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普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第一部 もう遅い、とは言わせない
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第4話 隣の隣の家

アタシは壁の穴に向けて煙玉を投げる。

 はい、打ち合わせ通り!

 向こう側で白煙が上がる。


「うぉぉおお!」

 唸り声をあげながら、盾を構えたスザナが穴に飛び込む。

 続いてシオドアも行く。


「うわぁぁ!?」

「な、なんだ?」


 ガキンッ、ドカッ!


 向こう側で音がする。

 奇襲は成功かな。

 アタシも小剣ショートソード抜いて穴に飛び込んだ。



 で、アタシが向こう側に行った時、戦いはほぼ終わっていた。

 一人め悪党はシオドアにヘッドロックされ、もう一人はスザナの盾で押さえつけられている。


 悪党二人は髭面で堅気カタギじゃない臭いがする。

 冒険者とも違う。身体にしまりがないんだよ。



 さて、その次は。


 アタシはシオドアにヘッドロックされてる男の首に小剣ショートソードを突きつける。


「ねぇ、女の子達はどこ?」


 軽く身体をくねらせて、ボンッキュッボンッのナイスバディを強調する。


「早めに吐いた方がお得じゃない?」


 胸を軽く持ち上げる。

 男の視線はアタシの胸に釘付けだ。


「殺さないでくれ……」

 男はアタシの胸を見ながら言った。


「女の子達はどこって聞いてるのよ!」


「三階だ!リーダーと魔術師とあと二人、全部で4人いる。いい話があるって言われて乗っただけだ、殺さないでくれ!」


 こんなとこかな。

 シオドアがネリーに目で合図をする。


 ネリーが男の額に指をあてる。

睡眠スリープ


 男の身体から力が抜けた。

 ネリーは精神操作属性、死霊属性、土属性、そして初級の火属性を扱う、優秀な魔術師だ。



 スザナが押さえつけていた男もネリーが眠らせる。

 だめ押しで二人の手足をロープで縛る。


 ここまで完全に計画通りだね。いっちょあがり。



「うまいモンだねぇ」

 スザナが言った。


「縛る方?尋問のやり方?どっち?」

 アタシは聞き返した。


「口を割らせる方」


「三下専門だけどね」


 アタシは何故か三下の尋問が上手い。ちょっと迫ると三下どもはすぐ口を割る。

 こんなに簡単で良いのかって思うくらい。


 ただ、アタシの尋問が効かない時は、シオドアかヘンニが暴力に訴えるし、いざとなれば精神操作魔術師のネリーが魔術を使って聞き出す。


 結局アタシの尋問で口を割るのが一番楽だと三下どもは《《分かっている》》のだろう。




「魔術師は多分精神操作魔術を使うわよ」

 ネリーが言った。


 逃げた女の子がいきなり眠くなったと言っていた。睡眠スリープの魔術だろうとアタシも思う。


「ネリー、精神操作属性の結界を張れるか」

 シオドアが問いかけた。

 結界魔術は敵の魔術を阻害する。


「張れるけど、他の魔術は使えなくなるわよ」


「張ってくれ。攻撃は僕とスザナが引き受ける」




 アタシ達は階段を駆け登る。

 先頭はシオドア、次がスザナ、ネリー、アタシが最後だ。


 上が騒がしくなる。気がつくよね、さすがに。


 2階に現れた男は二人。

 一人はシオドアが殴り倒し、もう一人はスザナが階段から蹴落とした。


 二人はうめき声をあげるがそのまま動かない。三下なりに賢明だ。



 アタシ達はそのまま三階へと登る。


 三階の踊り場にいたのは細身の顔色の悪い男だ。ロッドを持っている。魔術師だろう。


睡眠スリープ

 魔術師はロッドを振り呪文を唱える。


 残念だけど効かないよ。ちっとも眠くならない。ネリーの結界の方が強いのだ。


「なっ、効かない」


 魔術師が慌てているうちにアタシ達は三階に到着した。


 シオドアが剣の腹で魔術師をぶっ叩く。

 痩せた魔術師がタララを踏んだところへ、アタシは足を伸ばし、ヤツの足を引っ掛けてやった。

 魔術師がスッ転んだ上にスザナが飛び乗る。


「ウギャッ」


 筋肉ムキムキのハーフトロール族に飛び乗られたら、人間族のモヤシ男では到底身動き取れない。


 速攻でアタシは魔術師に猿ぐつわを噛ませようとしたけど、シオドアに止められた。


「トレイシー、精神操作魔術師はそれじゃだめだ。

 魔術師殿、抵抗したら殺す」


 シオドアの脅しに、モヤシ魔術師は顔を引きつらせる。


 ネリーが額に魔術印を書く。

 残念だが効果なし。これは抵抗されたのかな?


「抵抗したら殺す」

 シオドアは繰り返す。


 二回目で魔術師は意識を落とした。


 結論を言えば、三階に現れたのはモヤシ魔術師の男だけだった。

 あと一人、多分リーダーがいるらしいが、どうしたのだろう。逃げたとか?


 まあ、表も裏も衛兵が見張ってるし、簡単には脱出できないと思うんだけど。




 アタシ達は『隣の隣の家』の三階を捜索していく。


 三階の扉を開けて二つめ、カーテンを閉じられた薄暗い部屋に、ぼんやりした表情の二人の女の子がいた。


 ついに当たり。

 ついに見つけた。


 一人は浅黒い肌の体格の良い女の子だ。おそらくあの子の妹でハーフトロール族。

 もう1人は小柄で骨太の女の子。こっちはドワーフ族か、ハーフドワーフ族か。

 種族が違うけど、二人ともまだ幼く子供だって分かる。


 幼い女の子をさらうなんて、ホント趣味悪い。最低。



 女の子達はアタシ達が現れても二人並んでソファーに座ったままで、反応がなかった。


 そして、二人とも首に銀色の首輪がはめられている。



 ネリーがそっと二人の銀色の首輪に触れた。


「間違いないないわ。隷属の首輪よ」


 ロイメでは隷属の呪文は禁呪だし、隷属の魔道具を個人が所有するのも法律違反だ。

 女の子と証拠は見つかった。

 


 シオドアが窓を開け、怒鳴った。


「隷属の首輪が見つかった。こっちの家だ、突入してくれ!!」


 すげー大声。近所迷惑度は150点かな。

 でも、確実に衛兵部隊に聞こえただろう。


 ドカッバキッガンッ。


 物が壊れる音がする。

 おそらく、ヘンニが玄関の扉を破壊する音だろう。

 ヘンニはデカい斧を持ってきてたからね。

近所迷惑度は200点だよ!


「何するんですか!」

 表で止める声がするけど、その程度でヘンニは止まらないよ。


 もしかして、玄関で応対していた男がリーダーだったのかな?




「この箱はなんだろうね?」

 スザナが言った。


 あ、それアタシも気になってた。


 部屋の隅に木の箱が置いてあった。

 人間が入るにはちょっと小さいけど、あの子達より幼い子供がはいってるとか?


「開けられるか?」


 鍵はかかっているけど、さっきのよりは単純だ。


「もちろん。……開いた」


 シオドアが箱の蓋を開ける。


 シオドアの動きが止まった。


 アタシは箱の中を覗き込む。


 小さな身体、真紅の髪、黄色い肌。

 初めて見る種族だ。


「ゴブリン族……」

 ネリーが言った。


 ゴブリン族。おとぎ話の中の悪役。

 そしてまた、絶滅寸前とも言われる種族である。





明日も投稿予定です。

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