婚約者に浮気された令嬢は幸せになれるのか
とある夜会に1人で参加する女性はサーシャ18歳。そして目の前にいる男女。
「サーシャ……どうして?1人で?」
「マルケス……」
「お姉様……あの」
「サーシャ、話がある」
1人の女性の前にいるのはサーシャの婚約者であるマルケス18歳である。本来ならマルケスの隣には婚約者であるサーシャがいるはずだが、彼の隣にいるのはサーシャの妹のニーナ17歳である。
本日、この2人が参加するとは聞いていない。夜会の準備は親友の家で準備をした為、本日家族とは顔を合わせていない。周囲の人がやたらと気遣う原因はこれか。
「マルケス……そしてニーナ。どう説明してくれるのかしら?2人は体調が悪いと……言ってましたわね」
それに横を見ると顔色の悪い両家がいる。
「そして、家族も参加しないはずでは?」
状況を察する参加者達、そしてサーシャがどうするのか気になっているのだった。
「サーシャ、これには……」
「お姉様……あの……私」
「マルケス様」
大きな声でマルケスに伝える。
「私と婚約を破棄して」
「サーシャ?」
「知ってるわ。2人は想い合っているのでしょう。私に隠れて逢瀬を重ねている。楽しかった?何も知らずに家の為にと取り引き先を駆け回る私を見て。どうして早くに言ってくれないの?コソコソと2人で会って……私はマルケスの婚約者なのよ。そして、あそこにいる両親は何故、貴方達のしている事に注意をしないの?それとも、既に両家で話ををしているのかしら?どうして婚約者の私ではなく、私の妹がマルケスの子を妊娠しているのよ。2人の不貞と家族ぐるみでの私への侮辱にて婚約の破棄をお願いしますわ」
婚約者のマルケスの隣にいる妹のニーナのお腹は少しふっくらとしていた。
クルリと踵を返し会場の入り口に向かう。そして、サーシャの父親から声がかかる。
「サーシャ、これには……」
「お父様達も知っていたのでしょ。2人の事を……そしてニーナの妊娠をね。私はお父様とお母様の娘ではないようね。それなら私の事は忘れて。私を家族の籍から抜いてちょうだい」
「待て、サーシャ違うのだよ」
サーシャの父親は慌てて言う。
「違わないわ。私はマルケスの婚約者ではなかったのかしら?現に私抜きで夜会に来ているじゃない。私抜きで幸せな家族をしていればいいわ。昨日今日で、ニーナのお腹が膨らむの?私以外でニーナの妊娠を喜んでいたのでしょう。今まで眠る場所と食べ物を提供してくれた事だけは感謝します。これからは自分達で商会の経営をお願いしますわ」
退場する1人の令嬢、そして軽蔑の視線を浴びるマルケスとニーナ、両家の者達だった。
「マルケス……私は皆に祝福を受けたくて」
「ニーナ……私もだよ」
ヒソヒソと聞こえるのは、婚約者を寝とる妹、婚約者の妹と関係を持ち妊娠させる男、それを許す両家だと。
「ち……違う、私達は真実の愛で……」
マルケスは震える声で言う。
「私は、みんなに祝福されて幸せな花嫁に」
ニーナは震えながら言うも周囲の目は厳しかった。
――ちょっと聞いた?真実の愛ですって今時いるのね。
――姉の婚約者と恋仲になり、子を妊娠して祝福される花嫁に?まあ、子供に罪はないわ。でも、もう少しサーシャちゃんを気遣ってくれてもいいのにね。商会の為に頑張っていたのにね。
――学園でも成績優秀でいい子だと有名なのに何も知らないのね。商会の仕事は、どうするのかしら、ずっとサーシャちゃんがしていたのでしょ。
――サーシャちゃんの気持ちを考えて出席は控えるべきだったわね。サーシャちゃん抜きで参加よ、しかも出席している事をサーシャちゃんは知らなかったみたいだわ。
――あら、先程、祝福を伝えに行った男爵夫婦はお帰りになるみたいよ。ほら奥方の顔色が悪いわ。
――婚約者の妹と浮気しておいて真実の愛ですって、男の方も随分と頭の中はお花畑なのね。
突然、騒つく会場で話し出す一組の男女。
