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フリークス・ガール  作者: 六助
灰色の向こう側
24/24

エピローグ

 空は相変わらずの灰色。

 午後から晴れるという予報だが、いまいち信用できない空模様である。

 せっかくのデートなので、出来れば晴れて欲しいところだが、案外、雨のデートも悪くないかもしれない。

 待ち合わせの場所は、どこにでもあるような、公園のベンチ。

 待ち合わせの時間は、実はもう、十分ほど過ぎている。さっき、楓から『我々も連れてけぇええええ!』と叫びまわる弟たちを叩きのめしたとメールが来たので、あと十分ぐらいで着くだろう。

 まぁ、慌てることはない。

 ゆっくり腰を据えて待とうか……と、おう?

「なんだ、そっちもデートかよ」

「ええ、偶然ですね」

 待ち合わせ場所には、純白のワンピースを着た美少女――鈴木花が現れた。お互い、変な偶然もあるものだと笑いながら、鈴木は俺の隣へ座る。

「デートか、よかったな。ついに谷沢の奴、お前と三十分以上隣に居ても気絶しなくなったんだな」

「ええ、毎日ホラー映画やグロ系の漫画を見せた甲斐がありました」

「……なんか、逆に正気が削られそうだな、それ」

「そっちはどうなんです? 楓ちゃんとは上手くいってますか?」

「あー、まぁな。時々、両親がからかうために刺客を送ってくるのが、すげぇうざいけど、後は問題ない」

 俺関連で復讐者がたくさん湧くかと思ったが、未だに災害指定されていた頃の恐怖のおかげか、それとも、傭兵としてたくさん人を助けてきたのが功を奏したのだろうか? 俺が記憶を封印されている頃から、復讐者がやってくることは無かった。

 今思えば、両親関連でやってきていた刺客たちは、復讐者ではなくて、両親から送られたボディーガード兼俺の遊び相手だったのかもしれない。というか、絶対そうだ。だって、見覚えのある奴らが続々湧いてきているし。

 うん、アレだ。意外と、うちの両親も、子供のことを考えているのかもしれない。最近は『戦場に行こうぜ』って言わなくなってきたし。まぁ、その代わり、『子供できたー?』と気軽に聞いてきやがるけどな。

「……ねぇ、七島君。本当に良いんですかね? 私たちみたいな怪物が、虫けらみたいに人の幸せを踏み潰してきた奴が、こんな日常を送れて」

 ふと、鈴木が視線を合わせず、俺に訊ねてきた。

 俺も視線を合わせず、灰色の空を見上げて答える。

「いいわけねぇだろ、んなもん。人の幸せ奪った奴が幸せになるなんて、身勝手すぎるし、都合が良すぎるだろ」

「……ええ、でしたね。けど」

「俺たちはその身勝手を通す」

鈴木は頷いて、俺の言葉を次ぐ。

「私たちはいくら恨まれても構わない」

「それでも、俺たちは自分たちの幸せのために身勝手になる」

「世界中から嫌われても良い。大切な人が隣にいるなら」

「例え、世界が敵に回ろうと、全部まとめて殲滅してやる」

「罪も認めましょう」

「ただし、復讐に来るものは全て叩き潰す」

「虫けらのように殺します」

「正しくなくても良い」

「間違っていても良い」

「だって俺は」

「だって私は」


「「怪物フリークスだから」」


 俺たち怪物には、まともな論理なんて存在しない。

 だから、どれだけ正しくなくても、楽じゃなくても、身勝手を貫ける。そういう、狂った存在だから。

「さぁて、決意表明も終わったことだし」

「そろそろデートの時間ですね」

 俺と鈴木は同時に立ち上がり、左右別の方向へ歩き出していく。

 それぞれの視線の先には、それぞれの大切な人が手を振っている。

 これはそんな、『怪物』の物語。

 俺たちの、ささやかな日常の物語。


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