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【衝撃の結末・ハッピーエンド】普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第六部 ゴブリン族の森へ
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第47話 ロック鳥狩り

ダンジョンの神(ラブリュストル)様に言いたい。

 ロック鳥は一日に二羽遭えばそれで十分だと。



 アタシ達の通り道の上空を、ロック鳥が羽ばたきながら飛んでいる。


「また、ロック鳥か」

 スザナが呆れたように言った。


 今アタシ達は、木の下の空洞にいる。

 だから、空からは襲えない。

 でも、あのロック鳥、アタシ達の存在に気づいているっぽい。 

 そして、なんかさ、お腹空いてるっぽい。



「あれはまだ若鳥だね」

 ヘンニが言った。


 確かに、さっきの番のロック鳥に比べるとだいぶ小さい。

 飛ぶのもあまり上手くない。


「あれなら皆で協力すれば狩れるよ。囮がいるけど」

 ヘンニが言った。



 サブリーダーの意見である。

 でも、何を囮にするの?


「囮は赤吉を使えば良いんじゃない?」

 ネリーが言った。


 おおっ、その手があったか。


「OK、狩り(ハント)の時間だ。

 狩るぞ!」

 シオドア(リーダー)が宣言した。




 ここでアタシ達の飛び道具を確認する。


 ヘンニは大きめの投石器スリングを持ってる。

 もちろん飛ばすための石も。

 でも、さっきの細い枝の道で石を何個か捨てちゃったんだよね。


 アタシも投石器スリング。大きさは普通ね。

 弓は持たないのか?って聞かれることもある。

 弓はあまり得意じゃない。何より高価だ。

 アタシは煙玉とか、特殊な武器や装備に凝りたいタイプなんだよね。

 投石器スリングの練習は欠かしてないし、よく飛ぶし、そこそこ命中するよ。


 スザナはクロスボウ。

 先生に持って行くように言われたらしい。

 なくしたり壊したりしても構わないって言っていたって。

 第四層で死んだ冒険者には気の毒だけど、武器や金って、ある所にはあるんだよ。

 スザナは、来る前にかなり練習してたけど、腕はまぁ、それなりってとこで。


 ネリーの飛び道具は魔術だ。

 果たして「混乱」がロック鳥にどの程度効くのか。


 シオドアの飛び道具も魔術。

 シオドアの中級氷属性の攻撃魔術は強い術だけど、「ちょっと距離が遠い」とシオドアが言っていた。


 レヴィは回復担当で、飛び道具は持っていない。



 この手持ちプラス赤吉でロック鳥を狩らなきゃいけない。



「ロック鳥狩りはやったことがある。

 トロール族の村では大イベントだった」

 ヘンニはウキウキと語った。


 目がギラギラしてる。燃えてるねぇ。



「具体的にどうやって狩るんだ?」

 シオドアがヘンニに質問する。


「ともかく、ロック鳥を地上近くまで降ろさなきゃいけない。

 岩にくくりつけた囮を用意する」


 その囮って、家畜だよね?だよね?


「囮をエサだと思って降りて来た所を隠れていた皆で飛び道具で叩く。地上に落ちたらさらにみんなで叩く」


 ほー。


「ロック鳥が囮を抱えて飛び去った場合は、囮袋の中のトロール族の出番だ。

 毛皮の袋の中に入っていたトロール族は、袋から出て、ロック鳥の足元から攻撃して、落とす」


 出たぁー、ヒト族を囮にする風習。

 さすがトロール族なんて言わないよ!

 脳筋もたいがいにしろや!



「今回は、その囮は赤吉にやらせる」

 シオドアがまとめた。


 うん、これならマトモな作戦だと思う。



 まず、赤吉にマントを着せて、ヒト族に見せかける。

 さらにロープで赤吉と枝をつないだ。

 ロック鳥が簡単に攫えないように。


 ロープは枝の下をくぐらせてしっかり結んだ。

 ロープをくぐらせるのは、レヴィがやったよ。



 準備を整えた後、アタシ達は巨木に生えてる木の上で、各々ポジションを取った。


 下はシオドアとヘンニとネリー。

 一番目の枝にスザナ。

 二番目の枝にアタシとレヴィ。

 アタシとスザナは木の幹と体をロープで繋いだよ。

 ロック鳥の体格から見て、木の枝にかくれた獲物は狙わないと思うけど。一応ね。



 マントをまとった赤吉が踊るような仕草をする。

 ロック鳥の目に止まれば良いんだけど。



 アタシ達の目論見は当たった。

 上空を飛んでいたロック鳥は翼を広げ、ゆっくり降りてくる。

 目標は、赤吉だ。

 ゴォォっと翼が風を切る音がした。



 ロック鳥は脚を伸ばす。赤吉を掴むためだ。

 ロック鳥の鉤爪が赤吉に触れた瞬間。


「氷槍!」

 シオドアの魔術が飛ぶ。


 氷の魔術は確かにロック鳥の腿に当たった。


 ヒュンヒュンヒュン、ゴン。

 アタシが投石器で飛ばした石はロック鳥の翼に当たった。

 ダメージ行ったのか?

 分厚い羽毛で弾き飛ばされたような気がする。


 ヒュンヒュンヒュン、ゴトッ。

 ヘンニが飛ばした石は外れた。


 スザナのクロスボウの矢は翼の先に当たった。


 ロック鳥はマントの中身が軽く、骨であることに気づいたようだ。


 赤吉を放り出すと、そのまま飛び去る。



 あっ、赤吉を縛っていたロープが切れてる。


「赤吉ー!」

 ネリーが叫んだ。


 赤吉は枝の下へと落ちて行った。




『輝ける闇』のロック鳥狩りは失敗した。


「あのクソ鳥、よくもコケにしてくれたね。赤吉のかたきは取らないとねぇ」

 ヘンニは言った。


 いつもは割と冷静なヘンニだけど、なんかやばめのスイッチが入ってるっぽい。



「もう囮にできる赤吉はいない。

 トレイシー、別のルートはあるか?」

 シオドアがアタシに質問した。


「なくはないけど、ロープで下る距離が長くなるよ。

 途中で魔物モンスターに襲われると大変だよ。

 ここでロック鳥がいなくなるのを、少し待ってみたらどうかな?」

 アタシは意見を言う。


「カッツ!

 いなくなるのを待ってるなんて冗談じゃないよ!

 気合を入れろ!

 あいつはもう焼き鳥なんだ!

 それを思い知らせてやるんだよ!」


 やっぱりヘンニはやばいスイッチが入っていた。




 シオドアは何だかんだで、冒険もするが最後は安全策を取る男だ。


 ここで待機または他ルートを探したいリーダーのシオドア。

 あれはもう焼き鳥だと主張するサブリーダーのヘンニ。

 二人の意見は対立した。



「ヘンニ、何を囮にするのよ?」

 アタシは質問した。


 今回の荷物は軽い保存食中心だ。

 ベーコンもない。干し肉しかない。


「あたしがやるに決まってるだろ!

 あたしは若い頃、ロック鳥狩りの囮を二回も務めたことがあるんだよ!」


 若い頃ってさ、……今のヘンニは若くないし、二人の子持ちだよ?



 シオドアとアタシと、ネリーやスザナも説得したが、ヘンニは聞かなかった。

 ヘンニによると、「あのロック鳥はダメージを負ってる。勝ち目はある。あれは既に焼き鳥」なんだそう。


 遂にシオドアが折れた。


「もう一度ロック鳥狩りをやる。囮はヘンニだ」




 

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