「ねぇ……あの」
「安心して、僕には君しかいない」
「でも……」
「あんな奴はもう友達ではない。君が好きだから心配はいらない。婚約者の妹に手を出すだなんて信じられない」
「ちょっと待ってて」
男はマルケスの近くへと行き。
「マルケス。友人だったが昨日までにしてくれるかな。私の姉はサーシャ嬢とお友達でな。姉は君とサーシャの結婚後も商会を通し仲良くできると喜んでいたのにさ。最後に一つ言わせて、真実の愛だろうがサーシャ嬢にすれば不貞でしかないのだぞ。何事にも順序があるだろう。サーシャ嬢は君の為に頑張っていただろう?彼女は君が婿入りしても困らない様にと頑張っていた事を姉を通して知っている。君は優秀な姉ではなく、男に愛想を振る妹を取ったのだね。サーシャの家の商会と姉の店の契約は無くなると思うよ。じゃあね」
婚約者を連れマルケスから更に距離を取るのであった。
更に追い討ちをかけるのはこの国の第一王子のメイナードであった。
「おい、お前ら。今日は私の誕生日を兼ねての宴だと知って騒動を起こしたのか」
「いや……その……違います」
青褪める顔のマルケス。
「何が違う。何故、サーシャの婚約者は妹の方をエスコートしてるのだ。お前の婚約者は誰だ」
「いやサーシャには後で説明をと」
「後で?招待状を送ったのは私なのだが、サーシャのみの名前であったはずだが。誰からの招待を受けたのだ?招待をしたサーシャが帰ってしまったぞ。私の誕生日を祝ってくれるはずだった……どう責任を取る?」
第一王子のとマルケスの間に挟まり声をかけるのは妹のニーナ。
「お……お姉様はマルケス様を裏切って殿下と浮気をしていたのですか?」
会場はには沈黙と冷ややかな視線がニーナを襲う。メイナードは、周囲に対し笑顔を見せる、そしてニーナに視線を向ける。
「はぁ、サーシャの妹はバカか。サーシャとはクラスが一緒で私の婚約者の親友なのだぞ。マルケス……がっかりだよ。クラスが違う為お前とは交流はないが、サーシャから仲良くしていると聞いていた。それなのに浮気相手に婚約者の妹を選ぶとは……どこがいいのだ、頭の悪そうな女が好みなのか」
「………」
何も答えられないマルケスであった。
「おい、妹……姉の婚約者は、奪ってまで手にする程の男なのか?君の噂も知っているぞ。まあ、マルケスにサーシャは勿体ないからな」
「私とマルケスは真実の愛で結ばれているの」
必死に自分たちは悪くないと言い続けるニーナであった。
1人の令嬢が近づく。第一王子の婚約者であり宰相の娘のケイシーである。
「メイナード殿下。サーシャを蔑ろにし悲しませたアイツらを許したくありませんわ。サーシャからは家族も婚約者の家も欠席するからと聞きました。そして彼らはサーシャに仕事を押し付けましたわ。私はサーシャを呼び出して夜会の準備を一緒にしましたの」
第一王子の婚約者のケイシーは静かに怒る。
「そうだな、どうするか……。しかし、サーシャの両親は娘が一人で会場を後にしたのだが誰も心配しないし追いかけもしない。婚約者もだな。もしや、既に婚約は解消しているのではないのか?」
「殿下……娘が妊娠してまして……その」
「ほう、サーシャは娘ではないのだな。サーシャにも言わず婚約を解消か……成る程な。そして妹の方は真実の愛か、サーシャは君らの娘なのか?それとも養子か?」
「……うちの娘ですが」
顔を赤くし答えるサーシャの父であった。
「貴方、サーシャがウチの馬車を使ったら帰れないわ。すぐに追いかけて。ここにはいたくないわ」
夫にしがみつくサーシャの母。
「母親であるのにサーシャの心配ではなく自分の心配か……安心せよ。夜会が終わったら送らせるぞ。楽しんだらいいじゃないか、その為に娘を置いて来たのだろう?さあ、皆の者、婚約者がいながら浮気をする男、姉の婚約者と寝る妹、勝手に婚約を解消する両家に祝福の拍手を」
