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【衝撃の結末・ハッピーエンド】普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第六部 ゴブリン族の森へ
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第50話 ゴブリン族

 ヒュッ、ポチャン。


 何かが飛んできて、舟の側の水面に落ちた。

 ゴブリン族に関する噂が正しければ、毒矢だ。

 当てる気はないみたいだし、軽い威嚇だね。


 あ、ゴブリン族の毒矢の解毒剤は持ってるよ。

 マデリンさんにもらった。



「ゴブリンゾクノミナサン、ハナシアイニキマシタ。……」

 シオドアがゴブリン語で話した。


 途中までなんとなく分かったよ。

 アタシもレヴィにゴブリン語をちょっと習ったから。



「ゴブリン語が下手くそなり!おぬしらの言葉は分かるなり!」


 ゴブリン族から返事が返ってきた。

 下手くそだってサ、シオドア。


「お返事ありがとう。ロイメの言葉で話します」

 シオドアは動じることなく即、返事をした。

 こういう図太さは、うちのシオドア(リーダー)の良い所だ。



「私たちは、ゴブリン族の女を助けました。

 名はレヴィ。

 西の森、ネプンアル、の部族の出身の女です」


 ゴブリン族同士で何やら話をしている。

 早口のゴブリン語で、何を言っているか分からない。



 しばらくして。


「残念だが、私は南の部族の者だ」

 さっきとは、別のゴブリン族がしゃべった。


「今は交易の時ではない!」



 冒険者ギルドとゴブリン族との定期交易は三ヶ月後だ。

 そのタイミングまで待つことも考えた。


 でも、そうなるとレヴィは三ヶ月間留置場行きだよ。

 何より、冒険者ギルドとロイメ市に全て仕切られることになる。



「私は話をしたい。今だ。

 ゴブリン族の女が奴隷商人に攫われそうになっていた。

 私たちが助けた。

 彼女について話をしたい。

 もちろん、土産物も持ってきた」


 これは本当ね。

 塩と調味料と布を持ってきた。


「何を持ってきた?」


「塩と調味料と布だ!もちろん、ここにいる皆さんの分もある」

 シオドアは答えた。



 ゴブリン族はまたゴブリン語で話をしている。



「交易は半年後だ。時を待て」

 ゴブリン族は再度言った。


 頭固いね、と言いたいけど。

 塩も調味料も布もとりあえず足りてるのかなぁ?

 ゴブリン族は何なら飛びつくんだろ。


 簡単に思いつくのが酒だけどサ。

 交易品としての酒は、初代ギルマスが禁止した。傍迷惑なモノを持って行くなってサ。



 ヘンニが一歩踏み出した。


「あたしはトロール族のヘンニ。

 あたし達は、あんたらの同族を助けて、ここまで来たんだ。

 話ぐらいしても良いだろう。

 トロール族なら話をするよ。

 西の森の部族につないでおくれ!

 土産もあるよ!」


 ヘンニの声はよく響く。



「ダンジョンの外の物を受け取る資格は、我々にはない。

 おぬしらには資格がなく、我々にも資格はない」



 うーん、頭固いなあ、ゴブリン族。


 アタシはさ。

 話し合いの難易度は、A。

 土産物の受け取りの難易度は、B。

 レヴィを一旦預けることの難易度は、C。

 こんな風に勝手に考えていた。


(もちろんアタシ達の最終目的は、レヴィを穏便にゴブリン族から追放させることなんだけど)


 難易度Cのレヴィの段階で既に進まない。



「資格ならあるナリ!」

 レヴィが叫んだ。


 おおっ?


「『輝ける闇』はロック鳥を狩ったナリ。

 ロック鳥狩った者は、第四層では勇者ナリ!

 ダンジョンの神(ラブリュストル)様に認められてるナリ!」



 ロック鳥。

 この言葉が出た瞬間、ゴブリン達がざわめき始めた。

 ゴブリン族にとっても、ロック鳥は恐るべき存在なんだろう。


 

「こやつらが、ロック鳥を狩った証拠はあるのかぁ!?」

 ゴブリン族の別の一人が叫んだ。


「証拠はあるぞ!これだ!飾り羽だ!」

 ヘンニがロック鳥の飾り羽を高々とかがげた。


「「ワワワwawawaワワワ」」

 ゴブリン族の間にどよめきがはしる。



「それがおぬしらの狩ったロック鳥だという証拠があるかぁ!?」


「触ってみれば分かるよ。

 今日狩ったばかり、ホヤホヤの飾り羽だぁ!」

 ヘンニが叫ぶ。



「「「ヱヱヱワワワゑゑゑ」」」

 ゴブリン族のどよめきはさらに大きくなる。


「本当なのかナリカ?」

 ゴブリン族の一人が尋ねてきた。

 レヴィと同じ訛があるね。



「ああ、本当だ。冒険者の森でついさっき狩った。

 ここから少し西の森の、中下層だ。

 ゴブリン族ならすぐじゃないか?

