラマの中だけです!
現実なら警察のお世話になるだけでしょう!」
「まぁ、たしかに。吊り橋効果とかいうけれど、日本はそんなに甘くないしね」
「その通りです! だからこそ、
私は本当に自分が自分で居られる場所が一番だと思います。
自分を偽って仲間に入れてもらうよりも、自分をさらけ出して、
それでもなお近くに居てくれる友人と一緒に居たほうが断然いいでしょう!」
「真理だねぇ。だけど、そこにたどり着ける人はごく一部だからね。
それ以外の人たちは自分の気に入らないことを排除しようとするんだ」
「そういう人たちこそ友達になるべきじゃないでしょう。
相手の気に障るかも、だとか考えてるうちは
本当の友達なんてできっこないんです! ただのうわべだけです」
「上辺だけ、人権学習で使い古された言葉だね。
でも、人の裏側を本当に分かる人がいるのかい?
上辺だけの友情も、いつしか本当になる事はありえないのかい?
否定も肯定もできない、白にも黒にも見えない人の心を語れるとは思わないね」
「その通りです。どれだけ見た目仲がよくっても
心からきらっている者同士なら絶対に友達とは呼べないでしょう」
「それとは逆に、表面では嫌っているようにしか見えなくても、
心からすいているという例は結構あるね。
そこら辺は男にとっておいしいからだろうけど。
ほら、ツンデレとか言うやつだったっけ」
「そんなものを数に入れますか」
「入れるべきじゃないかい? 夢を与える仕事だけどね」
「仕事……。いつのまに役職に?」
「いや、気にするところはそこじゃないよ。
でもね、僕は好きという気持ちを隠してしまうのはいただけないと思う。
一言言えれば伝わる想いを、いくつもの行動にて反転させてしまうのだからね。
はっきり言って、割にも合わない愚かな行為だと思うよ」
「男たちの夢をぶち壊しますね。確かに気持ちを言葉にすれば楽になるといいます。
それは、好意が一番だと私は思います」
「んっんー。僕もその通りだね」
「さて、何からこうなったんでしたか?」
「さて? なにからだろうね?」