会場は誰1人として拍手をする者はいなかった。
「おや、拍手がないな。しかし、皆に注目されて良かったな。私は退席させてもらう。今日が本当の誕生日でなくてよかったよ。さぁ、ケイシー帰ろう」
第一王子と婚約者は退場のため入り口に向かい歩き出す。
「いや……こんな所にいたくない。パパ、ママ……帰りたい」
サーシャの妹のニーナは泣きだす。
しかし、周囲からの視線は冷たいものだった。
王城の門に向かい走るサーシャ。
「ついに言ってやったわ。さあ、家を出るわよ」
門番に挨拶をし、城から出ようとした時に門番はサーシャに話しかける。
「サーシャ様、しばしお待ちを」
近づく一台の馬車。ドアを開けて話しかける1人の男。
「婚約解消したお嬢さん。馬車に乗りませんか?」
「ジョシュア、いい所に」
「今頃、きっと会場は大混乱だよ。さて作戦開始だよ」
「殿下より事情は聞いてます。お元気でサーシャ様」
「ありがとう」
「遊びに来てねと二人に伝えてください」
「わかりました。お気をつけて」
サーシャとジョシュアを乗せた馬車は街の中に消えたのだった。
「ジョシュア、私の荷物をありがとう。これから辻馬車で隣国へ向かうわ。今までありがとう。頑張るわ」
「え?サーシャ?」
会場では、周囲からの視線に青褪めるサーシャの両親と妹、マルケスと両親であった。そこに登場したのは護衛騎士である。退場しようと入り口に向かう第一王子の耳元で囁くのであった。
「わかった。ありがとう、無事に行ったのだな。ケイシー、二人は行ったよ」
「さよならもできなかったわ」
「大丈夫だ、また会えるから」
囁く声は周囲には聞こえない。
「おい、私の護衛からの報告だ。君の娘と思われる令嬢が連れ去られたようだ」
「サーシャが」
「嘘……」
「君らのせいだな、さっさと追いかけないからだ」
「お姉様……お姉様」
泣くのは妹のニーナだ。
それに対しメイナードは、
「何故泣くのだ?姉の婚約者を奪ったのだろう?邪魔だったのだから良かったじゃないか。嬉しいだろう」
「いや……その……」
慌てるニーナにメイナードは続ける。
「大切な姉ならば姉の婚約者と浮気はしないぞ」
「…………」
何も言えないサーシャとマルケスの家族であった。
その頃馬車では。
「サーシャ、僕は見ないから、この服に着替えて」
「わかったわ」
屋敷の侍女達はサーシャの世話をしない。その為サーシャは一人で何でも出来るようになった。荷物もほとんど無い、大切な物はジョシュアに預かってもらっていたからだ。なのでサーシャは屋敷に戻る必要はなかったのだ。
サーシャの計画は一年前からだ。偶然屋敷で聞いたのは妹と逢瀬をする婚約者のマルケスの会話だった。
「君が婚約者だったら良かったのに」
「私もよ。でもお姉様はこの家を継ぐわ。私ではダメなのよ」
実際には、妹のニーナは成績の悪さから後継にはなれない……いや本人も経営をしたくなかったのだ。マルケスとサーシャの結婚は婿入りという形であった。
「このまま、サーシャと結婚して時を見てニーナを私の妻にするよ。だから今は耐えて」
「でもマルケス……お姉様を抱くなんて私は耐えられないわ」
「彼女とは白い結婚にする。そして、子が出来ないからと君を妻にする事を望むよ。そしてサーシャはずっと家の為に働くように言おう。それまで私とニーナは子を儲けないようにしなければな」
「愛してるわ。マルケス」
「僕もだよ」
「マルケス、これを飲んで楽しみましょう」
「あぁ」
ドアの外で聞くサーシャは考えた。このままじゃ一生愛されずに働くのみだと。やる事は一つだ。マルケスとの子供を授かりたいのなら私との結婚後ではなく先に授かってもらい愛し合う2人には幸せになってもらいましょう。いつもの様に私だけ残して出掛ける家族、その隙に何故か妹の部屋にある数多くの避妊薬をシロップ水とすり替える。
