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第58話 告白(ネリーside)

 連続する不快さの中に、ポッカリと(比較的)平穏な時間が訪れることがある。

 私、死霊術師ネクロマンサーのネリーは目を開いた。



「大丈夫ナリカ?お水飲むナリ」


 側にいたのはレヴィだ。

 相変わらずマスクをしていない。

 注意してもしないので、もう諦めた。


 レヴィに抱えられ、吸い飲みでなんとか水を流し込む。


「今、効くお薬を作ってるナリ。もうちょっとの辛抱ナリ」


 薬か。あまり期待してないけど。



「私、失敗しちゃった」


「何をナリカ?」


「魔術師クランで、青助と赤吉に仕事をさせたの。

 戻ってきた青助と赤吉を、そのまま触っちゃった。

 私は、多分、そこで病気の元に感染したのよ」


 ちゃんと考えればヤバイって分かったはずなのに。


「ネリーさんは頑張ったナリ」

 レヴィは言った。


 でも、結果は散々だ。情けない。



 視界にレヴィの真っ赤な髪がうつった。

 今、言わなきゃ行けない。

 ずっと言えなかったこと。


「あのさ、レヴィ」


「ネリーさん、もう休んだ方が良いナリ」


「ううん言わせて。

 元気になったら、また言えなくなっちゃうから」


 もっと早く言わなきゃいけなかったんだけど。



「あのね、レヴィ。

 私はゴブリン族の血を引いているんじゃないかと思うのよ」


 私は言った。ようやく言えた。

 レヴィはエメラルドの目を大きく見開いた、と思う。



「なぜそう思うナリカ?」


 多分、レヴィは私の赤い髪を見ている。

 良く似た真っ赤な色の髪。



「私の実家ノーストン家の数代前の当主がね、えーとね」


「どうしたナリカ?」


「要は幼女趣味ロリコンだったらしいのよ」


 実家の記録を読んだ範囲だけど、多分間違いない。

 私は続ける。


「彼は金で奴隷を手に入れたらしいの。

 真っ赤な髪の女の奴隷。

 身長は130cmちょっと。大きな緑の目の持ち主ですって」


「……。」



「彼はその女を愛人にして囲った。

 幼女趣味ロリコン当主は、猫可愛がりしてたそうよ。

 そして、その赤い髪の女は男の子を産んで死んだわ。その女と同じ赤い髪の男の子」


「その子はどうなったナリカ?」


「当主の庶出の息子として育てられた。

 だいたいね、当時すでに王国では奴隷は違法だったはずなのよ。

 どうやって、ノーストン当主は奴隷を手に入れたのやら」


 要はごまかしたんでしょうけど。

 ろくでもないわ。



「その子は無事に成長した。身体は細身で小柄だったけど。

 治癒術の才能もあったそうよ。

 父親の当主も、周りもホッとしたでしょう。

 将来は治癒術師として独立させればよいのだから」


「外の世界的には……、悪くないと思うナリ」


「そうね、悪くないわ。でもそれで終わらなかった」



「どうしたナリカ?」


「伝染病が流行ったの」


「それでどうなったナリカ?」


「一族からたくさん死者が出た。主だった者は死んでしまった。

 でも、彼は生き延びた。

 そして、彼はノーストン男爵家の当主になった」


「そうナリカ」



「小柄な赤毛の当主は結婚して子を成した。その子がノーストン家を継いだ。

 彼が私の曽祖父よ。

 でも、赤毛の当主以来、我が家には治癒術師と死霊術師ネクロマンサーがよく生まれるの」


「……」


「元々、ノーストン家は時々魔術師が生まれた。でも、炎や水や土の攻撃魔術使いが多かった」


 元々ノーストン家のご先祖は魔術を利用してのし上がってきたのだ。

 さらに治癒術師の強い血筋が入った。


 

「ノーストン家に生まれた治癒術師達は、よく働いたわ。

 活躍を認められて、ノーストン家は男爵から子爵になった」


「良かったナリ」


 その代わりに、一族に時々現れるのが、死霊術師ネクロマンサーの力と、真っ赤な髪の子供。


 真っ赤な髪。小柄な身体。治癒術と死霊術の血脈。

 おそらくゴブリン族の血脈。

 

 私は小さい頃、金髪の姉に「赤毛のゴブリン娘」と言われて、それが本当にイヤだった。

 


「レヴィ、本当に良かったと思う?」


「良かったと思うナリヨ」


「我が家に現れた赤い髪の女は、純血のゴブリンではなかった。尻尾がないし、背も高過ぎる。

 ハーフかクォーターかしら。

 では、最初のゴブリン族はどうなったのかしら?


 赤い髪の女は奴隷だった。

 そして、『親のことは知らない』って言ってたんですって。

 赤い髪の女の、親か祖父母かのゴブリン族はどうなったの?」


「今はもう、死んでるナリ」


「ひどい扱いをされたかもしれない。

 そのゴブリン族が男か女か分からないけど、子供を作ったのも不幸な形だったかもしれない」



「ネリーさん、そのゴブリン族はもう死んでるナリ」


 しばらくの沈黙。

 また、気分が悪くなってきた。

 


 私はレヴィの大きな目から涙がこぼれているのに気がついた。


「泣いてるの、レヴィ?」


「ごめんなさいね。変な話をして」


「いいえ、ありがとうナリ。うれしいんだナリ」


「なぜ?同胞のゴブリン族は奴隷にされて、ひどい死に方をしたかもしれないのに」


「それでもうれしいナリヨ、ネリーさん。

 ゴブリン族の物語が外の世界でちゃんと続いているのが分かったナリ」


 レヴィの目からは涙が次々と零れ落ちた。



「レヴィは、外の世界で見たかっモノを見て、聞きたかったモノを聞いたんだナリ」



 その後、私の意識はまた混濁してきた。

 もう少し話をしたかったが、私はそのまま眠ってしまった。





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