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【衝撃の結末・ハッピーエンド】普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第六部 ゴブリン族の森へ
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第46話 ダンジョン探索は予定通りにはいかない

「第四層は冒険者達の通過点である」

 そんな冒険者のことわざがある。



 第四層は足場が不安定で、狩り(ハント)しにくいダンジョンだ。

 また、第五層の入り口まですぐだ。


(過去の冒険者がすぐに行けるように道を作ったんだよ!)



 そんなわけで、多くの冒険者は第四層を素通りし、第五層へ向かう。


 一部の第四層の本気ガチ勢を除いて。



「ここから下へ向かう枝を降ります」

 アタシは皆に宣言した。


 ここが冒険者ギルドがゴブリン族との交易に使っている道の出発点だ。

 

 最下層までひたすら下ることになる。




 チョイ不安そうな顔がいくつか見える。


 でも、「冒険者たるもの新しいルートにビビってはいかん」って、祖父ジジイが言ってたよ。

 レッツゴーだ。


 アタシ達の目的地はゴブリン族の集落なのだから。



 枝を下る道は、まぁまぁ歩きやすかった。

 カニ歩きしなきゃいけないエルフの道よりよほどマシ。


 所々に、もう一つ下の枝に降りるポイントがある。

 そこは、ロープで降りる。

 ロープを掛ける金具もしっかりしている。


 ネリーはロープで降りるたびに真っ青だった。

 ここは有無を言わせず降ろす。

 命綱をしっかりかけて、皆で降ろす。


 ネリーは、最初はブツブツ言ってたけど、途中で開き直った。

 これもいつものことだ。



 道の途中で、見たことのない昆虫型魔物(モンスター)が出た。

 ヘンニとスザナであっさり討伐完了。

 あっ、魔石が出たね。

 第四層だけに、けっこう大きいヤツ。


 でも、思ったより魔物モンスターが少ないかな。

 魔物モンスター避けの護符が効いてるのかもしれない。

 今回の旅は狩り(ハント)が目的じゃないから、魔物モンスターに出会わないのはありがたい。



 でもね、順調だったのはこの辺りまで。


 なんか、アタシ達が行く道の向こうに、小枝の山が見えた。

 いや、近くに行けば大枝の山なのかもしれない。

 分かりやすく言えば、ゴミの山みたいなモノ。


「なんであんな所に枝が固まってるのかしら?」

 アタシは言った。


 偵察スカウトなのに分からないのかって?

 目は良い方だけど、何でも知ってるわけじゃないよ。



「上を見るナリ!」

 突然、レヴィが声をあげる。


 アタシ達は上を見上げる。

 暗い森がさらに暗くなった。

 枝の隙間を縫うように巨大な影が見える。


「ロック鳥だよ!」

 ヘンニが言う。


 ロック鳥は、巨大な鳥型魔物(モンスター)である。

 ヒト族くらい軽く巣にお持ち帰りして、ご飯にしてしまう。



 アタシ達は、大急ぎで巨大キノコの屋根の下に潜り込む。



 ロック鳥は二羽いた。つがいだろうか。

 代わる代わる小枝やら、葉っぱやら持ってきては落としていく。


 もしかしてロック鳥達は、あそこに巣を作る気なのか。

 なにもヒト族の道の上に巣を作らなくても良いのにさぁ。



「ちょっと通れないね。

 二羽のつがいのロック鳥は危険過ぎる」

 ヘンニが言った。


 ヘンニによると、ロック鳥のつがいは互いに庇い合い協力して攻撃してくるんだって。


「あれを討伐するには、魔術師クランかエルフの精鋭部隊が必要だな」

 シオドアも言った。



 じゃあどうする?

 一旦戻って、冒険者ギルドに報告を入れる?それとも?


 

「道は他にもあるよ、どうする?」

 アタシは言った。



 ゴブリン族の集落へ向かうには、ともかく下れば良いのだ。

 もちろん、なるべく安全にね。


 今通っているのは、冒険者ギルドがゴブリン族と交易する時に使う道だ。

 《《比較的》》足場がしっかりしていて、荷物も運びやすい道だ。


 ただ、もう少しダイナミックな道なら他にもある。



「とりあえず、進む。ただし、引き返す選択肢はなくさない」

 シオドア(リーダー)が言った。


 アタシも賛成。

 アタシ達の目的は、レヴィの味方を増やすこと。

 このまま成果なしで帰っても、頑固なドワーフ族や脳筋トロール族から支援は受けられないだろうし。



 アタシ達はロック鳥の隙を見て、コソコソ後退した。

 そして、別ルートに入る。

 この道は、さっきより少し細い枝を渡る。

 


「この枝はなるべく一人で渡ることだって。注意書きがあるよ」

 アタシは地図を見ながら言った。


 あらかじめロープを渡して命綱を作って、そして、一人ずつ渡して。

 アタシは頭の中で計画を立てる、



 ところがだ。


 その枝にヘンニが乗った時、はっきり枝の《《しなり》》が大きくなった。

 ヤバイ。危険なニオイがする。



「ヘンニ、荷物を降ろしてくれ」


 実はヘンニは、冒険者ギルドから預かっている大きな荷物を運んでいる。


 ヘンニの体重と荷物。全部合わせれば相当な重さになるはずだ。


「荷物は僕が持つよ」

 シオドアが言った。



 確かにシオドアなら持てるだろう。でも、きつそう。

 かと言ってアタシじゃ持てないし……。



「赤吉に運ばせればいいのよ」

 ネリーが脇から発言した。


 赤吉はネリーが使役している二体のスケルトンの一体だ。

 青助が荷物持ち(ポーター)なら、赤吉は戦闘用だ。



「ネリー、赤吉を連れて来てたの?」


 てっきり留守番かと思ってた。


「連れて来てるわよ。

 赤吉は青助より器用だから、細い枝も渡れるハズよ」



 ネリーは荷物から頭蓋骨を取り出した。頭蓋骨の後頭部に赤い花が描いてある。

 これは赤吉だ。


 ネリーが呪文を唱えると、中空から骨が現れ、スケルトンになる。

 青助と異なるのは、鎧をまとい、剣を持ってること。



 アタシ達は協力して、赤吉に背負子を持たせた。

 赤吉は、途中でちょっと嫌がる素振りを見せたが、ネリーが命令すると大人しくなった。


「赤吉は器用だけど、時々反抗的なのよね」

 ネリーは言った。


 ふむふむ。

 赤吉は不安定な道でも荷物を運べる。でもネリーの負担が増える、と。



 ネリーの命令のもと、赤吉は不安定な足場を荷物を背負って歩いてみせた。ヨシッ。


 身軽になったヘンニも、枝をしならせながら問題なく歩ききった。

 気合だよ、こういうのは。



 枝を歩き、蔦をくぐり、ロープで降りて、ちゃんと休憩も取り。

 アタシ達は巨木の森を下っていた。



 巨木の枝には、苔が生え、虫の巣があり、時には枝の上に別の木が生える。

 アタシ達は、そんな木の根の下をくぐり抜け、顔を出した。

 


 大きな羽根の音がした。


 そして、上から巨大な鳥が降りてきて、目の前の枝にいた昆虫型魔物(モンスター)をさらっていった。   


 ロック鳥である。


 ……またぁ!?




 

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