妹が妊娠すれば、私とは婚約を解消するだろう。両親にとっても可愛いのは妹のニーナだけ。ニーナを未婚の母に……ましてや姉の婚約者との子を妊娠したと知られれば世間からの冷たい視線に晒される。2人が結婚してこの家を継いでいくことが家族の幸せね。
しかし、妹のニーナが何故マルケスと関係を持っているのかが理解出来なかった。顔も成績もパッとしない男マルケス。
性格は悪くはないが……いいとも言い難い。マルケスの両親からの願いでの婚約となったが、こうなるのなら始めからニーナと婚約すればよかったのではと思うサーシャであった。
サーシャは親友のケイシーに相談した。そして、サーシャは一人の男性と出会うのだった。
彼はケイシーの婚約者である第一王子メイナードの友人で隣国から留学してきているジョシュアであった。王族と知り合いとなれば隣国でも身分が高い男性なのだとサーシャは思う。しかし、ジョシュアは身分を明かさない為、サーシャも尋ねる事はなかった。
ジョシュアは自分は普通の家の子だから気兼ねなく話してほしいと言い、メイナードを中心に4人で過ごす事が増えた。サーシャは少しずつジョシュアに惹かれてはいるものの、不貞をしている男とは言え婚約者がいる。そのためジョシュアとは友人のまま時を過ごす事になる。
出会いから半年がたちジョシュアはサーシャに問う。
「サーシャ、君はあの家から出たい?」
「えぇ、勿論よ。最近は家の様子がおかしいのよ。きっとそろそろよ」
「それならさ、僕の国に一緒に行く?」
「一緒に?」
「あぁ、でもね。知っての通り僕は何もない男だよ。爵位も自由にできるお金だってない。あるのは健康な身体と君への想いかな。だからさ、隣国にいつ行くのかわからないから早くに卒業の資格を取っておいて。卒業前に国を出ることになれば高等学校を退学という形になってしまう」
現在3学年のサーシャ。半年後には卒業だ。殿下をはじめ、数人はすでに卒業までの課題と試験を終えて卒業した事となっている。卒業を早めても学園に通うことは可能だ。殿下とケイシーは残り少ない学園生活を満喫中であった。
「そうね、念のため早めに卒業してしまうわ。ジョシュア、貴方はとても素晴らしい人よ。貴方と知り会えて良かったわ。貴方がいてくれたらきっと隣国でも楽しいのでしょうね。来たるべきタイミングで隣国へ向かうわ」
「え?何処に住むの?仕事は?」
「向こうで考えるわ」
「待って、僕が住む所を用意するから待ってて、仕事も紹介するからね」
「住む所と仕事を私に……ありがとう」
「で、住む場所と仕事の希望は?」
「希望?貴方に任せるわ」
「そう言質は取ったよ。ふふっ僕に任せてね」
***
――馬車の中。夜会の日から3日が過ぎた。途中で宿に泊まりながら隣国へと向かう。
「もうすぐ、国を出るよ。本当にいいの?」
「えぇ、きっと家族は私を探していないわ。自分たちの保身に全てを注いでるはずよ。ついでに家族は私の葬儀の打ち合わせをしているはずよ…大好きな姉が誘拐され、そして悲しむニーナを慰めているうちに恋に落ちたニーナとマルケスとね」
窓の外を眺めるサーシャ。早朝に出発した馬車の中には日差しが差し込みサーシャのミルキーブロンドの髪ははキラキラしていた。
窓の外には長閑な小麦畑が広がっている。もうすぐ、サーシャの生まれ育った国の端だ。
昔から交流のあったメイナードの国へ我儘を言い1年間だけ留学することができて良かった。
可愛らしいサーシャに会えたのだから。初めて会った時に一目惚れをしてしまった。すぐにメイナードにバレてしまった。しかし同時に知ってしまったのだサーシャに婚約者がいるということを。
1年だけの片思いのはずだった。友人としてでいいから側にいたかった。卒業後には国へ帰り親の勧める女性と見合いをし結婚する事になるだろう。彼女の事を少しずつ知る……家族は妹にしか興味がない、公爵家の後を継ぐために自営している商会の為に勉強をし、父である公爵の仕事を肩代わりしている事を。