 狩ったロック鳥の死体があるぞ」

 シオドアが言う。



「おぬしらは、狩ったロック鳥はどうするのか?」

 ゴブリン族から即返事がきた。

 おっ、イイ感じ?

 


「残念だけど、飾り羽を取ってそのままだよ!

 来る途中で狩られそうになったから、狩り返したんだよ!

 あたし達じゃ食べ切れないし、持っていけないだろ!」

 ヘンニが答える。



 レヴィがシオドアに何が話してる。

 シオドアが一歩前に出た。


「ロック鳥は我々では食べ切れない。

 ダンジョンの神(ラブリュストル)様の贈り物として、あなたがたゴブリン族が受け取ってくれたなら。

 これ以上の喜びはない!!」

 シオドアが叫んだ。


「ワワワわわわワワワ」

 ゴブリン族のざわめきは歓声に近くなった。



「少し待て。部族の長老と話をしてくる」

 


 その直後、ゴブリン族の数人が森の奥へ消えた。

 巨木をするすると登る。あっという間だった。



 アタシ達と残ったゴブリン族はしばらく待った。

 お互いしゃべらない。静かなモンだ。


 そして、ゴブリン族の森の奥からまた喉を鳴らすような音が聞こえてきた。

 今度は大勢いる。



ダンジョンの神(ラブリュストル)様の贈り物は、ありがたく受け取ろう。

 ロック鳥の場所を教えてくれ!」

 ゴブリン族からの返答だった。




 ゴブリン族の集団と共にアタシ達は巨木の森を行く。

 アタシ達は舟で。

 ゴブリン族は木と木を渡りながら。


 ロック鳥の場所はレヴィがゴブリン語で伝えた。

 アタシには何を言ってるか全然分からなかった。



 ゴブリン族はどんどん先に進もうとする。

 あっとヤバイ。


「レヴィ、ゴブリン族にロック鳥についてる唐辛子の粉について伝えて。

 赤い粉は毒で、目や喉に入ると大変だって」


「分かったナリ」


 レヴィとゴブリン族は何やら話している。

 ちゃんと伝わったかなぁ?



 ロック鳥狩りの現場まで戻るのは、アタシとシオドアとスザナとレヴィだ。

 ネリーとヘンニはボートで見張りの留守番だ。


 レヴィが先導しロープをかけて、アタシが登り、残りのメンバーも登った。

 思ったより楽だったよ。



 さっきの狩りの現場に到着すると、既にゴブリン族がロック鳥を解体すべく忙しく働いている。

 羽をむしり、皮をはぎ、肉にする。

 みんな嬉しそう。

 そうだよね、肉は嬉しいよね。


 ゴブリン族が欲しがってたのは、「第四層で採れた肉」だったのかな?



 唐辛子の粉でむせてるゴブリン族がいたよ。

 ほら、注意しろって言ったでしょ。


 シオドアが水をぶっかけて、治癒術をかけたよ。



 アタシから割と近い場所に、なんか偉そうなゴブリン族が立っていた。

 顔に染料で模様が描いてあって、赤い頭髪に白髪が混じってる。


「食事には招待してくれるんでしょ?

 アタシ達か狩って、ゴブリン族が料理して、ダンジョンの神(ラブリュストル)様に感謝して、みんなで食べる。

 そうだよね?」

 アタシはダメ元で言ってみた。


 祖父ジジイが、駄目で元々言ってみろって、よく話していたから。

 どう?どうなる?図々しい?


 まあ、ゴブリン族が怒ったら、大人しくシオドア(リーダー)にぶん殴られるってば。



 レヴィが大きな声でゴブリン語を話した。

 多分、アタシの言葉を翻訳してる。


 そして、ゴブリン族の偉いさんはいなくなっちゃった。



 その後もロック鳥の解体作業は続いた。


 そして、第四層が薄暗くなる頃。


「我々は南の部族だ。

 ロック鳥と共に来た冒険者ギルドからの客を食事に招待する」


 ゴブリン族の偉いさんにアタシ達は招待されたのだった。




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