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【衝撃の結末・ハッピーエンド】普通の女の子のアタシ、冒険者やってます。  作者: ミンミンこおろぎ
第四部 雨が降れば虹が出る
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第26話 花束

アタシ達『輝ける闇』の拠点は、『冒険の唄』からレヴィの家に移った。

 広々してるし、中庭は人目につかないし、良い家だ。

 欠点は街の中心から遠いことかな。

 ネリーは、荷物を持ち込んで完全に入り浸っている。


 アタシはほどほどだね。


 どうせダンジョンに潜ったら毎日顔を合わせるんだし、アタシは街も買い物も好きだ。



 あ、そうそう。

 今までの探索クエストの報酬がついに精算された。


 言いたいことは一つ。

 冒険者ギルドとロイメ市はクソドケチだ!

 特に冒険者ギルド!マジクソ!



 内容を説明するよ。


 まず、人身売買組織の悪党討伐が、日給五千ゴールド。たったこんだけ。

 本来ならロイメ衛兵にもできる仕事だが、功績は大である。

 これでも特別報酬だってサ。


 それから人身売買組織の通報報酬が五万ゴールド。

 これは、ハーフ・トロールの女の子の家族に渡したわ。


 意外に出たのが、隷属の首輪の発見報酬で、これも五万ゴールド。



 まあね、最初にロイメ市ともっと条件交渉しても良かったよね。

 でも、あの時は悪党許すまじの勢いだったからさぁ。


 ハーフ・トロール姉妹の女の子の家族からは報酬はもらえないよ。

 母親と娘二人の三人家族。

 無い袖振らして、女の子や母親に身売りさせたら本末転倒でしょ。

 ロイメ市内の犯罪に賞金や報酬を出すのは、ロイメ市の仕事だよ。


 ここまでは《《一応》》しゃーないね。

 ロイメ市がドケチなのは、アタシも良く良く知ってる。


 この探索クエストは、『輝ける闇』の人気取りのためということにしておく。




 問題なのは冒険者ギルド、ダンジョンの新ルート発見報酬だってば!


 まず、日給は一人三千ゴールドでーす。

 第一層の仕事だからねェ。


 そして、ルート発見報酬がたったの、たったの五十万ゴールド!

 こんだけ!こんだけだよ!


 この前さぁ、新ダンジョンこと亡霊のダンジョンが発見された時、冒険者ギルドは五百万ゴールド払ったって聞いたよ?

 今回とどこが違うのよ?



 結論を言うなら、新しいダンジョンはこれから魔石が取れて、冒険者ギルドが儲かる話。だから気前が良い。

 一方でアタシ達が見つけたルートは儲からない話。だからケチ。


 今回のルートのせいで、冒険者ギルドは、南のサブダンジョンに人員を増やさなければいけなくなった。

 冒険者ギルドにとって費用が増えて損する話なんだって。


 違うでしょ!

 今回の発見は、ギルドの屋台骨が揺らぎかけてた所を止めたってことだよね?

 だよねェ?ネ?



 最終締めだ。

 今回の報酬は、人身売買組織討伐関係で一万五千ゴールド。一応経費は別だ。


 新ルート発見探索(クエスト)が、日給三千✕三日で九千ゴールド。

 発見報酬は『冒険の唄』に二割払って、六人で割って、六万六千ゴールド。端数はパーティー積立金にした。


 あ、魔石が八万ゴールドで売れたわ。六等分して、一万三千ゴールド。


 合計で十万三千ゴールド。


 冒険者として成功したけりゃギルドの仕事なんてしちゃいけない。ひたすら魔石を狩れって言うけどさぁ。



 シオドアは、「僕の交渉力不足だ」って言ってたわ。

 それについてはノーコメント。

 対外交渉は任せっきりだしね。

 文句を言える立場じゃない。


 まあ、これでも『輝ける闇』はメンバーの取り分が多いよ。

 以前いたパーティーでは、リーダーの取り分が平のメンバーよりずっと多かった。



 次の探索クエストについても考えなきゃいけない。

 発見報酬が五百万ゴールドだったら、荷物運び(ポーター)をたくさん雇って一気に第五層だったんだけど。


 生活する分には十万ゴールドの報酬は十分過ぎるんだけどね。

 まあ、冒険者生活、思うようにはいかないってこと。



 さて。その日、アタシは歩いてレヴィの家に向かう途中だった。

 ネリーに食料を買ってこいって言われていて、途中で市場に寄る。


「あれとこれは軽いとして、ちょっとネリー、西瓜すいか丸ごと一個ってどういうことよ!」


 今は西瓜すいかが出始めの季節だ。

 レヴィの家の井戸水で冷やして食べれば美味しいだろう。

 アタシは小さめで美味しそうなスイカを選ぶ。

 なんとか買い出し用の背嚢リュックに入れる。

 探索クエストの時の荷物ほどじゃないけど、けっこう重いわ。



 いつもの午前中のロイメの市場だった。その時までは。


 風が吹いて、すっとアタシに影が落ちた。


「トレイシー殿」

 低く、程よく響く男の声がした。


 アタシは振り返る。


 ナガヤ・コジロウだ。スザナの想い人の。

 服はいつものアキツシマ風装束だけど、普段よりキリリとした印象だ。

 髭もきっちり剃ってるね。


 他者を引きつける雰囲気に、しなやかで力強い筋肉に覆われた、大きな身体。

 間違いなく格好良い男だと思う。


 でもなんか、緊張してる?この男にしては珍しい。


「こんにちは、コジロウ。出稽古以来ね」

 アタシはさりげなく挨拶をする。



 コジロウはアタシにすっと差し出した。

 花束を。


 薄い紫のトルコキキョウの小さな花束。


「トレイシー殿、……その、つまり、だな、今度の夏の祭りにだ、あなたを誘いたい。

 俺と、いっしょに行かぬか、いや行きませんか!」


 コジロウは、大きな、良く通る声で言い、アタシに花束を差し出した。


 あっ、思わず受けとっちゃった。



「「「おおぉォぉお!?」」」

 周囲のどよめきが聞こえる。


 人通りの多い午前の市場だ。

 アタシとコジロウは周り中の注目の的だった。


 夏の祭りは若い男女の祭りだ。

 夏至が過ぎると正式にパートナーを誘える。

(実はそれ以前に口約束で決まっていることが多いけど)

 

 男が女を見初めたら、小さな花束を女に贈る。

 花束は小さなものでなくてはいけない。

 断られるかもしれないから。


 花束を渡して夏祭りに誘う。

 正式なマナーだ。


 ロイメの普通の女の子なら、みんな憧れるシチュエーション。



「返事は、今すぐでなくてもいい。

 祭りの前日まで待つので……、良い返事を期待しておる!」


「あっ!」


 そう言うとコジロウは身を翻し、すごい勢いでその場を去って行った。



 あわわわ。

 これ、この花束!

 ヤバイでしょ!


 危険物だってば!







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