しかし、家族はサーシャには見向きもしない、ひたすら押し付けられる書類の山を片付ける毎日。そう彼女が学園から戻ると向かう先は執務室だという。妹と両親は仲良く食卓を囲み、自分には冷め切った料理が執務室に運ばれるだけだという。専用の使用人はいない、妹には専用の使用人が3人いると話す彼女は笑いながら自分の事は全て1人で出来るから、何処ででも生きていけると言う。
半年がたった頃サーシャから聞いたのは婚約者が自分の妹と浮気をしているという事、その婚約者は結婚後も夫婦としての交流は持たずに不妊を理由に妹を妻に迎えようとしていると。彼女は寂しそうに笑う。私の人生はこんなもんだ、あの家から出たい、家族と離れたいと言う。
俺は叶えてあげたかった、家から出たいと言う彼女の願いを。できれば彼女の隣に立つ男は自分であってほしいと願う。俺はすぐに動いた。まずはメイナードの協力のもと着々と準備をする。あの家から彼女を救い出す方法をそして彼女が幸せになる方法を。自分の持っている全ての縁を使い準備をしてきた。そして今、彼女を連れて国を出ようとしている。
「ぷぷっ、ありえるけど子が産まれる時期がおかしいでしょ。それにあの夜会での事は皆知ってるからね」
「それもそうね。でも、もうこの国には戻れないのね。私にとってはケイシーとのお別れが一番辛いわ」
涙ぐむサーシャの隣に座り後ろから抱きしめる。
「大丈夫、僕が側にいるから。そしてまた、ケイシー達に会えるよ。大丈夫だよサーシャ」
「そうだといいわね」
「さあ、国境を越えるよ」
サーシャは新しい身分を手に入れ新しい人生を歩む、その隣にいつも寄り添う1人の男性がいた。その男はジョシュア、彼は隣国で恋をして連れ帰った女性サーシャと結婚する。
サーシャを養子として迎えてくれた宰相一家に婿入りしたジョシュアは、国のために兄や宰相の手助けをするのであった。そして2人の元に誕生した子供たちと幸せな家庭を築くのであった。
サーシャが国を出たのを知らない元家族は、捜索願を出すも1ヶ月ほどで捜索を終了しサーシャの葬儀を執り行う。サーシャの元家族への貴族達からの軽蔑の視線は止まず、茶会への招待もなく過ごすサーシャの母は、心を病み屋敷に引き篭もることとなる。商会の経営もサーシャのおかげで成り立っていたが取引先が次々と撤退したことをきっかけに負債が大きくなり、華やかで賑わっていた商会は静かに幕を閉じた。
サーシャの婚約者であったマルケスの実家も、経営する店の売上げが落ち込むも、マルケスの兄の頑張りによって持ち堪えてはいるが第一線を退く形となった。
マルケスの子を妊娠したニーナは、マルケスの卒業後にマルケスと結婚するが、ニーナの我儘と気の強い性格に嫌気がさしたマルケスは外に恋人を作り入り浸るようになる。ニーナもまた生まれてきた子がニーナともマルケスとも似ていない肌の色をしていたことから、子育てを放棄し夜な夜な男を求め遊び呆けるようになる。ニーナの子は教会に預けられることになるも、すぐに子供がいない夫婦の元に養子として迎えられる事になり愛情をたっぷり受けていくのだった。
「サーシャ、僕と出会ってくれてありがとう。僕の奥さんになってくれてありがとうね」
「こちらこそ、私を連れ出してくれてありがとう。愛してるわジョシュア」
抱きしめて眠る毎日。
「僕も愛してるよ。来月ね、メイナード達が訪問する予定なんだ。メイナードが国王になったから挨拶に来るみたい。2人が滞在している間、僕たちも王城に行こうね」
「しばらく会っていないから楽しみね」
「僕たちの縁を結んでくれた大切な親友だから、目一杯おもてなしをしようね」
翌月、訪問したメイナード夫婦と時間が許す限り語りあうのだった。
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