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フリークス・ガール  作者: 六助
灰色の向こう側
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昔話

 昔話をしよう。

 子供の頃から、俺は恨みの中で生きてきた。

 災害指定されている人間は、復讐とは無縁の存在である。なぜなら、余りにもそれが無意味だから。

 人が台風に巻き込まれたからといって、台風を消そうと思うか?

 人が雷にうたれたからといって、空から雨雲を無くそうとするか?

 人の域を遥かに超え、もはや災害とした呼ぶことが出来なくなった人間に、復讐を挑もうと思える人間がどれだけいるのだろうか?

 居たとしても、決して多くは無いだろう。

 しかし、災害指定された人間の子供なら、どうだろうか? 直接本人に復讐できないのなら、せめて、子供でも殺すしかない。子供を殺せば、いくら災害指定されている人間だろうと、少なからず、精神的にダメージを受けるのではないか? 例え、その結果、逆鱗に触れて身を滅ぼすことになろうとも、一矢報えるのなら、無駄ではないはずだ。

 そんな考えを持った連中を、俺は数え切れないほど下してきた。

 大抵の場合、説得しても、痛めつけても諦めない人間だったので、仕方なく殺すことにした。

 最初は、涙を流しながら殺した。

 両親と自分自身の罪深さを悔いながら。

 十人目を殺した頃には、涙を流さず、耐えられるようになった。

 百人目を殺した頃には、殺すことに抵抗を覚えなくなった。

 千人目を殺した頃には、ラノベを読みながら片手間で殺した。

 やはり、人間は慣れる動物だと、身を持って実感した。むしろ、両親がアレなのに、まともな感性を持って生まれたことが奇跡だったのかもしれない。いや、不運だったのか?

 どちらにせよ、この殺戮は決して無意味ではなかった。俺を殺そうとした復讐者たちは皆、大切な者を失った恨みで動いていたのである。彼らが必死に俺を殺そうとする姿は、俺に大切な者を守ることの大切さを嫌でも教えてくれた。

 大切な者を守れなければ、こんな風になるのだと、身を持って示してくれた。

 そう、分かっていたはずだったのだ。

 大切な者は守らなければいけないのだと。

 なのに、俺は大切だった人を、あの狂った終末主義者に殺されてしまったのである。守ると誓った人を、あっさりと、俺が居ない間に、まるで全てが幻だったように、消え去ってしまった。

 俺は思う。

 力が足りなかったから、俺は守れなかったのだと。

 両親や飛鳥のように、強大で、絶対で、災害とさえ呼ばれるほどの存在になれば、守りたい者を守りぬけるのだと、馬鹿みたいに信じていた。

 だから、俺はその時から餓鬼の如く力を求めた。

 前髪を切り捨て、忌まわしい魔眼の力を解放した。

 両親に教えを乞い、ありとあらゆる破壊の術を学んだ。

 ありとあらゆる戦争に参加し、虐げられる弱者のために、何度も戦火に身を投じた。

 戦って、救って。

 戦って、裏切られて。

 戦って、復讐されて。

 いつの日か、澄み渡る青空の下で、大切な人と一緒に暮らすことを夢見て、戦い続けた。

 その過ちに気づいたのは、とある小国を滅ぼした時。

 飛鳥が扇動し、すっかり終末思想に取り付かれた愚民を虐殺し、助けられる人間は全部助けて、死体の山で一休み。

 そこで、ふと気づく。

 俺の周りには、誰も居なかったことに。

 ただ死体が転がるだけで、誰一人として、生きている者が居ないことに。

 空はどこまでも青く澄み渡っているのに、大切な人がどこにも居ないということに。

 おかしい。

 俺はたくさん救ったはずだ、たくさん感謝されたはずだ。

 皆、笑顔で喜んでいたはずだ。

 『災厄の子供』などという名では無く、『ニーズヘッグ』の名を冠する災害指定の傭兵として、数々の戦場を終わらせてきたはずだ。復讐者が戦う前に諦めてしまうほどの力を、俺は手に入れたはずだ。

 まだ、足りないんだと思った。

 この世界に戦争がある限り、人々が醜い争いを続ける限り、俺の大切な人は奪われ続けるのだと。

 ならば、終わらせてやるのだ。

 この醜く争い続ける世界を。

 飛鳥みたいな終末思想に狂った方法ではなく、もっと優しい、みんなが幸せになれるやり方で!

 俺はそのためだったら、なんでもしよう!

 大切な人を守るために。


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